激しい咳であばら骨が痛い時は
インフルエンザや花粉症、喘息や肺炎など、さまざまな病気で咳は出ますが、あまりにも激しい咳が出続けるため、夜眠れなくなってしまうという人も少なくありません。
咳のしすぎであばら骨(肋骨)や腹筋などに痛みが出現することもあり、ひどい場合にはあばら骨にヒビが入ってしまうようなケースもあります。
そこでこの記事では、激しい咳によって、あばら骨付近に痛みが生じている場合の対応についてお伝えします。
1.激しい咳は体全体に影響する
風邪やウイルス感染といった体調不良により起こる肩や筋肉の痛みは、呼吸筋の疲労や体調不良時の姿勢など原因は様々です。
このような原因で起こった筋肉の不調は、血流改善のストレッチである程度回復できるかもしれません。ただし、ストレッチは必ず体が動かせるまでに体調が回復してから行いましょう。
一般的な咳症状では、せき込むことで喉や胸に軽い痛みが出ることはあっても、あばら骨や腹部にまで痛みが出ることはまずないでしょう。
しかし、激しい咳が続くことで、体中の筋肉が疲弊すると、首や肩、あばら骨や腹部にも痛みが生じる可能性があります。
多くの場合は筋肉痛に近い症状で、咳の原因となる病気が治れば痛みは軽快しますが、中には骨へのダメージが残ってしまう場合があります。
2.あばら骨の疲労骨折
咳で骨に異常が生じる場合の多くは、激しい咳によるあばら骨(肋骨)の疲労骨折です。一度の大きな衝撃や圧力によって生じる骨折とは違い、同じ部位に小さな力が繰り返し加わることによって、該当部位の骨にひびが入ってしまったり、折れてしまうのです。
全身に筋肉痛が出現するほどの激しい咳の場合、必然的に胸部の骨にも少しずつダメージが蓄積します。激しい咳が長い時間続き、それが毎日繰り返されることで、丈夫な骨にもヒビが入る場合があります。
【参考情報】『Multiple Rib Stress Fractures Associated with Chronic Coughing Caused by Untreated Bronchial Asthma in a Premenopausal Woman』PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10750931/
初期の段階であれば症状は軽く、激しい動き(咳も含む)をしない限り、日常生活で痛みを感じる場面は少ないでしょう。動作時に痛みを感じることがあっても、それほどひどい痛みではないため、そのまま放っておいてしてしまう人が多いです。
しかし、咳の原因が喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性疾患である場合、長期的に咳が繰り返され、疲労骨折が進行してしまう恐れがあります。疲労骨折が進むと、普通の動作をしただけでも痛みを感じるようになり、疲労骨折している部位を押すと、圧痛という痛みを感じることもあります。
【参考情報】『疲労骨折とは?』一般社団法人日本骨折治療学会
https://www.jsfr.jp/ippan/condition/ip10.html
◆「咳が続く時に心配な病気の症状・検査・治療の基本情報」>>
3.高齢女性は特に注意
高齢の女性は骨粗しょう症になりやすいとされており、骨折のリスクが高い傾向があります。
骨粗しょう症とは、加齢によって骨の量が減って弱くなり、骨折しやすくなる病気です。女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が減ると骨密度が減るため、特に閉経後の女性に多いと言われています。
また、無理なダイエットをしている人や運動不足の人、お酒やタバコの量が多い人にも注意が必要な病気です・
骨が弱くなっていると、咳などの刺激によって、あばら骨だけではなく、首や腰などの骨にも負担がかかる可能性があります。すると、全身の疲労骨折によって日常生活が著しく制限されてしまうことになります。
【参考情報】『閉経後骨粗鬆症』日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51
4.激しい咳を止める方法は?
咳による骨折を防止するためには、もちろん「咳が出ないようにする」ことが最も重要になります。
市販の咳止め薬もいろいろありますが、根本的な解決にならないケースが多々あるため注意が必要です。
4−1.喘息は咳止め薬では治らない
例えば、気管支喘息や咳喘息などによる激しい咳の場合、一般的な咳止めだけで解決させることはできません。一時的に咳を緩めることはできるかもしれませんが、根本的な改善はしないでしょう。
喘息で咳が出ているのであれば、呼吸機能やアレルギーの検査を受け、適切な薬物治療を行う必要があります。
喘息が原因で咳が出ているなら、市販の咳止め薬を飲んでいる間に病気が進行して咳が激しさを増し、骨に悪影響が出現する可能性も否定できません。
激しい咳を経験した場合には、早めに呼吸器の専門医に相談することが重要です。たとえ喘息やCOPDなどの病気であっても、早期から専門家による治療を行うことで、病気のない人と変わらない日常生活を送ることが可能です。
どんな病気でも同じですが、早期発見と早期治療が最も重要です。
【参考情報】『喘息の治療法/チェンジ喘息』アストラゼネカ
https://www.naruhodo-zensoku.com/treat/
5.まとめ
激しい咳によって、あばら骨が骨折してしまうというケースは非常に多いです。特に高齢の女性の場合、激しい咳を繰り返すことで、腰椎などにもダメージが残ることもあります。
骨折で痛みが出ると、日常生活が制限されてしまい、気力や体力も低下します。また、咳と体の痛みが同時にあると何科を受診すればいいのか悩まれると思います。
激しい咳や体に痛みを感じるほどの咳が出ている場合は、できるだけ早く呼吸器専門医を受診しましょう。体の痛みについて呼吸器内科で問題がないとなれば、次に何科を受診すればよいかをご相談ください。