痩せているのにいびきがひどい!その理由と対策
いびきは「太っている人がかくもの」という印象があります。
確かに、肥満体型だとリスクが高いのは事実ですが、標準体型の人やスリムな人でも、リスクはゼロではありません。
この記事では、痩せている人がいびきをかく原因について解説します。いびきの裏に治療が必要な病気が隠れている可能性もあるため、ぜひ参考にしてください。
目次
1.いびきとは何か
いびきは、空気の通り道である気道が、何らかの理由で狭くなることで発生します。狭くなった気道を空気が勢いよく通過する際に、周囲の粘膜が振動して音が鳴るのです。
【気道が狭くなる主な原因】
・肥満
・飲酒
・疲労
・鼻づまりなどによる口呼吸
肥満体型の人は、のど周辺に付いた脂肪に圧迫されて気道が狭くなりますが、痩せている人でも、お酒の飲みすぎなどで、のど周辺の筋肉がゆるんだときにはいびきをかくことがあります。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694
2.痩せている人のいびきの原因
痩せている人でも、以下のような原因で気道が狭くなると、いびきが出やすくなります。
2-1.あごの骨格
あごが小さい人は、下あごが後ろに引っ込むことで、気道が狭くなりがちです。さらに、あごが小さいと、舌があごの中に収まりきらずにのどの奥に落ち込んで、気道をふさぐことがあります。
いわゆる「小顔」の人は、痩せていてもこのような骨格の特徴ゆえに、いびきが出やすい傾向があります。
2-2.女性ホルモンの影響
産前産後や更年期以降の女性は、ホルモンバランスの影響でいびきをかきやすくなることがあります。
妊娠中は、胎内で赤ちゃんを育てるために皮下脂肪が蓄えられるので、体重が増えます。この時、体重が適正範囲を大きく超えてしまうと、のど周辺にも脂肪が付着して気道が狭くなり、いびきが出ることがあります。
また、産後は女性ホルモンの乱れや育児による疲れやストレスが重なり、いびきをかきやすくなる傾向があります。
更年期以降は、女性ホルモンの一種であるプロゲステロンの分泌量が減少します。プロゲステロンには気道を広げる働きがあるため、これが減ることで気道が狭まり、いびきが出やすくなります。
2-3.口呼吸
風邪や鼻炎などで鼻が詰まって、鼻での呼吸がしづらくなると、無意識のうちに口呼吸に切り替わることがあります。
また、加齢によって口元の筋力が低下すると、寝ている間に口が自然と開き、口呼吸になりやすくなります。
口が開くと、舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、これが気道をふさいでいびきを引き起こします。さらに、睡眠中は全身の筋力が緩みやすくなるため、のど周辺の筋肉も緩んで、より気道が狭くなります。
2-4.アデノイドや扁桃の肥大
アデノイドは鼻の奥、口蓋扁桃(こうがいへんとう)は喉の両側にある、免疫にかかわる組織です。これらはどちらも子どもの頃に大きくなり、成長とともに小さくなります。
子どものいびきは、大きなアデノイドや口蓋扁桃で塞がれ、気道が狭くなることで生じることがあります。
【参考情報】『扁桃炎・扁桃肥大・アデノイド肥大』国立病院機構大阪医療センター
https://osaka.hosp.go.jp/shinryo-navi/disease/e01.html
2-5.甲状腺機能低下
甲状腺は、首のあたりにある小さな器官で、体の代謝を調節するホルモンを作ります。
この甲状腺の機能が低下すると、筋肉の代謝が悪くなり、気道の筋肉が緩みやすくなるため、いびきが出やすくなることがあります。
3.いびきを防ぐための対策
いびきに悩んでいる人は、まずは下記の対策を行ってみましょう。
3-1.横向きで寝る
気道を狭くしないためには、横向きで寝ることが効果的です。
仰向けに寝ると、舌が重力の影響でのどの奥に落ち込みやすくなります。ただし、寝ている間は無意識のため、気づかないうちに仰向けになっていることもあります。
もし横向きで寝るのが難しい場合は、クッションや抱き枕を使うと、横向きの姿勢を維持しやすくなります。
3-2.口呼吸の防止
いびきのもととなる口呼吸を防ぐためには、口周りや舌の筋肉を鍛えることが効果的です。継続的に行うことで筋力がアップし、口が開きにくくなります。
また、口閉じテープやマスクを使って口を閉じるのも一つの方法です。
ただし、鼻づまりがある場合は呼吸が苦しくなることがあるので、無理に使用せず、まずは鼻づまりを解消してから試してみましょう。
◆「口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること」>>
3-3.鼻づまりの改善
口呼吸の原因となる鼻づまりを軽減するため、寝室の湿度を適切に保ちましょう。湿度は40%~60%が目安です。
また、花粉などのアレルギーが原因で鼻が詰まるなら、寝室を清潔に保ち、アレルゲンを減らすことが大切です。空気清浄機を使うのも効果的です。
風邪などで一時的に鼻が詰まっている場合、回復とともに症状は治まります。しかし、アレルギー鼻炎などで慢性的に鼻が詰まっている場合は治療が必要です。
治療により鼻づまりが解消されると、いびきの改善にもつながることがあります。
3-4.生活習慣の見直し
アルコールには筋弛緩作用があるので、飲酒量が多いと喉の筋肉が緩みやすくなり、いびきが出やすくなります。
また、喫煙の習慣がある人は、タバコに含まれる成分の影響で喉に炎症が起きて気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。
いびきを減らすためには、飲酒や喫煙の習慣を見直すことが大切です。
飲酒は適量にするとともに、寝る4時間前までに終えると体内のアルコールが抜け、いびきが出にくくなります。
タバコはきっぱり止めるのが一番ですが、禁煙が難しい場合は、医療機関の禁煙外来を受診すると成功率が高くなります。
4.対策しても効果が感じられない場合
さまざまな対策を行ってもいびきが続いている場合は、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因かもしれません。
4-1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸や低呼吸になることを繰り返す病気です。
・無呼吸:呼吸が完全に止まっている状態が10秒以上続く
・低呼吸:通常の半分しか呼吸できていない状態が10秒以上続く
この病気には、閉塞性と中枢性がありますが、患者のほとんどは閉塞性です。
・閉塞性:気道が狭くなることで無呼吸や低呼吸が生じる
・中枢性:脳の呼吸中枢がうまく働かないことで呼吸が乱れる
睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、激しいいびきや日中の眠気です。ただし、中枢性ではいびきは発生しません。
◆「そのいびき・昼間の眠気、睡眠時無呼吸症候群の初期症状では?」>>
いびきは寝ている間に無意識にかくため、自分では気づきにくいかもしれません。しかし、一緒に寝ている人は、大きないびきで睡眠が妨げられていることが多いため、「うるさい」と指摘されることがあります。
また、睡眠の途中で起きてしまったり、起床時に頭痛やだるさを感じることが多ければ、夜通しいびきをかいている可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の人は、自分ではしっかり眠っているつもりでも、無呼吸が原因で何度も目が覚めるため、睡眠の質が低下し、日中に強い眠気を感じやすくなります。
この眠気は非常に強くなり、起きているのが難しくなることがあります。そのため、車の運転中や重要な会議中でも我慢できずに眠ってしまうこともあります。
その結果、交通事故を起こしてしまったり、職場での信用が低下する恐れもあります。
4-2.睡眠時無呼吸症候群の合併症
睡眠時無呼吸症候群を未治療のまま放っておくと、さまざまな合併症が引き起こされる恐れがあります。
睡眠中に無呼吸や低呼吸になると、体に十分な酸素が届かなくなります。これを防ぐために、心臓は動きを速めて酸素を運ぼうとするため、心臓や血管に負担がかかります。
さらに、無呼吸が繰り返されると、本来なら昼間に働く交感神経が活発になります。夜間睡眠中に交感神経が活発になると血圧が上がるので、血管に負担がかかって動脈硬化を引き起こします。
また、日中の眠気がひどくなり、集中力も低下するため、普段ならできることでも失敗したり、イライラすることも増えます。
このように、心身への負担がかかり続けると気力を失ったり、うつ状態に陥ることもあります。
4-3.睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の検査には、簡易検査と精密検査の2種類があります。
簡易検査は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合に最初に行われる検査です。自宅でアプノモニターという小型の医療機器を装着し、そのまま一晩寝ると、翌朝には数値が記録されています。
さらに詳しい検査が必要な場合は、ポリソムノグラフィーという精密検査を行います。この検査では、脳波や心電図、酸素飽和度、いびきの有無などさまざまな項目を調べて、睡眠時無呼吸症候群を診断します。
精密検査は原則として、医療機関で1泊の入院が必要ですが、当院のような一部のクリニックや医療機関では自宅での検査も可能です。
働き盛りの人にとって、入院は負担に感じるかもしれませんが、いびきが睡眠時無呼吸症候群によるものであれば、合併症のリスクを避けるためにも早期に検査を受けることが重要です。
4-4.睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群の治療には、主にCPAP(シーパップ:Continuous Positive Airway Pressure)という医療機器が使用されます。CPAPは、鼻から強制的に空気を送り込んで無呼吸や低呼吸を防ぎます。
その他、マウスピースやASVを使った治療や手術を行う場合もあります。
マウスピースは軽症から中等症の患者に適用されます。下あごを上あごより前に出すことで気道を広げ、いびきを予防します。
ASV(Adaptive Servo Ventilation)は、中枢性の患者によく使用されます。CPAPと同じように、鼻から強制的に空気を送り込む装置ですが、CPAPが一定のリズムで空気を送り込むのに対し、ASVは患者の呼吸に合わせて空気を送り込みます。
手術では、口蓋垂(のどちんこ)や口蓋扁桃、アデノイドを取り除くことで、気道を広げていびきを軽減します。
5.おわりに
いびきは肥満体型の人に多いのですが、痩せている人でも骨格やホルモンの影響、鼻づまりなどが原因で慢性的に生じることがあります。
口呼吸の改善や鼻詰まりの治療などの対策をしても効果がなかった場合、病院で検査をして原因を調べましょう。
睡眠時無呼吸症候群が原因でいびきが出ている場合は、治療でいびきが改善します。治療を始めた翌朝から「ぐっすり眠れた」「目覚めがさわやか」という実感を得る人も多いです。