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大人の喘息|子供の喘息との違いと特徴

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

喘息は、子どもの病気という印象が強いかもしれません。しかし、大人になってからでも、高齢者でも発症する病気です。

大人の場合、喘息だと気づくのに時間がかかることがあり、受診までに遅れが生じることもあります。しかも、気づかずに放置していると症状が悪化し、治療が難しくなる恐れがあるため注意が必要です。

この記事では、大人の喘息について解説します。咳が長引いている人や、息苦しさを感じることが多い人は、ぜひ読んでください。

1.喘息とはどのような病気か


喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで、以下のような症状が現れる病気です。

 ・咳

 ・呼吸が苦しい

 ・喘鳴(ぜんめい):「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という呼吸音

炎症が悪化すると、冷気や煙のようなわずかな刺激にも反応し、以下のような呼吸器症状が引き起こされます。

 ・激しい咳が止まらない

 ・咳がひどくて眠れない

 ・胸に痛みが生じる

 ・背中に張りを感じる

 ・息が苦しくてしんどい

喘息の原因には、アレルギー(アトピー型)とアレルギー以外のもの(非アトピー型)があります。

アレルギーが原因の場合、ダニや花粉、ペットの毛など、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が刺激となり症状が引き起こされます。

アレルギー以外の原因による喘息は、風邪などの呼吸器感染症やストレス、タバコなどが引き金となり、発症します。

◆「喘息」についてもっとくわしく>>

2.大人の喘息・2つのタイプ


大人の喘息は、初めて症状が現れた時期によって、大きく2つのタイプに分けられます。

2-1.子どもの頃に喘息だった人

喘息のうち、15歳までに発症した喘息は小児喘息、大人になってから発症した喘息は成人喘息といいます。

小児喘息の患者さんは、成長に伴い肺などの呼吸器の機能が発達し、徐々に症状が出なくなることが多いです。

しかし、症状が落ち着いて、喘息が「治った」と思っていた人が、ストレスや生活習慣の乱れなどがきっかけで、大人になってから再発することはあります。

また、喘息の症状が現れ始めた時期が遅かったり、小児喘息が重症だった人は、大人になっても症状が持続している場合があります。

【参考情報】『Childhood asthma』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/childhood-asthma/symptoms-causes/syc-20351507

◆「小児喘息」について>>

2-2.大人になってから初めて喘息になった人

子どもの時は喘息と診断されたことがない人でも、大人になってから新たに発症することがあります。

特に、40~60歳代の中高年の発症が多いと言われています。

◆「喘息のタイプ~原因別・年齢別」>>

3.大人の喘息の特徴


小児と大人の喘息には、それぞれ特徴や違いがあります。

以下、大人の喘息の特徴を説明します。

3-1.アレルギー以外の原因が多い

小児喘息の90%以上はアレルギーが原因ですが、大人の喘息はアレルギー以外の原因の方が多いです。

アレルギーが原因なら、アレルギーを引き起こす物質が何なのか、血液検査で特定することができます。しかし、アレルギー以外の原因はわかりにくく、特定に時間がかかることがあります。

◆「喘息とアトピー、アレルギーの関係」>>

3-2.喘息だと気づきにくい

子どもは親が健康状態を見守っているので、ちょっとした変化にも気づいてもらえます。しかし、大人は自分で異変に気づかなければ、治療につながることが難しい面があります。

また、自分で異変に気づいたとしても、ただの風邪だと思ってしまい、そのうちよくなるだろうと楽観視してしまうこともあるでしょう。

さらに、仕事や家事などで忙しいと、これくらいは我慢できると考えてしまい、受診が遅れてしまうことも少なくありません。

3-3.症状を悪化させる生活習慣

子どもの頃は、親の管理下で規則正しい生活を送っていた人も、大人になってからは、遅くまで仕事や付き合いがあったり、つい夜更かしをしてしまったりなどの理由で、生活習慣が乱れていることもあるのではないでしょうか。

食事や睡眠の乱れにより肥満体型になると、喘息を発症するリスクが高まります。また、見た目はそんなに太っていなくても、内臓に脂肪が蓄積されてお腹周りが大きくなった「内臓脂肪型肥満」の人も、やはり喘息を発症するリスクが高くなります。

◆「喘息が肥満で発症・悪化する危険性」>>

さらに、タバコやお酒、仕事のストレス、過労など、大人ならではの嗜好や事情は、喘息を発症・悪化させる原因となります。

3-4.生涯にわたり治療が必要

小児喘息の患者さんは、成人までに寛解(かんかい:ほとんど治ったと言える状態)になることが多く、その後は薬や治療が不要になります。

しかし、大人の喘息は完治が難しく、生涯にわたって治療が必要となります。

気道の炎症を薬でコントロールしながら、咳や息苦しさなどの症状を抑え、健康な人と変わらない生活が送れる状態をキープしていきます。

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

4.大人の喘息・チェックリスト


自分や家族が「大人の喘息では?」と疑っている人は、以下の項目をチェックしてみてください。

 □ 一度咳が出ると止まらなくなる

 □ 夜間や早朝に咳き込むことが多い

 □ 気温や気圧が急に変化すると咳が出る

 □ しょっちゅう痰が絡んでいる

 □ 胸に違和感がある

 □ 運動すると咳が出る

 □ タバコを吸うと咳が出る

 □ お酒を飲むと咳が出る

 □ 同年代の人に比べて息切れすることが多い

 □ 風邪やコロナにかかってから咳が長引いている

当てはまる項目が多い人は喘息、あるいは咳喘息の疑いがあります。

運動すると咳が出る人は、運動誘発性喘息の疑いがあります。

◆「運動誘発性喘息」とは?>>

お酒を飲むと咳が出る人は、アルコール誘発喘息の疑いがあります。

◆「アルコール誘発喘息」についてくわしく>>

5.喘息の検査と治療


喘息の疑いで病院を受診した際に行う、検査と治療を説明します。

5-1.検査

喘息の疑いがある場合に行う検査には、画像検査や血液検査、呼吸機能検査などがあります。

【画像検査】
レントゲン(X線)やCT(コンピューター断層撮影)などで肺とその周辺の画像を撮影し、炎症や異物の有無などを確認します。

【血液検査】
アレルギーの有無を調べたり、アレルギーを引き起こす物質を特定することができます。

【呼吸機能検査】
スパイロメトリーやモストグラフという検査で、気道の狭さや呼気の通るスピードなどを調べます。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

5-2.治療

主に、発作を予防する長期管理薬(コントローラー)と、発作が出たときに鎮める発作治療薬(リバーバー)を用いた薬物治療を行います。

長期管理薬には、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬と、気道を広げて症状を和らげる気管支拡張薬があります。これらの薬を毎日服用することで、次第に症状が出にくくなってきます。

激しい咳が止まらなくなったり、呼吸が苦しくてしんどくなった時には、発作治療薬を使用します。この薬は即効性があり、すぐに症状を和らげてくれます。

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

6.おわりに

咳や息苦しさが続いていて心配な人は、一度呼吸器内科を受診して相談してください。喘息ではなくても、咳喘息など別の呼吸器疾患を発症している可能性がありますし、喘息や咳喘息の場合、市販の咳止め薬や風邪薬を服用しても効果はありません。

大人の喘息は、長期間の治療が必要となる病気です。しかし、適切な治療とライフスタイルの管理により、健康的な生活を送ることは十分可能です。

病気に関する正しい知識を得て、治療に積極的に取り組むことが、生活の質を向上させるカギとなります。医師と協力しながら症状をコントロールして、体調を安定させていきましょう。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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