風邪を引いた後に咳だけ残る原因と考えられる病気
風邪を引いた後、咳だけがいつまでも残っていると、「本当に治っているのだろうか」と不安になるかもしれません。
熱が下がって、鼻水や喉の痛みがなくなっても、咳が長引いていると体力を消耗しますし、風邪以外の病気が隠れている恐れもあるため注意が必要です。
この記事では、風邪の後に咳が残る原因や、考えられる別の病気について解説します。しつこい咳に悩んでいる人は、ぜひ読んでください。
目次
1.風邪とはどんな病気か
風邪は、ウイルスや細菌などに感染して発症する呼吸器の病気です。
【主な症状】
・発熱
・咳
・痰
・鼻水
・くしゃみ
・倦怠感
・胃腸症状 (下痢、嘔吐など)
・頭痛
原因としては、ウイルスが80~90%と最も多く、細菌やマイコプラズマ、クラミジアなどが残りの10%ほどを占めます。
通常は、安静にしていれば1週間ほどでよくなりますが。小さい子どもや高齢者、持病がある方は重症になることもあります。また、風邪のウイルスにより、肺炎や中耳炎が引き起こされることもあります。
今のところ、風邪という病気を根本的に治す薬はありません。熱で体がしんどい時は解熱剤、咳が激しくてつらい場合は咳止め薬で対症療法を行い、症状を和らげます。
【参考情報】『Common Cold』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/commoncold.html
2.風邪を引いた後、咳だけが残る理由
風邪を引いた後、熱や鼻水などの症状が治まったにもかかわらず、咳だけが残ることがあります。
以下、考えられる理由を説明します。
2-1.感染後咳嗽
風邪やコロナなどの呼吸器感染症で咳が続くと、空気の通り道である気道の内部に圧力がかかり、気道の粘膜に炎症が起こることがあります。
すると、気道の粘膜が刺激に弱くなり、過敏に反応するようになるため、病気が治った後もしばらく咳が残ることがあります。
このように、呼吸器感染症にかかった後、治っても出る咳を、感染後咳嗽(がいそう)といいます。
たいていは自然と治まってきますが、咳が長引いてつらい時には、咳止め薬や吸入ステロイド薬などを用いて症状を和らげることがあります。
2-2.風邪とは違う病気が原因で咳が出ている
咳が出ると、風邪だと思い込んでしまいがちですが、本当は、風邪とよく似た症状が現れる別の病気が原因で咳が出ていることがあります。
咳が出る病気には、風邪や肺炎、喘息のような呼吸器疾患が多いのですが、鼻や心臓の病気が原因で咳が出ることもあります。
2-3.風邪が治った後、別の病気にかかって咳が出る
通常、風邪をひいても、1週間程度で咳などの症状は治まってきます。
しかし、風邪が治ったと思ったのに再び咳がひどくなった場合は、風邪を引いた後に、似たような症状の現れる別の病気を発症した可能性があります。
2-4.風邪をきっかけに別の病気を発症して咳が出る
もともとアレルギーの素因がある人は、風邪で咳が出たことがきっかけとなり、喘息や咳喘息のような呼吸器疾患に至ることがあります。
また、治療により喘息の症状が落ち着いてきた人が、風邪をきっかけに気道の炎症が悪化して、再び症状が現れることもあります。
3.咳が長引く主な病気
この章では、呼吸器の病気を中心に、咳が長引く主な病気について説明します。
3-1.喘息
気道に慢性的な炎症が起こることで、咳や息苦しさ、ゼイゼイ・ヒューヒューという特有の呼吸音(喘鳴:ぜんめい)などの症状が現れる病気です。
原因は、ダニやカビなどアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)のほか、風邪などの呼吸器感染症やストレス、タバコの煙などアレルギー以外のものがあります。
喘息の咳は、市販の咳止め薬ではよくならないので、病院で適切な薬を処方してもらう必要があります。
早めに治療を開始すれば、健康な人と同じような生活を送ることも可能ですが、放っておくと、気道の炎症が悪化して難治化することがあります。
3-2.咳喘息
喘息とよく似た病気ですが、喘鳴や息苦しさはなく、咳だけが長く続く病気です。風邪やコロナが引き金となり発症することがあります。
咳喘息を治療せずに放っておくと、そのうち30%程度は喘息に移行すると言われています。
3-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
主に、タバコに含まれる成分を長期間吸い続けたことが原因で、肺に炎症が起こる病気です。咳のほか、しつこい痰や息切れなどの症状が現れます。
今のところ、根本的な治療法はないので、気管支拡張薬などを用いて症状を和らげたり、病気の進行を抑えていきます。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
3-4.アトピー咳嗽
咳に対する感受性が上がり過ぎることで、通常なら反応しない程度の弱い刺激でも咳が引き起こされる病気です。咳のほか、喉のかゆみや違和感が生じることもあります。
家族にアレルギーの人がいる場合や、過去にアレルギー疾患にかかったことがある人が、発症しやすいと言われています。
3-5.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ・ニューモニエという特殊な病原体に感染して発症する病気です。
発熱やだるさ、咳などの症状が現れ、体調が落ち着いた後も、咳だけが1カ月程度残ることが多いです。
3-6.百日咳
百日咳菌に感染して発症する病気です。咳や鼻水など風邪のような症状から始まり、その後、激しい咳が長期間続きます。
3-7.副鼻腔炎
風邪の原因となるウイルスや細菌が、鼻の内部にある副鼻腔に感染して炎症を引き起こす病気です。
副鼻腔炎になると、鼻水や膿が溜まって喉に垂れ落ち、その刺激で咳が出ることがあります。
【参考情報】『Sinus Infection (Sinusitis)』Mayo Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17701-sinusitis
3-8.胃食道逆流症
食べた物や胃液が、胃から食道に逆流する病気です。
この病気になると、胃酸の刺激で喉の粘膜に炎症が生じて、咳や胸焼け、喉の痛み、かすれ声などの症状が現れます。
【参考情報】『胃食道逆流症』神奈川県立こども医療センター
https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/ger.html
3-9.心不全
心不全になると、心臓の機能が低下することで、肺の中に水が溜まりやすくなります。すると、溜まった水分を排出しようとして咳が出ます。
【参考情報】『心不全』国立循環器病センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/
3-10.肺結核
結核菌に感染して発症する病気です。初期は風邪とほとんど同じ症状ですが、咳は2週間以上長引き、微熱や血痰、体重減少なども現れてきます。
3-11.肺がん
肺がんの初期は、ほとんど症状が現れないことが多いのですが、病気が進行すると、咳や息苦しさ、胸の痛み、血痰などの症状が生じてきます。
がんができる部位や種類によって、症状の出やすさや進行の速さなどは異なります。
4.呼吸器内科で行う検査
呼吸器内科では以下のような検査を行い、咳の原因を調べます。
4-1.画像検査
レントゲン(X線)やCT(コンピュータ断層撮影)などで胸部を撮影し、肺の状態を確認します。炎症やがんなどの異物を発見するのに役立ちます。
4-2.血液検査
血液を採取し、血液の中の成分や抗体を調べます。
アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)を調べることができるため、アレルギーの関与が疑われる場合に行われることが多いです。
4-3.呼吸機能検査
息を吸ったり吐いたりして、肺活量などの呼吸機能や気道の状態を確認します。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。
喘息や咳喘息、COPDなどが疑われる場合に、よく行われます。
4-4.喀痰検査
痰を採取して、異常の有無を調べる検査です。喀痰細胞診と喀痰細菌検査の2種類があります。
喀痰細胞診は、痰の中に排出されたがん細胞の有無を調べる検査です。喀痰細菌検査は、痰の中の細菌やウイルスの有無を調べます。
5.おわりに
風邪を引いた後、熱や鼻水などの症状がなくなったのに、咳だけが2週間以上続く場合は、病院を受診して原因を調べましょう。
もし、市販薬を使っても咳が良くならない場合は、風邪とは別の病気が隠れている可能性があります。
咳の原因によっては、市販薬では良くならないばかりか、かえって症状が悪化する恐れもあります。
原因に応じた治療を受け、咳の悪化を防ぎましょう。