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咳の主な原因と種類、症状を和らげる対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年05月16日

咳が出ていても、風邪が原因であれば、1週間程度で治まるでしょう。

しかし、ただの風邪だと思っていたのに咳が激しくなってきたり、しつこく続いているのなら、風邪とは違う原因があるかもしれません。

この記事では、咳の原因や種類などを詳しく解説します。つらい咳を一時的に和らげる対処法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1.咳はなぜ出るのか


咳は、体にとって必要な防御反応であるため、健康な人でも出ることがあります。

例えば、異物を飲み込んだときに吐き出すために咳が出ることもあれば、ニコチンなどタバコに含まれる化学物質に気道の粘膜が刺激され、咳が出ることもあります。

しかし、何らかの病気が原因で出ることも多いため、いつもと違う咳には注意が必要です。

以下、咳が出る原因について解説します。

1-1.体の自然な防御反応

ホコリや細菌、ウイルスなどの異物が侵入するのを防ぐため、防御反応として咳が出ることがあります。

異物が体内に入ると、気道の粘膜がそれを感知し、脳から咳を促す指令が送られます。すると、呼吸筋がその指令を受け取り、咳が引き起こされます。

また、気道の分泌物には、ホコリなどの異物を絡めとる役割もあります。絡めとられた異物は上へ上へと押し出され、口から排出する際に咳が生じます。

1-2.気道の炎症

タバコの煙や汚れた空気を吸い続けた結果、気道に炎症が起こると、気道の粘膜が刺激に弱くなり、咳が出やすくなります。

また、喘息や気管支炎でも気道に炎症が起こるので、咳が激しくなります。

1-3.痰の排出

気道に炎症が起こると、ウイルスなどの有害物質を体外に追い出そうとする働きが生じ、痰の量が増えます。そして、痰が溜まると、口から排出するために咳が出ます。

感染症にかかったときの痰は、死んだ細菌やウイルス、そして体を守るために戦った白血球などが含まれているため、ネバネバとしています。このような痰は、のどにへばりついて排出しにくいため、咳が増えることがあります。

また、喫煙でも痰の量が増加するため、タバコを吸う習慣のある人は、溜まった痰を排出するため咳が出やすくなります。

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

1-4.アレルギー

ダニや花粉など、特定のものに対するアレルギーがあると、それらに反応して咳が出ることがあります。

アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)は人によって違うので、特定するには病院で検査を受ける必要があります。

アレルゲンがわかれば、その物質を避ける・取り除くことで、咳が軽減されます。

◆「アレルギー」についてくわしく>>

1-5.気道の圧迫

肥満により首周りの脂肪が増えると、脂肪に圧迫され気道が狭くなり、寝ている間に咳が出ることがあります。

気道が狭くなると、空気が通りにくくなって十分な呼吸ができず、咳が引き起こされるのです。

また、肺に腫瘍ができると、その腫瘍に圧迫されて気道が狭くなり、咳が出ることがあります。

1-6.その他の原因

咳は、以下のような原因で出ることもあります。

 ・心臓の病気

 ・高血圧の薬(ACE阻害薬)の副作用

 ・ストレス

さまざまな検査を行っても、咳の原因がはっきりしない場合は、ストレスによる心因性咳嗽(がいそう)の疑いがあります。

【参考情報】『Cough』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/cough/basics/definition/sym-20050846

2.咳の種類:出ている期間によって分類する


咳は、どのくらいの期間続けて出ているのかによって分類されます。

様子をみていてもいいのか、すぐに病院を受診した方がいいのかを判断するためにも、まずは咳が続いている期間を確認しましょう。

2-1.急性咳嗽

急性咳嗽(がいそう)とは、咳が続いている期間が3週間未満の状態を指します。

急性咳嗽の原因のほとんどは、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症です。このような場合、病気が快方に向かうにつれ、咳は徐々に改善していきます。

風邪だと思っていても、3週間以上咳が治まらない場合は、風邪をきっかけに別の病気が引き起こされた可能性があります。また、アレルギーなど、感染症以外の原因が潜んでいるかもしれません。

2-2.遷延性咳嗽

咳が出ている期間が3週間以上8週間未満の状態を、遷延性咳嗽と言います。

原因として考えられる主な病気は、以下の通りです。

【感染症】
 
 ・気管支炎

 ・マイコプラズマ肺炎

 ・百日咳

【感染症以外】

 ・喘息

 ・咳喘息

 ・アトピー咳嗽

 ・COPD

 ・副鼻腔炎

 ・胃食道逆流症

 ・降圧剤の一種であるACE阻害薬の副作用

 ・コロナ後遺症

感染症であるマイコプラズマ肺炎や百日咳の咳は長引きますが、時間はかかっても徐々に改善していきます。

一方、感染症以外の原因で咳が長引く場合は、次の段階である慢性咳嗽に移行することがあります。

2-3.慢性咳嗽

咳が出ている期間が8週間以上になると、慢性咳嗽となります。

ここまで咳が長く続くと、何らかの病気が原因である可能性が非常に高くなります。

原因として考えられる主な病気は、喘息やCOPDなど遷延性咳嗽と同じです。

8週間以上咳が続いている場合、適切な治療を行わなければ症状が改善しない恐れが非常に高いです。また、病気が進行すると、治療が難しくなることもあります。

◆「長引く咳の原因|考えられる病気と受診の目安」>>

3.咳の種類:痰の有無で分類する


咳は、痰の有無によっても分類されます。

3-1.乾性咳嗽

痰を伴わない咳で、「コンコン」「ケンケン」という乾いた音がします。

原因として考えられるのは、喘息、咳喘息、アトピー咳嗽、胃食道逆流症などの病気です。

3-2.湿性咳嗽

痰を伴う咳です。咳をするときに痰が絡むので、「ゲホゲホ」「ゴホンゴホン」という湿った音がします。

原因として考えられるのは、風邪などの呼吸器感染症、COPD、肺結核、副鼻腔炎、心不全などの病気です。

病気によっては、先に乾性咳嗽が現れ、徐々に湿性咳嗽に変化することがあります。

4.呼吸器内科で行う検査


咳が長引いていたり、激しい咳により日常生活に支障が出ている場合は、呼吸器内科で検査を受け、咳の原因を調べましょう。

以下、呼吸器内科で行う検査を紹介します。

4-1.画像検査

レントゲン(X線)で胸部の写真をとり、肺の状態を調べます。炎症やがんなどの異物があれば、その部分が白く写ることがあります。

レントゲンではわかりにくい場合は、CTでさらに詳しく検査します。

4-2.血液検査

血液の中にある成分や抗体などを調べ、炎症やアレルギーの有無、アレルギーを引き起こす物質などを確認します。

4-3.呼吸機能検査

肺の機能や気道の状態などを調べ、呼吸機能を評価します。検査には、スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。

喘息や咳喘息、COPDなどの疑いがある場合に、よく行われます。

4-4.喀痰検査

痰を採取し、痰の中に含まれる細菌やウイルス、がん細胞の有無を調べます。

喀痰検査には、喀痰細菌検査と喀痰細胞診の2種類があります。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

5.つらい咳を和らげる対処法


咳が続いていると、筋肉痛で胸が痛くなったり、夜も眠れずにつらいこともあるでしょう。

あまりに症状がつらいときは、病院を受診することをおすすめしますが、咳を一時的に和らげたいときは、自分でできる対処法も試してみてください。

5-1.水分を摂る

気道が乾燥すると、痛みや刺激が強く感じられ、咳が出やすくなります。

咳が続くときは、水分をこまめに摂取して、気道を潤すよう心がけましょう。冷たい飲み物は気道を刺激するので、温かい飲み物を摂りましょう。

5-2.ハチミツの摂取

咳にはハチミツが有効だという研究結果がいくつかあります。

【参考情報】『Honey for acute cough in children』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25536086

咳がつらいときは、ハチミツをスプーン1杯ほどなめるか、お湯にハチミツを溶かしてゆっくりと飲んでみてください。飲みにくい時は、レモン汁を入れるのもおすすめです。

ただし、1歳未満のお子さんには絶対にハチミツを与えないでください。乳児ボツリヌス症という病気を発症する恐れがあります。

【参考情報】『ハチミツによる乳児のボツリヌス症』消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/microorganism_virus/contents_001/

5-3.部屋を加湿する

水分摂取に加え、部屋を加湿して湿度を40~60%に保つと、気道がより潤います。

加湿器がなければ、洗濯物や濡れたタオルを干して、室内の乾燥を防ぎましょう。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

5-4.のどを温める

のどが冷えると、気道の粘膜が敏感になり、咳が出やすくなります。

外出する際は、マフラーなどを巻いて首回りを暖かく保つと、外気温と室温の差が少なくなり、刺激が軽減されます。

室内でも寒さを感じた時は、マフラーやタオルを首に巻いて、気道を温めてみましょう。

5-5.横向きの姿勢で寝る

横向きで寝たり、枕などで少し頭を高くして寝ると、気道が開きやすくなるので咳が和らぎます。

一方、仰向けで寝ると、気道が圧迫されて狭くなり、咳が出やすくなります。

ただし、寝る姿勢がいつもと違うと、寝付きにくくなる人もいるので、できる範囲で調整してみてください。

5-6.タバコをやめる

喫煙の習慣がある人は、タバコをやめるだけで咳が治まることがよくあります。

自力での禁煙が難しい場合は、呼吸器内科の禁煙外来で相談してみてください。

◆「タバコで咳が出る理由と、咳が長引くときに疑われる3つの病気」>>

6.おわりに

健康な人なら、何かの拍子に咳が出てもすぐに治まります。また、風邪で咳が出ているなら、1週間程度で治まります。

しかし、咳が2週間以上続いているなら、原因は風邪以外の病気だと考えてください。

咳は、心臓の病気やストレスが原因で出ることもありますが、ほとんどの場合は呼吸器の病気が原因です。

咳が長引いているときや、眠れないほど激しい咳が出てつらい場合は、呼吸器内科を受診して原因を調べましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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