咳止め薬「アスベリン」の特徴と効果、副作用
アスベリンは、咳を止める作用と痰を出しやすくする作用を持つ薬です。風邪や気管支炎のほか、肺炎、肺結核、上気道炎、気管支拡張症などで咳がつらいときに処方されます。
この記事では、アスベリンの効果や副作用、服用方法などを解説します。服用時の注意点も解説しているので、参考にしてください。
1.アスベリンとはどのような薬か
アスベリンには、チペピジンという成分が配合されています。チペピジンには、鎮咳(ちんがい)作用と去痰(きょたん)作用の2つの作用があります。
鎮咳作用とは、咳を引き起こす咳中枢の活動を抑制するはたらきです。去痰作用とは、気道の分泌物の増加と気道粘膜の線毛運動を促進し、気道から分泌物を排出しやすくするはたらきです。
咳中枢を抑える中枢性鎮咳成分には、麻薬性と非麻薬性の2種類がありますが、アスベリンは非麻薬性です。
リン酸コデインのような麻薬性鎮咳成分を含む咳止め薬は、咳止め効果が強い反面、呼吸抑制という重大な副作用が生じる恐れがあります。しかし、アスベリンは非麻薬性なので呼吸抑制の心配が少なく、赤ちゃんでも服用できます。
アスベリンには、錠剤・ドライシロップ(顆粒状の薬)・シロップの3種類があります。錠剤は主に成人に処方されます。ドライシロップとシロップ剤は、1歳未満の赤ちゃんから成人まで幅広く使用できます。
2.アスベリンの使い方
アスベリンは通常、1日3回服用します。服用量は、年齢や形状、症状によって異なりますので、医師の指示に従って飲んでください。
以下、基本の服用量です。
<錠剤>
・アスベリン錠10:成人1回につき2〜4錠
・アスベリン錠20:成人1回につき1〜2錠
<ドライシロップ(アスベリン散10%)>
・1歳未満:1日0.05〜1。2gを3回に分けて服用
・1歳以上3歳未満:1日0.1〜0.25gを3回に分けて服用
・3歳以上6歳未満:1日0.15〜0.4gを3回に分けて服用
・成人:1日0.6〜1.2gを3回に分けて服用
<ドライシロップ(アスベリン散2%)>
・1歳未満:1日0.25〜1gを3回に分けて服用
・1歳以上3歳未満:1日0.5〜1.25gを3回に分けて服用
・3歳以上6歳未満:1日0.75〜2gを3回に分けて服用
・成人:1日3〜6gを3回に分けて服用
<シロップ>
・1歳未満:1日1〜4mLを3回に分けて服用
・1歳以上3歳未満:1日2〜5mLを3回に分けて服用
・3歳以上6歳未満:1日3〜8mLを3回に分けて服用
・成人:1日12〜24mLを3回に分けて服用
錠剤やドライシロップは、水やぬるま湯と一緒に飲みましょう。ドライシロップをお子さんに与えるときは、水に溶かして飲ませても構いません。ドライシロップにはオレンジ味がついているので、小さな子どもでも飲みやすいでしょう。
シロップはそのまま飲んでください。シロップの中に沈殿物がある場合は、容器をゆっくり振ってシロップと沈殿物を混ぜてから服用しましょう。
3.アスベリンの副作用
アスベリンの副作用として起こりやすいのは、以下の症状です
・眠気
・興奮
・便秘
・下痢
・胃の不快感
これらの症状は、アスベリンの服用量が多いと起こりやすくなります。早く治したいからといって、服用する量や回数を増やすことはせず、医師や薬剤師から指示された服用量を守りましょう。
また、めったにありませんがアナフィラキシーの症状が起こることがあります。アスベリンの服用直後に咳・腹痛・嘔吐・発疹・呼吸困難などの症状が急にあらわれた場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
【参考情報】『Anaphylaxis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/anaphylaxis/symptoms-causes/syc-20351468
4.使用上の注意点
アスベリンは、妊娠中の方や授乳中の方にも様子を見ながら使用することがあります。服用に不安がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
アスベリンのシロップ剤は、放っておくと沈殿物が出てきます。服用する前にはゆっくりと振り混ぜるようにしてシロップの色を均一にしましょう。
ただし、強く振ってしまうと泡立ってしまい、服用量をはかりとるのが難しくなるため、静かに振ってください。
アスベリンを服用すると、尿が赤くなることがあります。これは、アスベリンが体内で代謝された後の物質の色で、代謝物が尿と一緒に出たときに赤くなるのです。
赤ちゃんがアスベリンを服用した後、オムツに赤い色が付くことがありますが、気にする必要はありません。
【参考情報】『尿・便色の変化』慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/medical_info/about_medicine/care/change.html
5.アスベリンの薬価
アスベリンの1錠あたり・1gあたり・1m Lあたりの値段(2024年8月調べ)は次のとおりです。
・アスベリン錠10 9.8円/錠
・アスベリン錠20 9.8円/錠
・アスベリン散10% 11.9円/g
・アスベリンドライシロップ2% 9.8円/g
・アスベリンシロップ0.5% 1.97円/mL
・アスベリンシロップ「調剤用」2% 6.5円/mL
アスベリンにはジェネリック医薬品はありません。アスベリンと全く同じ市販薬もありませんが、アスベリンの成分であるチペピジンヒベンズ酸塩を配合した総合感冒薬や子ども用の咳止め薬・風邪薬は発売されています。
6.おわりに
アスベリンが合わない場合、代わりに咳の症状に使用できる処方薬には、メジコンやレスプレン、成人の場合にはリン酸コデインなどがあります。
アスベリンは、赤ちゃんから成人まで幅広く使える薬ですが、服用方法は年齢によって異なるため注意が必要です。必ず、医師や薬剤師に指示された量を確かめてから服用しましょう。