喘息になりやすい遺伝子ってあるの?
喘息の患者さんは、「自分の子どもも喘息になるのでは?」と、心配になることがあるかもしれません。
また、親やきょうだい、祖父母など、家族や親戚に喘息の人が多ければ、「うちは喘息の家系なのだろうか」と、疑わしく思うこともあるでしょう。
この記事では、喘息と遺伝の関連について解説します。自分や家族の健康が気になる方は、ぜひ目を通してください。
1.病気の遺伝とその仕組み
遺伝する病気には、大きく分けて以下の2種類があります。
・単一遺伝子疾患
・多因子疾患
1−1.単一遺伝子疾患
特定の遺伝子がひとつあるだけで発症する病気です。代表的な例として、フェニルケトン尿症や筋緊張性ジストロフィーが挙げられます。
【参考情報】『フェニルケトン尿症(指定難病240)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4747
1−2.多因子疾患
複数の遺伝子、さらに生活習慣や環境が作用して発症する病気です。糖尿病やリウマチなどのほか、喘息も多因子疾患のひとつと考えられています。
【参考情報】『Genetics of asthma: an introduction for the clinician』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4629762/
多因子疾患は、ひとつの遺伝子があれば発症する単一遺伝子疾患とは違い、病気を引き起こす要因となる遺伝子を持っていても、その他の条件がそろわないと症状が現れません。
例えば、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の場合、単一遺伝子疾患なら二人とも発症しますが、多因子疾患の場合は、一人が病気になっても、もう一人は病気にならないことがあります。
喘息は多因子疾患なので、親から喘息に関係する遺伝子を受け継いだ子どもが発症する確率は、100%ではありません。
しかし、喘息になりやすい「体質」は遺伝する可能性があります。また、一緒に暮らしている家族は同じ環境にいるので、生活の中で受ける影響も似通ってきます。
【参考情報】『Does Asthma Run in the Family?』GAAPP(Global Allergy & Airways Patient Platform)
https://gaapp.org/is-asthma-genetic/
2.アレルギーと遺伝
私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物などから身を守るため、「免疫」という仕組みが備わっています。
この免疫の働きが、何らかの原因により過剰になり、体に害のないものまで攻撃してしまうことがあります。すると、咳やくしゃみ、発疹などのアレルギー反応が起こります。
アレルギーによる病気には、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症などがありますが、喘息もアレルギーが原因で発症することがあります。
また、食物アレルギーの人が喘息になったり、アトピー性皮膚炎がよくなったと思ったら次は喘息になるなど、アレルギーを起こしやすい体質の人は、複数のアレルギー性疾患にかかることも多いです。
アレルギー体質を子どもが受け継いだ場合、親が喘息だから子どもも喘息になるとは限りませんが、アトピー性皮膚炎など、親とは別のアレルギー性疾患になることがあります。
3.遺伝と環境
喘息になりやすい体質を持っていても、発症する人としない人がいます。それは、生まれてから現在まで生きてきた環境が、人それぞれであることも原因となります。
例えば、ダニが多い環境で暮らしている人と、少ない環境で暮らしている人では、同じ体質でも前者の方がリスクは高いといえます。
ですから、アレルギーの素因となる遺伝子がある人も、環境によっては、喘息とは無縁の一生を送ることがあり得ます。
喘息に関係する遺伝子については研究が続けられ、これから新しい発見があるかもしれません。
ただ、遺伝だけで発症することはないので、アレルゲンなど生活の中にあるリスクを、できるだけ減らす対策も重要です。
子どもがアレルギーになりやすい体質を持っている可能性があるなら、以下のような取り組みで環境を整えるのは、病気の予防によいでしょう。
・こまめな掃除:ダニなどのアレルゲンを減らす
・部屋の換気:湿気を外に追い出してカビを防ぐ
【参考情報】『児童のアレルギー性症状と居住環境要因との関連性に関する調査研究』日本建築学会環境系論文集 第79巻 第695号,107-115,2014年 1月
https://www.jstage.jst.go.jp/article/aije/79/695/79_107/_pdf
◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点」>>
◆ソファで喘息が悪化?適切なソファの選び方とお手入れ方法>>
4.おわりに
もし、喘息になっても、早い時期から適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
特に小児喘息は、大人になるにつれほとんど症状が出なくなることが多いので、咳や呼吸困難など疑わしい症状が3週間以上続いたら、呼吸器内科を受診してください。
病院では問診で、親や祖父母、きょうだいにアレルギーがあるかないかをお尋ねしています。事前に調べておいてもらえると診断の助けになるので、ご協力をお願いいたします。
喘息の前段階とみなされる「咳喘息」のうちに治療を開始すれば、喘息への移行を予防することも可能です。