咳が止まらないのはどうして?
「咳」は風邪を引けば大抵出るものであり、特に気に止めないという方も多いでしょう。しかし、なかなか止まらない咳の場合は、深刻な肺の病気がかくれていることがあります。
ここでは、咳が出るしくみと、咳が止まらない時に考えられる病気などについてお伝えします。
目次
1.咳とは何か
1−1.咳が出るしくみと役割
咳は、鼻・のど・気管・肺の空気の通り道である気道に唾液や痰などの分泌物が溜まった時や、吸い込んだホコリなどの異物を外に出そうとする時に起こる大切な反応です。
【参考資料】National Library of Medicine『Cough, a vital reflex. Mechanisms, determinants and measurements』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6502102/
無意識に起こる生体防御反射なので、自分で止めようとしてもなかなか止められないのはそのためです。
1−2.咳の種類
痰の有無によって、「乾いた咳」と「湿った咳」に分類されます。
乾いた咳は、「コンコン」「ケンケン」といった軽い感じ、湿った咳は、「ゴホゴホ」「ゲホゲホ」のように胸の深いところから出るイメージです。
【参考資料】第一三共ヘルスケア 『くすりと健康の情報局』
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/20_seki/
痰が出るか出ないかについては、病気の種類を判断するうえで大切な材料になります。医師から質問されることもありますので、日頃から咳と痰の様子をチェックしておくと良いでしょう。
◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>
2.咳の原因となる病気
2−1.「2週間以内」で治まる咳の場合
2週間以内でおさまる咳の原因となる病気の多くは、ウイルスや細菌などの感染によって気道に炎症が起こる病気です。医学用語では、「感染性咳嗽」といいます。
①上気道炎
いわゆる、「風邪」のことです。ほとんどがウイルスによるもので、咳のほか、熱・くしゃみ・鼻水・喉の痛みが主な症状です。
②インフルエンザ
主に冬〜春にかけて大流行します。症状は咳のほか、高熱、全身の関節痛、下痢、喉の痛みなどです。流行する前に予防接種を打っておきましょう。
③急性気管支炎
上気道炎はウイルス感染がほとんどですが、細菌感染が併発し、炎症がひどくなると気管支炎になります。咳のほか、発熱、全身倦怠、痰の症状があります。
2−2.「2週間以上」止まらない咳の場合
2週間以上咳が止まらない場合、喘息やCOPD・肺がんなど、感染症以外の病気が原因である可能性が高くなります。
①気管支喘息・咳喘息
喘息とは、気管支に慢性的な炎症が起き、気道が狭くなって空気が通りにくくなる病気です。典型的な症状としては、咳や痰、そして呼吸をするたびに喘鳴(気管支からゼーゼー、ヒューヒューという音が鳴ること)が出るようになります。
日本では小児の5~7%、成人では3~5%がかかっているとされており、現在でも毎年1,600名以上が喘息で命を落としています。
【参考資料】アストラゼネカ株式会社 『チェンジ喘息!』
https://naruhodo-zensoku.com/
喘息は子どもの病気だと誤解されがちですが、高齢になってから初めて症状が出ることもよくあります。
②肺炎
肺炎は細菌・細菌以外の微生物・その他の様々な要因によって肺に炎症が起きる病気で、日本人の死亡原因第3位となっています。
肺炎が進行すると呼吸不全を起こします。酸素不足の状態におちいるため、生命に関わる危険な病気です。
③COPD(慢性閉塞性肺疾患)・肺気腫
COPDは、俗に「タバコ病」とも言われており、日本人の死亡原因の第10位になっている危険な病気です。WHO(世界保健機関)の予測では、2030年には世界の死亡原因の第3位になると考えられています。
【参考資料】厚生労働省 平成21年死因順位
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
④肺がん
肺がんは日本人の死因第1位です。50歳以上で急激に増加します。肺がん患者のうち、男性で30%、女性で5%は喫煙者だと考えられています。
◆「「肺がん」は死亡原因第1位。だからこそ早期発見、そして「禁煙」を」>>
2−3.咳が出るその他の原因
①内服薬の副作用
血圧を下げる薬の副作用で咳が出ることがあります。「コンコン」という乾いた咳が特徴で、今まで出ていなくてもある日突然出始めることもあります。
②花粉症
花粉症はくしゃみや鼻水、目のかゆみなどが主な症状ですが、花粉症の方は喘息を合併している場合が多いため、咳とも深い関わりがあります。
③飲酒
アルコールを飲んだ時に、気道が刺激されて咳が出る場合があります。
以上にあげたもの以外にも、細かく分けると咳の原因となる病気はいろいろあります。
「たかが咳」と思ってしまいがちですが、ざっと挙げただけでもこれだけのいろいろな原因が考えられるため、正しく診断できる医師が限られているのが現状です。
3.咳が止まらない時は、早めの検査を
咳の原因となる病気が何なのかを見分けるためには、一般的な検査と併せて、専門医療機関でしか受けられない特殊な検査の両方が必要になります。
<一般内科でできる検査>
•胸部レントゲン
•心電図
•血液検査
•喀痰検査
<呼吸器専門医療機関でできる検査>
•胸部CT
•スパイロメーター
•モストグラフ
•呼気一酸化窒素濃度(呼気NO)測定
など
【参考資料】 『咳嗽に関するガイドライン 第2版』日本呼吸器学会
4.止まらない咳に関するよくあるお悩み
→「咳が止まらなくて夜眠れない時の対処法と予防法」について>>
→「咳が止まらない…うつる病気とうつらない病気」について>>
→「咳が長引く・咳が止まらない時の市販薬での対処法」について>>
5.おわりに
咳が止まらない背景には、呼吸器に関わるさまざまな病気が隠れていることがあります。症状が軽いうちであれば治療は短期間で済む場合もありますし、使う薬の量も少なくて済みます。
2週間以上咳が長引いているならば、なるべく早い段階で、呼吸器専門医のいる医療機関を受診しましょう。