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風邪薬が効かない!薬を飲んでも症状が悪化する理由

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年02月10日

咳や鼻水が出ると、「風邪かな?」と思って風邪薬を服用する人は多いでしょう。

しかし、薬を飲んでも思うように症状が改善しなかったり、逆に悪化してしまったりと、期待した効果を感じられないこともあります。

この記事では、風邪薬の効果が実感できない理由や、風邪とは別の病気の可能性についてくわしく解説します。

1.風邪薬の効能


風邪を引いても、そう簡単には仕事や学校を休めないと考える人は、薬を使って少しでも早く治そうとすることもあるのではないでしょうか。

ところが、風邪薬にはさまざまな種類があるので、どれを選べばいいのか迷ってしまうかもしれません。

この章では、風邪薬の成分や効能、そして服用時の注意点について分かりやすく解説します。

1-1.風邪とはどんな病気か

風邪は、ウイルスや細菌に感染して鼻や喉に感染が起こり、急性の炎症を引き起こす病気です。

【主な症状】

 ・鼻水

 ・咳

 ・喉の痛み

 ・発熱

 ・倦怠感

原因の80~90%はウイルス感染であり、代表的なものにはライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどがあります。

健康な大人の場合、安静にしていれば1週間程度で自然に回復しますが、呼吸機能が未熟な乳幼児や抵抗力が低下している高齢者では、重症化する恐れもあります。

【参考情報】『Common Cold』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/12342-common-cold

1-2.市販の風邪薬の主な成分

風邪のつらい症状は、症状に合わせて市販の風邪薬を服用することで、和らげることができる可能性があります。


【発熱や喉の痛み、関節痛】
解熱鎮痛薬を服用すると、熱を下げるだけでなく、全身の倦怠感を軽減し、体力の消耗を抑えることができます。

<解熱鎮痛剤の主な成分>

 ・アセトアミノフェン

 ・イブプロフェン


【咳】
鎮咳薬、いわゆる咳止め薬で咳を抑えることで体力の消耗を抑え、回復を促すことができます

<咳止め薬の主な成分>

 ・デキストロメトルファン

 ・コデインリン酸塩


【痰】
去痰薬、いわゆる痰切り薬を服用すると痰が出やすくなり、喉の違和感や咳を軽減できます。

<痰切り薬の主な成分>

 ・L-カルボシステイン


【鼻水】
鼻水がつらいときは、アレルギーに対しても効果を発揮する抗ヒスタミン薬がいいでしょう。

<抗ヒスタミン薬の主な成分>

 ・クロルフェニラミン

 ・ジフェンヒドラミン


【その他】
迷ったときは、風邪の症状に対する成分を複数含んだ総合感冒薬を選ぶのも一つの方法です。

◆「市販の咳止め薬は効く?効かない?」>>

1-3.病院で処方される主な風邪薬

風邪をひいた患者さんに対して、病院で処方される主な風邪薬には、以下のようなものがあります。

 ・解熱鎮痛薬:カロナール

 ・鎮咳薬:メジコン、アスベリン

 ・去痰薬:ムコダイン、ムコソルバン

 ・総合感冒薬:ピーエイ配合錠、PL配合顆粒

病院で処方される薬は効果が高い反面、副作用が強く出る場合もあります。

一方で、医師の診断に基づいて処方されるため、自分の症状に合った適切な薬を安心して服用することができます。

また、薬の成分量が調整されるため、適切な量が処方されるのも大きなメリットです。

特に子どもは、体重に応じて薬の量が変わるため、医師が体に合った適切な量を処方することで、回復が早まることが期待できます。

◆「咳止め薬・アスベリンの特徴と効果、副作用」>>

1-4.風邪薬の役割

風邪という病気そのものを根本的に治す薬は、まだ存在しません。そのため、風邪薬は「風邪を治す」というよりも、現れている症状を和らげるために使います。

風邪を引くと、激しい咳や高熱などのつらい症状で体力を消耗することがよくあります。そのような症状を和らげることで、体の負担を軽減し、回復を助けることができます。

1-5.服用時の注意

どんな薬も効果が期待できる反面、副作用のリスクが伴います。

そのため、市販薬でも処方薬でも、服用時の注意点を守り、適切に使用することが重要です。


【用量用法を守る】
薬を飲んでも効果を感じられないからといって、服用量や回数を増やすのは止めましょう。

例えば、解熱鎮痛剤の成分としてよく使われるアセトアミノフェンは肝臓で代謝されますが、過剰に摂取すると代謝が追いつかず、肝臓に負担をかける恐れがあります。

また、薬によっては飲み過ぎることで胃腸に不調を引き起こしたり、習慣化してしまうリスクもあります。


【薬の併用を避ける】
風邪薬と解熱鎮痛薬や咳止め薬を併用するのは避けましょう。

これらの薬には同じような成分が含まれていることがあるため、併用すると成分の過剰摂取につながり、副作用が強く出る恐れがあります。


【対象年齢を確認】
咳止め薬に含まれるリン酸コデインなどのコデイン類は、呼吸抑制のリスクが高いため、12歳未満の子どもは服用できません。

お子さんに咳止め薬を飲ませる際には成分表をよく確認し、「コデイン」という記載があれば、子どもに飲ませないよう注意してください。

【参考情報】『コデインリン酸塩の小児等への使用制限について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000171434.pdf



【喘息患者】
喘息の人が、アスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬)を使用すると、喘息発作を引き起こす場合があります。

これらの成分は薬の成分表に記載されていますが、念のため、服用前に主治医や薬剤師に相談しておくと安心です。

◆「アスピリン喘息」についてくわしく>>

2.なぜ、風邪薬の効果を感じないことがあるのか


風邪薬を飲んでも、期待したほど効果を感じられないと思うこともあるかもしれません。

この章では、風邪薬の効果を実感できない理由について説明します。

2-1.薬で風邪を治すことはできない

風邪薬には、ウイルスに直接作用する成分が含まれていないため、風邪そのものを治すことはできません。

風邪薬は、咳などのつらい症状を一時的に和らげることを目的としています。そのため、薬を服用している間に体をしっかりと休めて、自然な回復を助けることが重要です。

2-2.十分な睡眠や休息が取れていない

風邪を引いても十分に休めない場合、風邪薬を服用しても効果を実感しにくいことがあります。

例えば、仕事や家事を休めずに体に負担をかけたり、咳や鼻づまりがひどくて眠れなかったりすると、体力が消耗し、免疫のはたらきが低下してしまうためです。

◆「咳が止まらなくて夜眠れない時の対処法と予防法」>>

2-3.市販薬は成分量が抑えられている

市販薬は誰でも手軽に購入できるため、安全性の高いものが販売されています。

そのため、多くの商品は、成分の配合量は処方薬より少なめで、比較的穏やかに作用するので、効果を感じにくいことがあるかもしれません。

◆「咳止め薬の市販薬と処方薬の違いについて」>>

2-4.風邪とは別の病気にかかっている

風邪と似た症状を引き起こす病気は数多くあります。そのため、発症直後の初期症状だけでは、正確に判断するのが難しい場合が少なくありません。

通常の風邪であれば、1週間程度で症状が治まることが多く、風邪薬を服用することで咳や熱などが和らぐこともあります。

しかし、症状が長引いたり、風邪薬を飲んでも改善しない場合は、別の病気の可能性を考える必要があります。

3.風邪とよく似た症状のある病気


風邪とよく似た症状の病気は、呼吸器疾患をはじめ多数あります。

よく似た症状の病気の場合、風邪薬を服用しても効果がなかったり、かえって悪化する恐れもあります。

3-1.インフルエンザ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。寒い時期を中心に流行し、その年によってウイルスの型が異なります。

主な症状には、突然の38℃以上の高熱、全身の倦怠感、関節痛、頭痛、咳、のどの痛みなどがあります。

健康な大人なら、安静にしていれば自然と回復することも多いのですが、高齢者や子ども、基礎疾患がある人は、肺炎を引き起こし、症状が重くなる恐れがあります。

また、子どもの場合、脳症を発症することもあり、意識の変化や異常行動には注意が必要です。

治療には、タミフルやゾフルーザなどのインフルエンザ治療薬を用います、また、重症化を防ぐためには、毎年の予防接種が非常に重要です。

◆「インフルエンザ」についてくわしく>>

3-2.新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルスによって引き起こされる感染症です。

熱や咳、喉の痛み、全身倦怠感といった一般的な感染症の症状に加え、症状が悪化すると息切れや呼吸困難が現れることもあります。

軽度の症状であれば、時間の経過とともに自然に回復することが多いです。症状がつらいときや重いときは、必要に応じてラゲブリオやゾコーバなどのコロナ治療薬を用いることがあります。

◆「新型コロナウイルス感染症治療薬・ゾコーバの特徴と効果、副作用」>>

コロナが治った後も、後遺症で咳などが長引くことがありますが、ほとんどの場合、時間の経過とともに改善します。

3-3.肺炎

肺炎は、喉や鼻から侵入したウイルス、細菌、真菌(カビ)などの感染が原因で、肺に炎症を引き起こす病気です。主な症状は、発熱、咳、痰、息切れ、呼吸困難などです。

肺の炎症により、呼吸に必要な酸素の取り込みが妨げられ、重症化すると命にかかわることもあります。高齢者や免疫力が低下している人は、特に重症化しやすい傾向があります。

治療は、原因となる病原体に合わせた抗生物質や抗ウイルス薬などで行います。また、予防にはインフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種が有効です。

◆「肺炎の症状・検査・治療の基本情報」>>

3-4.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマという特殊な病原体によって引き起こされる感染症です。最初は風邪に似た症状が現れ、その後、咳が次第にひどくなり、1ヶ月ほど続くことがあります。

この病気は特に子どもに多く、稀に重症化することもあります。

◆「マイコプラズマ肺炎」についてくわしく>>

3-5.アレルギー

アレルギーは、体の免疫システムが過剰に反応して、通常は無害な物質に対して反応を引き起こす病気です。

免疫システムは通常、ウイルスや細菌などの有害なものから体を守る役割を果たします。そしかし、アレルギーの場合、花粉やダニ、動物の毛、食品などの無害な物質を異物と認識し、過剰に反応してしまいます。

この反応により、くしゃみ、鼻水、咳、かゆみ、喘息、皮膚の発疹などの症状が現れます。

◆「アレルギーの原因・種類・検査・治療の基本情報」>>

3-6.喘息

喘息は、気道に慢性的な炎症が生じることで、咳や息苦しさ、喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー、ゼイゼイという呼吸音)などの症状が起こる病気です。

この病気の原因には、アレルギーによるものと、疲労やストレスなどアレルギー以外のものがあります。

喘息は、市販薬ではよくならないので、病院を受診して治療薬を処方してもらう必要があります。

放っておくと、重症化して呼吸ができなくなり、命にかかわることもあります。

◆「喘息」についてくわしく>>

3-7.咳喘息

喘息とよく似た病気ですが、症状は咳だけです。風邪やコロナなどの呼吸器感染症をきっかけに発症することがあります。

治療には、病院で処方される喘息の治療薬を用います。

咳喘息を未治療のまま放っておくと、喘息に移行することもあります。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

3-8.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

喫煙者に多い病気です。主にタバコに含まれる有害な物質を長期間吸い込むことによって、肺に炎症が起こり、気道が狭くなったり、肺の機能が低下したりする病気です。

主な症状は、咳、痰、息切れなどです、治療には、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などを用います。

COPDは進行性の病気で、症状が悪化すると改善が難しくなります。息苦しさが増してくると、酸素療法が必要になることもあります。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

3-9.肺結核

結核菌が肺に感染して起こる病気です。初期症状は微熱や咳、痰など、風邪によく似た症状が現れるため、最初から結核を疑うことは難しいです。

しかし、風邪の場合は1週間程度で症状が治まってきますが、肺結核の場合、咳は2週間以上続きます。

その後、病状が進行すると、体重減少や血痰、呼吸困難などが現れます。

◆「結核を疑ったら、迷わず呼吸器内科で受診を」>>

3-10.肺がん

肺にがんができても、初期段階では無症状であることがほとんどです。がんが進行すると、咳や息苦しさ、胸痛、血痰などの症状が現れます。

また、がんが発生する場所によっても、進行の速さや症状の現れ方は異なります。

肺の入り口付近にがんができると、比較的早く症状が現れますが、肺の末端にがんができると、進行するまで症状が現れないことが多いです。

◆「肺がん」についてくわしく>>

4.風邪薬を飲んでも効かないと感じたら


風邪薬を飲んでも効果が感じられない場合、風邪とは異なる病気の可能性があります。そんな時は、呼吸器内科や内科を受診して原因を調べることが大切です。子どもは、小児科を受診しても良いでしょう。

呼吸器内科では、問診や症状の確認を行い、必要に応じて以下のような検査を実施します。


【画像検査】
レントゲンやCTで肺周辺の画像を撮影し、炎症やがんなどの異常がないかを確認します。


【血液検査】
炎症やアレルギーの有無を調べ、病気の診断に役立てます。


【呼吸機能検査】
肺の機能や気道の状態を調べる検査です。スパイロメトリーやモストグラフなどの種類があります。喘息や咳喘息、COPDが疑われる場合に実施することがあります。


【喀痰検査】
痰を採取して、病原体や異常な細胞の有無を確認します。


◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

5.おわりに

風邪薬を3~4日ほど服用しても症状がよくならないときは、風邪とは違う別の病気の可能性があります。

特に2週間以上続く咳の場合は、呼吸器内科を標榜する医療機関に早めに受診しましょう。

中には、市販薬では治療ができない病気もあるので、早めに病気を発見して治療を行うことが大切です。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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