花粉症で喘息の症状が悪化する理由と対策
花粉症になると、鼻づまりや目のかゆみ、咳、くしゃみなどの症状に悩まされ、日常生活にも影響が出てきます。
さらに、喘息患者さんの場合、花粉が原因で喘息の症状が悪化することがあるので、より対策が重要となります。
この記事では、花粉と喘息の関連性を解説し、花粉が飛散する時期に向けての対策について解説します。
目次
1.花粉症とはどんな病気か
花粉症とは、特定の植物の花粉に対して体がアレルギー反応を起こし、以下のような症状が現れる病気です。
・鼻水
・鼻づまり
・くしゃみ
・咳
・目のかゆみ
アレルギーの原因となる植物には、以下のような種類があります。
・スギ
・ヒノキ
・イネ
・ブタクサ
・ヨモギ
花粉症は春に発生すると思われがちですが、実際には原因となる植物が、春以外の季節にも花を咲かせて花粉を飛ばすので、季節に関係なく症状が現れることがあります。
2.なぜ花粉で喘息が悪化するのか
喘息は、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が原因のタイプと、喫煙やストレスなどアレルギー以外に原因があるタイプに分かれます。
アレルギーの原因として最も多いのはダニですが、花粉によるアレルギーも、喘息の悪化を招く一因となります。
【参考情報】『Allergies and asthma: They often occur together』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/in-depth/allergies-and-asthma/art-20047458
喘息の患者さんは、咳や息苦しさなどの症状がないときでも、慢性的に気道の炎症が続いています。そして、炎症により気道は過敏になっています。
その状態で花粉症を発症すると、花粉による鼻の炎症に気道が影響を受け、気道の炎症が悪化しやすくなります。
花粉症の症状は鼻水、目のかゆみが代表的で、花粉が多く飛んでいる日に強くなりますが、喘息の症状は少し遅れて数日後に出ることが多い傾向にあります。
花粉症でも咳が出ることがあるため、咳が花粉症によるものなのか、喘息の症状なのかわかりにくいことがあります。咳のほかに、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼーゼーという特徴のある呼吸音)があれば、喘息による咳の可能性が高いです。
鼻と気道はつながっているので、どちらかがアレルギー反応を起こすと、もう一方もその影響を受け、両方に症状が現れることはよくあります。花粉症の症状が重い人は、喘息の症状も重くなることがあります。
さらに、花粉症で鼻づまりになると口を開けて呼吸するようになるので、口からも花粉が入りやすくなり、気道の粘膜が刺激されます。
3.花粉による喘息の悪化を防ぐ治療
花粉による喘息の悪化を防ぐためには、以下に紹介する対策を行っておくと安心です。
3-1.長期管理薬による喘息の治療
喘息の患者さんは、症状がないときでも吸入ステロイド薬などの長期管理薬(コントローラー)を毎日服用し、気道の炎症をできるだけ抑えておきましょう。
毎日の服薬で気道の症状が安定することで、花粉による刺激の影響を受けにくくなることが期待できます。
3-2.花粉症の対症療法
不快な症状を抑えるための対症療法では、以下のような薬を用います。
【抗ヒスタミン薬】
アレルギー症状を引き起こすヒスタミンの働きをブロックして、症状を緩和する薬です。抗アレルギー薬よりも即効性があります。
・アレグラ
・アレジオン
抗ヒスタミン薬には、副作用として眠気が強く出る薬もあるのですが、現在は眠気が起こりにくい薬も増え、日常生活への影響も少なくなっています。
【ロイコトリエン受容体拮抗薬】
アレルギー反応にかかわる物質であるロイコトリエンのはたらきに作用して、アレルギー反応を抑える薬です。
・オノン
・アイピーディー
効果が出るまで2週間ほどかかるため、花粉が飛散する時期より前から服用するのがよいでしょう。
3-3.花粉症の根治療法
花粉症そのものを治す根治療法には、アレルゲン免疫療法と、ゾレアという薬剤を用いる治療があります。
どちらも治療を受けるには条件を満たす必要があるため、治療にあたっては医師と相談してください。
【アレルゲン免疫療法】
アレルゲン免疫療法(減感作療法)とは、アレルギーを起こす物質(アレルゲン)を少しずつ投与することで体がアレルゲンに慣れ、最終的にはアレルゲンに反応しなくなる体質にしていく治療法です。
治療には3~5年と長い期間が必要ですが、治療に成功するとアレルゲンに反応しなくなるめ、花粉の季節になっても症状が現れなくなります。
【ゾレアによる治療】
重度の花粉症と診断され条件を満たす人は、ゾレアという薬剤を注射する治療も適用になります。
ゾレアは、体内に入った花粉(アレルゲン)を敵と認識する抗体(IgE)が細胞へ結合するのを妨げることで、アレルギー反応を起こすスイッチが入らないようにする薬です。
【参考情報】『Omalizumab Injection』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/drugs/19805-omalizumab-injection
3-4.治療の注意点
対症療法として、鼻の粘膜を焼くことで症状を和らげるレーザー治療もあります。ただし、目のかゆみなど、鼻以外の症状は改善されません。
また、喘息の患者さんはレーザー照射時の煙が刺激となり発作が誘発される恐れがあるため、医師への相談が必要です。
医療機関によっては、ステロイド剤(ケナコルトA)の注射を行っているところもあります。しかし、副作用が強いためおすすめできない治療法です。
4.日常生活での注意点
日常生活では、以下のような点に注意して症状の悪化を防ぎましょう。
4-1.呼吸器感染症の予防
インフルエンザや風邪などの呼吸器感染症になると、喘息や花粉症も悪化するこ恐れがあります。
呼吸器感染症を予防するために、外出時のマスクや手洗い、ワクチン接種などの基本的な対策を忘れずに行いましょう。
4-2.花粉の除去
外から家に入る前には、洋服や髪の毛に付いた花粉を払っておきましょう。さらに、すぐにシャワーを浴びたり着替えをしておくと、より効果的です。
部屋の掃除をこまめに行ったり、空気清浄機を使用するのも花粉の除去に役立ちます。
4-3.お酒は控えめに
お酒を飲むと、毛細血管が拡張して鼻の粘膜が腫れ、より刺激に敏感になります。
すると、アレルゲンに反応しやすくなるので、花粉症の時期の飲酒は控えめにしましょう。
4-4.禁煙する
タバコの煙に含まれる有害物質は、鼻や気道の粘膜を刺激するので、鼻づまりや喘息の症状を悪化させます。
喫煙の習慣がある人にとって、禁煙は難しいかもしれませんが、タバコを止めると症状が改善する可能性が高まります。
4-5.その他
その他、メガネやマスク、帽子などで花粉の付着を防ぐことや、食事や運動、睡眠により体調を整えることも効果的です。
5.おわりに
喘息の患者さんは、花粉の影響で咳などの症状が悪化する可能性があります。
既に花粉症になってしまった人は、薬剤でアレルギー症状を抑えたり、根本療法で体質を変え、喘息の悪化を防いていきましょう。
今は花粉症ではない人も、将来発症する危険を防ぐため、花粉の付着を防ぐ対策や、花粉を家に持ち込まない工夫をしておきましょう。