間質性肺炎とはどんな病気?長引く咳と息苦しさに注意
間質性肺炎とは、肺が硬くなって呼吸がしにくくなる病気です。
「肺炎」という名前がついていますが、細菌やウイルスのような病原体に感染して発症する一般的な肺炎とは、まったく別の病気です。
原因はわからないことも多いのですが、アレルギーや免疫の異常が関与していることがあります。また、コロナの後遺症として見られることもあります。
この記事では、間質性肺炎とはどんな病気なのか、原因や治療法を解説します。咳や息苦しさが続いている人や、健康診断で病気の可能性を指摘された人は、ぜひ読んでください。
目次
1.間質性肺炎とはどんな病気か
間質性肺炎とは、肺の間質やその周辺に炎症が起こる病気です。
肺の中では、気管支が枝分かれして内部に広がっているのですが、枝分かれした気管支の末端には、小さな袋状の部屋である「肺胞」があります。肺胞の内部は、さらに壁のような構造で仕切られ、その壁を「間質」と呼んでいます。
一般的な肺炎では、「肺胞」に炎症が起こるのに対し、間質性肺炎では「間質」に炎症が起こるという違いがあります。また、一般的な肺炎は、抗菌薬などの薬剤治療で回復することが多いのですが、間質性肺炎は、病気の進行を抑えるための治療が基本となります。
間質性肺炎が進行すると、肺がだんだんと硬くなり(線維化)、さまざまな呼吸器症状が引き起こされます。そのため、治療によって繊維化を抑える必要があります。
間質性肺炎は、進行速度によって慢性と急性に分けられます。ほとんどが慢性であり、長い時間をかけて症状が進行しますが、急性だと数日で一気に悪化することもあります。
【参考情報】『Interstitial lung disease』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/interstitial-lung-disease/symptoms-causes/syc-20353108
2.原因
間質性肺炎には、原因がわかるものとわからないものがあります。原因がわからないものは、特発性間質性肺炎と呼ばれています。
以下、原因として挙げられるものを紹介します。
2-1.膠原病(膠原病肺)
膠原病(こうげんびょう)とは、免疫の仕組みに異常が起こることで、本来細菌やウイルスなどの異物に対して働く攻撃の力が、自分自身に向けられてしまう病気の総称です。関節リウマチや皮膚筋炎などの種類があります。
膠原病になると、自分の肺を攻撃することで、間質性肺炎を発症することがあります。
2-2.金属やアスベストなどの粉塵(じん肺)
金属やアスベストなどの粉塵を長期間吸い込み続けると、それらが肺に溜まって、間質に炎症が起こることがあります。
溶接業や石工、歯科技工士など、金属や鉱物を削る作業を行う人にリスクがあります。
【参考情報】『じん肺における間質性肺病変の種類と頻度』日本職業・災害医学学会誌第69巻 第6号
http://www.jsomt.jp/journal/pdf/069060267.pdf
2-3.カビ(過敏性肺炎)
カビに対するアレルギーがある人は、カビを長期間吸い込み続けると、間質性肺炎になることがあります。
特に、エアコンや加湿器の掃除が不十分だと、送風やミストとともにカビが室内に放出され、吸い込むリスクが高まります。
2-4.鳥の羽やフン(過敏性肺炎)
鳥の羽やフンによっても、カビと同様にアレルギー反応により間質性肺炎が生じることがあります。
鳥を飼育している人にリスクがありますが、羽毛布団やダウンジャケットに使用されている鳥の羽が、病気の引き金となることもあります。
【参考情報】『鳥関連慢性過敏性肺炎8例の臨床的検討』日本呼吸器学会誌第44巻 第8号
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/044080550j.pdf
2-5.薬剤、漢方薬、サプリメント(薬剤性肺障害)
原因ははっきりとわかっていませんが、抗リウマチ薬や抗がん剤、抗不整脈薬などの薬を服用した後に、間質性肺炎を発症することがあります。
上記の薬以外にも、市販薬や漢方薬、サプリメントが原因だと推測される事例も報告されています。
【参考情報】『薬剤性の間質性肺炎を早期に発見し、対応するためには』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1b03_r01.pdf
2-6.コロナ後遺症
新型コロナウイルス感染症にかかった後、後遺症として間質性肺炎を発症することがあります。コロナが軽症でもあり得ます。
3.症状
間質性肺炎になっても、初めは症状が感じられないことが多いです。
しかし、症状は感じられなくても病気は進行しているので、いざ症状が現れて病院を受診した時には、既に状態が悪化していることがあります。
また、風邪などの呼吸器感染症が引き金となって、急に症状が悪化することもあります。
3-1.乾いた咳
間質性肺炎では、「コンコン」「ケンケン」という乾いた音の咳が出ます。咳は長引き、徐々にひどくなってきます。
3-2.息切れ
病気が進行すると、「階段を上る」「少し走る」という動作で呼吸がしにくくなり、息切れが生じます。さらに重症になると、着替えや食事、排せつなど日常の動作でも息切れするようになります。
病気により肺が線維化して硬くなると、肺の伸縮性が失われます。その結果、息を吸う際に肺がうまく膨らまずに空気を取り込む量が減少し、息切れが起こります。
3-3.ばち指
人によっては、指が太鼓をたたく「ばち」のような形に変形することがあります。
ばち指の原因ははっきりと分かっていませんが、間質性肺炎のほか、肺がん、肝硬変、心疾患などの病気で見られる症状です。
【参考情報】『Q15ばち状指』日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa38/q15.html
4.検査
この章では、間質性肺炎が疑われるときに行われる検査を紹介します。
4-1.画像検査
X線(レントゲン)やCTで、胸部の画像を撮影して確認します。
間質性肺炎の患者さんの肺は繊維化しているため、肺全体に異常な影が現れます。また、肺が膨らみにくくなるため、空気を十分に取り込めず、横隔膜が上がって見えることがあります。
初期の状態だと、X線ではわかりにくいこともあるため、よりくわしくわかるCT検査を行うことが多いです。
4-2.血液検査
間質性肺炎を発症すると、血液中にある特定のタンパク質(KL-6など)の値が上昇するのでチェックします。
また、膠原病により産生される自己抗体があるかどうかを確認したり、過敏性肺炎の原因となるアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)の種類を調べることがあります。
4-3.呼吸機能検査
スパイロメトリーという検査で、息を吸ったり吐いたりして、肺の状態や呼吸機能を確認します。
間質性肺炎の患者さんの肺は、繊維化により硬くなっているため広がりにくく、空気を取り込む量が減少します。そのため、肺活量などの数値に異常が現れます。
4-4.その他の検査
気管支鏡を用いて、気管支肺胞洗浄検査(BAL)や経気管支肺生検(TBLB)を行うこともあります。
【参考情報】『気管支鏡による検査、治療について Q&A』日本呼吸器内視鏡学会
https://www.jsre.org/modules/general/index.php?content_id=1
その他、必要に応じて、以下の検査を行うことがあります。
・パルスオキシメトリー:血液中の酸素飽和度を測定する
・動脈血液ガス分析:血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定する
・6分間歩行試験:歩くことで病気が身体機能に及ぼしている影響を調べる
・外科的肺生検:手術で肺の組織の一部を取り出して調べる
間質性肺炎の原因を突き止めるには、検査のほか、問診も重要になります。
例えば、服用中の薬や職場環境、鳥の飼育歴など、原因となり得る情報を聞き取る必要があります。
5.治療
間質性肺炎の治療は、原因に応じて異なってきます。
以下、主な治療法について説明します。
5-1.ステロイド薬
間質の炎症を抑えるために使います。プレドニゾロンなどの薬があります。
ステロイド薬を服用すると、ムーンフェイスと呼ばれる顔のむくみや、気分の落ち込みなどの副作用が現れることがあります。
副作用がつらい場合は、量を調整できないかどうか、医師や薬剤師に相談しましょう。
急に症状が悪化した時は、高用量のステロイドを3~5日間点滴する「ステロイドパルス」という治療が行われることもあります。
5-2.免疫抑制剤
過剰な免疫反応や炎症を抑える薬です。シクロスポリンなどの種類があり、ステロイド薬と併用することが多いです。
間質性肺炎の原因として、膠原病の疑いがある場合にもよく使われます。
5-3.抗繊維化薬
肺が繊維化して硬くなるスピードを抑える薬です。ピルフェニドン、ニンテダニブの2種類があります。
5-4.運動療法・理学療法
病気のため息苦しいと、体を動かすのがしんどくなってくるでしょう。しかし、運動不足により筋力が低下すると、ますます息苦しさが強くなってきます。
医師や理学療法士と相談し、症状や体調を見ながら、無理のない範囲で体操などの運動を行いましょう。
また、運動に加え、呼吸法やストレッチなどを組み合わせた呼吸リハビリテーションにより、息苦しさの改善や持久力の向上を目指していきます。
5-5.酸素療法
薬物治療によっても息苦しさが改善しない場合は、酸素ボンベを使った在宅酸素療法を行い、体内に酸素を取り込みます。
外出用の酸素ボンベを用意すれば、外に出かけることも可能です。
5-6.肺移植
薬物療法でも症状が改善せず重篤な場合は、肺移植を検討することがあります。
肺移植を受けるには、年齢や病状などの条件を満たす必要があります。
【参考情報】『移植について|肺|臓器移植Q&A|一般の方』日本移植学会
https://www.asas.or.jp/jst/general/qa/lungs/qa3.php
6.おわりに
間質性肺炎は、肺がんなど別の肺疾患を合併しやすいと言われています。初期は病気に気づくのは難しいかもしれませんが、咳や息切れが長引いていたら、呼吸器内科を受診して相談してください。
間質性肺炎の患者さんは、風邪などの呼吸器感染症にかかると、急に症状が悪化することがあります。手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策をしっかり行い、体調管理に努めましょう。