亜鉛のおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき
亜鉛は、アトピー性皮膚炎をはじめとした皮膚のトラブルに悩んでいる人や、喘息や花粉症などのアレルギーに悩んでいる人に注目してほしい栄養素です。
この記事では、亜鉛のおもな特徴と、アレルギー性疾患を改善するはたらきについてまとめました。亜鉛を効率よく摂取する方法も紹介しますので、病気の予防や症状の緩和にぜひ役立ててください。
1. 亜鉛とはどのような栄養素か
亜鉛とは、微量ミネラルの1つです。骨や皮膚の発育を促し、新陳代謝を活発化し、エネルギーの産生にかかわっています。
【参考情報】『ミネラル』e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-035.html
亜鉛は舌にある「味蕾(みらい)」という細胞の新陳代謝に重要な役割を果たしているので、不足すると味覚障害が起こることがあります。
また、皮膚や髪の毛のタンパク質の合成にもかかわっているため、不足すると口内炎になったり、爪が割れたり、抜け毛が増えることがあります。
生殖機能ともかかわりが深い栄養素で、女性ホルモンの分泌を活性化し、精子の形成にも不可欠です。亜鉛が不足している男性は、精子の数が減少し、生殖機能が低下する恐れがあります。
【参考情報】『Zinc is an Essential Element for Male Fertility: A Review of Zn Roles in Men’s Health, Germination, Sperm Quality, and Fertilization』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6010824/#:~:text=Zn%20therapy%20improves%20sperm%20quality,DNases%20(37%2C%2046).
発育に関するホルモンの産生や働きにも重要な役割を果たしているため、成長期の子どもに亜鉛が不足すると、同年代の子どもに比べ、身長の伸びや体重の増加が遅れることがあります。
亜鉛は、血糖値の調整に役立つ栄養素でもあります。亜鉛が不足すると、血糖を下げる働きのあるホルモンであるインスリンの分泌が減少し、血糖値が上昇しやすくなります。
2. 亜鉛はなぜアレルギー疾患の改善に必要なのか
亜鉛には免疫細胞である白血球を増やして、免疫のはたらきを直接高める作用があります。そして、粘膜の健康を守る作用のあるビタミンAの利用効果を高めて花粉やウイルスなどの侵入を抑制することで、間接的にも免疫を助けています。
◆「ビタミンAのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき」>>
細胞の生成にも関与しているので、不足すると細胞がうまく作られなくなります。すると、アレルギー物質が細胞から流失し、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎などが引き起こされることがあります。
亜鉛は細胞の新生にかかわる酵素の成分であるため、アトピーになった皮膚の発育を促し、新陳代謝を活発にしてくれます。アトピー性皮膚炎の人には亜鉛欠乏が多く見られ、「傷の治りが遅い」「跡が残る」ことがあります。
アトピー性皮膚炎では皮膚が炎症を起こしていますし、喘息なら気道が炎症を起こしているなど、アレルギー性疾患を持つ人は、体内のどこかで炎症を起こしています。
炎症を抑えるには、活性酸素除去酵素(SOD)が必要なのですが、亜鉛は活性酸素除去酵素の重要な構成要素であるため、不足すると体内の炎症を抑えることが難しくなります。
また、脂質代謝において亜鉛が不足すると、アトピー性皮膚炎や喘息などを抑制するプロスタグランジン(局所ホルモン)が生成できなくなります。
3. 亜鉛を効率よく摂取する方法
推奨される亜鉛の1日の摂取量は、成人男性10mg、成人女性8mg(妊婦は+2mg、授乳婦は+3mg)です。まずは食事でしっかり補い、不足分はサプリメントで摂取しましょう。
3-1. 食事で摂取する
亜鉛が豊富な食品には、以下のようなものがあります。
・牡蠣、スルメイカ、タラバガニなどの魚介類
・豚肉、牛レバー、牛肉などの肉類
生牡蠣には、特に豊富に含まれています。亜鉛はクエン酸やビタミンCと一緒に摂取すると吸収率がアップするため、生牡蠣にレモン果汁をかけて食べるのは、とても良い組み合わせです。
◆「ビタミンCのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき」>>
偏食気味の人や菜食主義の人、添加物の多い加工食品をよく食べる人も亜鉛が不足しがちです。また、亜鉛を十分に摂っていても、消化器系にトラブルがある人は吸収がうまくできず、結果として不足することがあります。
お酒を大量に飲む人も、アルコールを分解するときに亜鉛を消費するため、不足しやすい傾向があります。
3-2. サプリメントで摂取する
亜鉛が不足しやすい人や、食事で必要な量を摂取することが難しい人は、サプリメントで効率よく摂取するのもおすすめです。
ただし、気になる症状があるからといって、サプリメントで大量の亜鉛を続けて摂取すると、銅や鉄の吸収が妨げられて貧血になったり、抗酸化酵素であるSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)のはたらきが弱くなる可能性もあるので、適切な用法用量を守って利用してください。
食べ物から摂取する場合は、過剰摂取の心配はありません。
信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。
GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
4. おわりに
病院で「亜鉛欠乏症」と診断された場合は、薬剤が処方されることがあります。
【参考情報】『亜鉛欠乏症の診療指針2018』日本臨床栄養学会
http://jscn.gr.jp/pdf/aen2018.pdf
皮膚炎や口内炎が頻繁にある人は、病院で血液中に含まれる亜鉛の量を調べてみるのもよいでしょう。赤ちゃんのおむつかぶれや、介護を受けている人の褥瘡(じょくそう)が頻繁にできるときも、亜鉛不足が原因のことがあります。
免疫力が低下して風邪をひきやすくなるのも、亜鉛不足を示すサインです。風邪やインフルエンザなど、呼吸器の感染症にかかると喘息が悪化しやすくなるので、喘息の患者さんは亜鉛不足に注意してください。