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血中酸素飽和度とは?パルスオキシメータでチェック!

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月01日

息切れや息苦しさなどがあり、呼吸が苦しいと感じても、症状だけではその深刻さがわからないことがあります。

そんな時、血中酸素飽和度を測定すれば、病院を受診するかどうかの判断材料になります。

この記事では、血中酸素飽和度およびパルスオキシメータの使い方について解説します。数値が低いときに考えられる病気や、病院を受診する目安も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1.血中酸素飽和度とは


血中酸素飽和度とは、血液中にある「ヘモグロビン」というタンパク質と結合している酸素の割合です。

酸素は、呼吸により肺で二酸化炭素と交換され、体内に取り込まれます。取り込まれた酸素は、赤血球中のヘモグロビンと結合し、全身に運ばれます。

そのため、ヘモグロビンと結合している酸素の割合が高いか低いかを測ることによって、酸素が全身に十分に行き渡っているかどうかを確認することができます。

健康な人の場合、血液中のヘモグロビンのほとんどが酸素と結合しているため、血中酸素飽和度は96〜99%となります。

逆に、何らかの原因で酸素が体内にうまく取り込めない場合や、肺に十分な酸素が入らない場合は、血中酸素飽和度が95%以下に低下します。

血中酸素飽和度が90%未満になると危険な状態です。この状態が続くと、脳や心臓などの主要な臓器に酸素が届かなくなり、命にかかわる恐れがあります。

【参考情報】『Blood Oxygen Level』Clrveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diagnostics/22447-blood-oxygen-level

2.血中酸素飽和度の測定方法


血中酸素飽和度を測定するには、パルスオキシメータという医療機器を使います。

パルスオキシメータは、指先に光を当てることで、その光の通過量から血中酸素飽和度を測定する仕組みとなっています。

2-1.測定方法

パルスオキシメータを指にはさみ、安静にします。センサーが動脈の拍動を感知すると、測定が始まります。

機械に表示される脈波(山形の波)が安定していて、はっきりと表示されていれば、正しく測定できている状態です。

ただし、貧血の人は、もともとヘモグロビンが少ない状態にあるため、数値が正常でも血中の酸素が少ないことがありますし、血中酸素飽和度が正常でも息苦しさが強い場合もあります。

◆「隠れ貧血」とは?>>

そのため、血中酸素飽和度と症状の両方をみて、病院を受診するかどうかを検討することが大切です。

【参考情報】『よくわかるパルスオキシメータ』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/file/pulse-oximeter_general20211004.pdf

2-2.測定時の注意点

血中酸素飽和度を測る前に、マニキュアやつけ爪などを外しましょう。パルスオキシメータで指先に光を当てる際、マニキュアなどがあると障害となり、正しく測定できないことがあります。

また、測定中に指を動かしたり振ったりすると、脈波を正確に捉えることができません。できるだけ安静な状態で測り、脈波がはっきりと表示されていることを確認しましょう。

パルスオキシメータをはさむ指先が冷たくなっていると、正しく測定できないことがあります。指先は冷えやすい箇所なので、冷たいと感じた場合は温めてから測定しましょう。

2-3.購入時の注意点

家庭用にパルスオキシメータを購入する際は、医療機器として認証を受けたものを選ぶと安心です。

スマートウォッチにも測定機能が備わっているものがありますが、これらは医療機器ではありません。スマートウォッチでの測定値はあくまで参考程度にとどめ、正確に測りたい場合は、認証された製品を使用しましょう。

【参考情報】『承認・認証されたパルスオキシメータについて』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/pulse_oximeter.html

3.血中酸素飽和度が低下する主な病気


この章では、血中酸素飽和度が低下する病気について説明します。

3-1.肺炎

肺炎球菌やインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別の細菌)、マイコプラズマ、クラミジアなどの病原体が肺に侵入し、炎症を引き起こす病気です。主な症状は、咳や痰、息苦しさなどです。

肺に炎症が起こると、十分な酸素が体内に取り込めなくなり、その結果、血中酸素飽和度が低下します。

また、コロナが重症化すると、肺炎に進行することがあります。コロナ由来の肺炎では、血中酸素飽和度が低くても息苦しさを感じないことがあり、これを「ハッピー・ハイポキシア(Happy Hypoxia)」と呼びます。

【参考情報】『The mystery of the pandemic’s ‘happy hypoxia’』Science Magazine
https://www.science.org/doi/10.1126/science.368.6490.455

この場合、自覚症状がないため重症化に気づかず急変するリスクが高いので、十分な注意が必要です。

◆「肺炎」についてくわしく>>

3-2.喘息

空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じる病気です。主な症状は、激しい咳や喘鳴(ぜんめい:ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音)、息苦しさなどです。

喘息が重症化すると、体内に十分な酸素が行き渡らなくなり、血中酸素飽和度が低下します。この状態が続くと、命にかかわる恐れがあります。

◆「重症の喘息」についてくわしく>>

3-3.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

別名「タバコ病」ともいわれ、喫煙者に多い病気です。ニコチンなどの化学物質を長期間吸い続けることで、肺に炎症が起こって硬くなり、咳や痰、息切れなどが生じます。

炎症によって壊れてしまった肺胞は、元の状態には戻らないので、次第に呼吸機能が低下してきます。すると、慢性的に血中酸素飽和度が保てなくなります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

3-4.心不全

心臓の動きが悪くなり、息切れや呼吸困難、疲れやすさ、むくみなどが現れた状態です。

血液は、心臓の動きによって全身に巡りますが、心臓の働きが低下すると血液の流れが滞り、酸素を十分に運べなくなります。その結果、血中酸素飽和度が下がってしまいます。

【参考情報】『心不全』国立循環器病研究センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/heart-failure/

3-5.高山病

登山などで標高の高い場所に行くと、気圧や酸素濃度の変化に体が追いつかず、頭痛や嘔吐、立ちくらみ、疲労感などの症状が現れることがあります。

標高の高い場所は、普段生活している場所より空気が薄く、酸素の量も少ないので、低酸素状態による不調が現れやすくなるのです。

重症になると、肺に水が溜まって酸素がうまく取り込めなくなり、血中酸素飽和度が下がることがあります。

【参考情報】『高山病』FORTH|厚生労働省検疫所
https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis02_08mou.html

3-6.睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群になると、眠っている間に呼吸が一瞬止まったり、呼吸が浅くなることを繰り返します。

このような呼吸の障害によって、体内に十分な酸素が取り込めなくなるため、血中酸素飽和度が低下します。

睡眠中に呼吸が止まっても、自覚することは難しいので、病気に気づきにくいことが多いです。しかし、体内の酸素が不足することで、高血圧や心筋梗塞などさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。

◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>

4.血中酸素飽和度が低下していたら


血中酸素飽和度が低下していたら、体内の酸素が不足している状態ですので、医療機関を受診しましょう。受診の目安は、パルスオキシメータの値が95%以下になったときです。

受診に適した診療科は、呼吸器内科、内科です。心疾患がある人は、循環器内科を受診して主治医に相談しましょう。

喘息やCOPD、心不全などの持病がある人は、血中酸素飽和度が少し下がっている場合でも様子を見ることがあります。そのため、受診の基準となる数値については、主治医に確認しておくことが大切です。

◆「息苦しい・呼吸がしにくいと感じたら、呼吸器内科を受診しましょう」>>

5.おわりに

血中酸素飽和度は、呼吸器や心臓の病気の判断に役立ちますが、貧血などの影響で測定値が左右されることがあります。

数値に問題がなくても呼吸が苦しい場合は、病院を受診してください。病院の検査で、病気が見つかることもあります。

また、「数値が低いからコロナに感染している」といった自己判断は避けましょう。パルスオキシメータの数値はあくまで目安であり、病気の診断は医師に委ねることが大切です。

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