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風邪をひいた時の基礎知識・対処法・病院受診の目安

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年02月14日

「のどが痛い」「鼻水が出る」「咳が出る」という症状が出たら、まず「風邪をひいた」と思うのではないでしょうか。

この記事では、風邪という身近な病気の基本について解説します。風邪と間違いやすい病気も紹介しますので、病院を受診する際の参考にしてください。

1.風邪とはどのような病気なのか

風邪とは、鼻やのどなどの上気道にウイルスが感染して起こる病気です。正式な病名は「かぜ症候群」といいます。

【主な症状】
 ・鼻水
 ・のどの痛み
 ・咳
 ・痰
 ・くしゃみ
 ・発熱

風邪の原因となるウイルスは、ライノウイルスやRSウイルスなど200種類以上あるといわれています。

◆「子どもに多い「RSウイルス感染症」とは?」>>

コロナウイルスもその一つで、もともとは感染しても軽症で済むありふれたウイルスなのですが、動物からヒトに感染したことで、重症肺炎を起こすように変異したと考えられています。

◆「新型コロナウイルス感染症」について>>

風邪をひいても、自然に治ってしまうことがほとんどです。しかし、症状が軽いからと油断していると長引くことがあります。

2.風邪をひき始めた時の対処法

風邪を早く治すためにも、ひき始めの時期は以下のことに気を付けてください。

2−1.十分な睡眠をとる

まずは体を休めることが大切です。無駄な体力を使わないように体を横たえ、ゆっくり眠って体力を温存しましょう。

2−2.消化のよい食事

胃腸に負担をかけないよう、おかゆやうどん、スープなど消化しやすい食事を摂るのがおすすめです。

のどが痛くて食べ物を飲み込むのがつらい時は、ゼリーやプリン、ヨーグルトなど、のどごしの良い食べ物を摂るのもいいでしょう。

熱があるときは脱水症状を防ぐため、なるべくこまめに水分をとってください。体を冷やさないためには、常温かホットで飲むのがいいです。

2−3.体を温める

寒さを感じるときは、太い血管がある「首」「手首」「足首」の3つの首を温めると効果的です。熱が下がってきて、汗をかくようになったら、脇の下や足の付け根を冷やすと体温が下がりやすくなります。

熱が38度未満で、症状が軽ければ、お風呂に入って体を温めてもいいです。ただし、体力の消耗を避けるため長風呂はせず、湯上りの体を冷やさないようにしましょう。入浴後の水分補給も忘れずに。

◆「風邪の初期症状と風邪かな?と思ったときの対処法」>>

3.病院を受診するタイミング


ほとんどの風邪は1週間くらいで自然に治りますが、咳が激しかったり、咳が2週間以上続いている場合は、病院を受診した方がいいでしょう。

自分でつらさを訴えられない子どもや高齢者の場合は、「元気がない」「食欲がない」「いつもと違う」と感じたら医師に診せてください。

3−1.気管支・肺・耳などに炎症が及んだ場合

風邪をひいて体力が落ちると、からだのさまざまな場所に炎症が起きることがあります。特に、気管支や肺などの呼吸器や、耳や鼻に炎症が及ぶことはよくあります。

「咳が激しくて夜も眠れない」「呼吸をするのも苦しい」といった状態が続いているなら、気管支炎や肺炎を起こしている可能性があるので、呼吸器内科を受診しましょう。

◆「呼吸器内科を受診すべき症状」について>>

ウイルスが耳の中に入ると中耳炎になることがあります。また、ウイルスが鼻の奥深くまで入ると、鼻の内部の副鼻腔という部分が炎症を起こし、副鼻腔炎になることがあります。

耳や鼻の奥が痛かったり、詰まるような感覚が強いなら、耳鼻咽喉科を受診しましょう。特に子どもは、耳と鼻をつなぐ耳管が短く、ウイルスや細菌が耳の中に入りやすいため、中耳炎になることが多いです。

【参考情報】『近くの耳鼻咽喉科専門医を探しましょう!』 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/search_citizens/

3−2.風邪とは別の感染症の疑いがある

風邪と同じような症状は、ほかの感染症でも現れます。例えば、風疹、はしか、おたふく風邪、りんご病など子どもによくある病気がそうです。

また、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎の初期症状も風邪とよく似ていますし、新型コロナウイルス感染症も、軽症だと風邪とほとんど見分けがつきません。

◆「マイコプラズマ肺炎」について>>

「39度以上の熱が3日以上続いている」「熱があり、さらに発疹も出た」「最近、家族や身近な人が風邪以外の感染症にかかった」という場合は、病院を受診した方がよいでしょう。

熱が高くなくても、「水分が摂れない」「何度も吐く」「何だか様子がおかしい」場合は、病院を受診してください。

3−3.咳が2週間以上続く

風邪をひいて咳が出ることはよくあります。しかし、風邪が原因で咳が2週間以上続くことは、めったにありません。

咳が2週間以上続いているときは、肺がんなど重篤な病気や、喘息など呼吸器に症状が出る別の病気の疑いがあります。

いずれも、早いうちに治療を開始した方がよいので、咳が2週間以上続いたら、迷わず呼吸器内科を受診して検査を受けてください。

◆「喘息」について>>

◆「その症状、本当にただの風邪? 「風邪が治らない」と思ったときに疑われる別の病気」>>

4.市販薬を使う際の注意


風邪を根本的に治す薬は、今のところありません。ドラッグストアなどで販売されている風邪薬は、あくまで風邪の症状を抑える薬であって、治す薬ではありません。また、飲んだら早く治るわけでもありません。

ただ、ひどい咳をしずめたり、のどの痛みをやわらげるなど、つらい症状を一時的に抑えるための薬はあります。症状がひどい時は、そのような薬を飲んでぐっすり眠るのもいいでしょう。

市販の風邪薬の中には、子どもや持病のある方は使ってはいけない成分を含んだ製品もあります。ドラッグストアなどで購入する際は、薬剤師に相談すると安心です。

【参考情報】『Cold medicines and children』 MedlinePlus
https://medlineplus.gov/ency/patientinstructions/000942.htm

◆「咳と市販薬」について>>

5.風邪の予防法


風邪の予防法は、「ウイルスの侵入を防ぐ」ことと「体力をつける」ことです。

5−1.ウイルスの侵入を防ぐ

風邪だけではなく、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症もそうですが、原因となるウイルスに触れる機会が多ければ多いほど感染しやすくなります。

「なるべく人込みを避ける」「外出時はマスクを着用する」ことでウイルスに触れる機会は少なくなりますし、「手を洗う」「ドアノブなど多数の人がよく触る箇所を消毒する」ことで、屋内に持ち込まれたウイルスの数を減らすことができます。

◆「マスクの付け方と選び方」について>>

5−2.体力をつける

風邪のウイルスが体内に侵入しても、体力があって免疫のシステムが十分に働けば、ウイルスを撃退して感染を防ぐことができます。

日ごろから「十分な睡眠・休養」「栄養バランスのとれた食事」「適度な運動」を心がけ、体力づくりを行うことで、感染症に対する抵抗力を高めましょう。

◆「腸内環境と免疫」について>>
◆「ビタミンDと免疫」について>>

6.おわりに

風邪は、基本的には安静に過ごしていれば回復する病気です。風邪をひいたら無理をせず、できるだけ体を休めて早く治しましょう。

ただし、「本当に風邪なのだろうか」と不安になった時は、以下の記事を参考にして、病院を受診することも検討してください。

◆「風邪をこじらせたとき」について>>

◆「咳が止まらない時」について>>

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