糖尿病になったら知っておきたい食事のポイント
糖尿病は放っておくと重い合併症を引き起こしてしまうので、適切な治療と食事療法により血糖値をコントロールしていくことが重要です。
また、健康診断などで「糖尿病予備軍」と指摘された人も、今のうちから食材の選び方や健康的なメニューを知り、対策をしておいた方がいいでしょう。
この記事では、糖尿病患者や予備軍の人が知っておきたい食事のポイントを紹介します。
目次
1.なぜ糖尿病の食事管理は重要なのか
糖尿病になっても、初期のうちはほとんど自覚症状がないので、重大な問題とは考えない人もいるかもしれません。
しかし病気が進行するにつれ、以下のような合併症が生じ、失明や人工透析、足の切断など生活に大きな支障が出る状態になったり、命にかかわる恐れがあります。
・糖尿病性神経障害
・糖尿病性網膜症
・糖尿病性腎症
・壊疽(えそ)
・脳梗塞
・虚血性心疾患
これらの合併症が引き起こされるのは、食後に血糖値が急激に上がることと、一日の平均血糖値が大きく変動することによります。
したがって、食後に血糖値が急上昇しないようにコントロールし、血糖値を安定させることが大切です。
2.食事のポイント
食事による血糖値の急上昇や乱高下を防ぐには、糖質を減らし、たんぱく質と食物繊維を積極的に摂ること、そして、食べる順番がカギとなります。
2-1.糖質を減らす
血糖値が必要以上に上昇する主な原因は、糖質の摂りすぎです。そのため、血糖値の上昇を防ぐには糖質の摂取を控えることが大切です。
糖質は米やパン、麺類、いも類に多く含まれており、これらをたくさん食べると血糖値が急激に上がることがあります。
一方で、肉や魚に含まれるたんぱく質や、油やナッツ類に含まれる脂質を摂っても、血糖値はほとんど変化しません。
また、甘いお菓子や果物にも糖質が多く含まれているため、これらも控えるようにしましょう。
お腹が空いたときには、甘いものではなく、ゆで卵やナッツ類など、血糖値が上がりにくい食品を選ぶのがおすすめです。
◆「管理栄養士が教える、糖尿病の方でも血糖値に影響が出にくい間食“8つ”のルール」>>
外食やテイクアウトで食事を選ぶ際は、糖質が多く含まれる麺類や丼物はできるだけ避けましょう。
おすすめは、品数が豊富な定食形式の食事です。おかずをしっかりと食べ、ご飯の量は控えめにするのがポイントです。さらに、ご飯に押し麦や雑穀が含まれていると、少量でも満足感が得られるので効果的です。
ただし、雑穀米だからといって、糖質量はそう大きくは変わらないため、「雑穀だから大丈夫」と思って食べすぎないように注意しましょう。
2-2.たんぱく質を積極的に摂る
健康的な食事を意識するあまり、食事量が少なくなったり、野菜ばかり食べていませんか?
血糖値を安定させるには、たんぱく質をしっかり摂ることがとても重要です。糖質を控えることは大切ですが、食事の量を減らしすぎると筋肉まで減少し、結果として血糖値が上がりやすい体になってしまいます。
筋肉量が減ると糖尿病のリスクが高まり、逆に糖尿病になると筋肉が弱くなりやすいという悪循環に陥る可能性があります。筋肉はエネルギーを蓄える役割を担っているため、筋肉量が少ないとブドウ糖を蓄える場所が不足し、血糖値をコントロールする能力が低下してしまいます。
そのため、筋肉を維持・増加させるための材料となるたんぱく質を十分に摂取することが重要です。たんぱく質は肉、魚、卵、大豆製品に豊富に含まれているので、これらを積極的に取り入れましょう。
【参考資料】『糖尿病と筋肉量の関係』InBody
https://www.inbody.co.jp/dm-comp/
2-3.食物繊維をしっかり摂る
食物繊維をしっかり摂ることで、血糖値の上昇を抑えることができます。食物繊維は、野菜、きのこ類、海藻類などに豊富に含まれているので、これらの食材を積極的に取り入れましょう。
特に、食事の最初に食物繊維が多い食品を食べると、その後に摂取する糖質の吸収がゆるやかになるためおすすめです。さらに、野菜などを先に食べてお腹を満たすことで、ご飯のような主食の食べすぎを防ぐことにつながります。
【参考資料】『Food Order Has Significant Impact on Glucose and Insulin Levels』Weill Cornell Medicine
https://news.weill.cornell.edu/news/2015/06/food-order-has-significant-impact-on-glucose-and-insulin-levels-louis-aronne
ただし、じゃがいもやさつまいもなどのいも類は糖質が多いため、野菜が多く使われているからといってポテトサラダのような料理は控えましょう。
また、野菜ジュースは食物繊維がほとんど取り除かれており、糖質が多いことから、糖尿病の方にはおすすめできません。野菜ジュースではなく、新鮮な野菜そのものを食べるように心がけましょう。
2-4.食べる順番に気を付ける
同じ食材でも、食事のタイミングや食べる順番によって血糖値の上昇の仕方が変わってきます。
特に、空腹時に糖質の多いものを食べると、血糖値が急激に上がりやすくなります。そのため、食事をする際は、まず野菜やおかずを食べてから、ご飯やパンなどの糖質を最後に摂るようにしましょう。
また、間食で甘いものを食べると、血糖値が急上昇しやすくなります。どうしても甘いものが食べたい場合は、食べる前に豆乳やアーモンドフィッシュなど、たんぱく質が豊富なものを先に摂りましょう。甘いものを単体で食べないことがポイントです。
2-5.欠食・ドカ食いを避ける
忙しさのあまり朝食を抜くなど、食事の回数を減らしてしまうと血糖値が急激に低下し、その後急上昇することがあります。血糖値の急激な変動を避けるためにも、食事は朝・昼・晩の3食をしっかりと摂りましょう。
特にインスリンや糖尿病の治療薬をを使用している人は、食事を抜くことで低血糖を起こしやすくなるので注意してください。
また、食事を抜くと空腹のあまり、次の食事の際に、一度に大量に食べてしまうこともあるでしょう。
このようなドカ食いも、血糖値の急上昇を招く一因となりますし、肥満につながる行動なので控えましょう。
2-6.飲酒時の注意点
糖尿病でも医師から許可を得ている人は、適度な飲酒を楽しんでも構いません。
お酒を飲むときは、適量を守るとともに、高たんぱく・低カロリーのおつまみと一緒に飲むのがいいでしょう。
また、お酒の代わりに楽しむノンアルコール飲料の中には、糖分の多い製品もあります。飲み過ぎを防ぐためにノンアルコール飲料を利用する場合は、糖分の少ない製品を選びましょう。
3.おわりに
食生活を見直して、日々の食事を管理することにより、血糖値を下げることが可能です。
重い糖尿病や合併症を防ぐために、しっかりと血糖コントロールしていきましょう。
当院では、管理栄養士による栄養カウンセリングを行っています。わからないことがあれば、お気軽にご相談ください。