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子どもに多い「RSウイルス感染症」とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年06月24日
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赤ちゃんや小さな子どもに鼻水や熱が出て、「風邪かな?」と思っていたら、咳がひどくなり、呼吸が苦しそうで、症状が重くなってきた……。

そんなときは、RSウイルス感染症の疑いがあります。特に、生後6カ月未満の赤ちゃんは重症化しやすいので、注意が必要な病気です。

この記事では、RSウイルス感染症という病気の基本について解説します。病院を受診する際の目安や、家庭でのケアの参考にしてください。

1.RSウイルス感染症とはどのような病気なのか

RSV

RSウイルスとは、風邪のウイルスの一種です。感染力が非常に強いウイルスで、2歳までにほぼすべての子どもが感染します。

感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込んだり(飛沫感染)、ウイルスの付着したドアノブやコップなどに触れたりすること(接触感染)で感染します。

繰り返し感染することで徐々に免疫ができるので、大人は感染しても軽症で済みます。しかし、乳幼児が感染すると重症化することがあります。

【参考情報】『RSウイルス感染症とは』国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html

1-1.症状

発熱子供

主な症状は、鼻水、発熱、咳です。まず、鼻水や38〜39℃の発熱があり、続いて咳が出るようになります。症状は、1~2週間ほどで治まります。

ただし、重症化すると細気管支炎や肺炎を起こし、咳がひどくなることがあります。

重症化すると呼吸が苦しくなり、呼吸の際に「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という音がしたり、息を吸い込むときに胸のろっ骨のあたりがへこむ様子がみられます。

このような症状が出たら、すぐに病院を受診してください。

特に6カ月未満の乳児、低出生体重児、心臓に持病がある子どもは重症化しやすく、入院が必要になることもあります。

【参考情報】『RSV in Infants and Young Children』CDC(Centers for Disease Control and Prevention)
https://www.cdc.gov/rsv/infants-young-children/index.html

1-2.検査方法

RSウイルス感染症の検査が保険適用になるのは、重症化のリスクが高い1歳未満の乳幼児と一部の例外のみです。1歳以上の子どもや大人は、検査の必要がないと判断されることが多いです。

検査では、インフルエンザの検査のように、鼻に綿棒を入れて組織を採取し、検査キットで感染しているかどうかをチェックします。

10~30分程度で結果がわかりますが、検査のタイミングによっては、感染していても陰性となることがあります。

◆「インフルエンザの検査~方法・時期・費用」>>

1-3.治療法

子供安静
風邪と同様、特効薬はないので、鼻水や咳、痰、高熱など、つらい症状を和らげる治療を行います。

呼吸が苦しくなった時には吸入をしたり、赤ちゃんがミルクを飲めなくなったりした時には点滴を行うこともあります。また、呼吸困難になった場合は、入院して人工呼吸器を用いることがあります。

家庭では、なるべく安静に過ごし、こまめに水分を摂るようにしてください。また、中耳炎を防ぐため、鼻水が出ていたらこまめに吸引したり、鼻をかむようにしてください。

RSウイルスの感染力は非常に強く、幼稚園や保育園、高齢者施設では集団感染を起こすことがあります。熱が下がっても、まだウイルスは排出されている可能性があるので、咳などの症状がみられなくなるまで休むのがよいでしょう。

【参考情報】『2018年改訂版保育所における感染症対策ガイドライン』こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf

2.予防するには

マスク手洗いうがい
風邪や新型コロナウイルス感染症の予防法と同じように、マスクや手洗い、ドアノブなどよく触れる場所を消毒するのが基本です。

大人や年長の子どもは、RSウイルスに感染しても軽症で済むことが多いため、知らないうちに乳児にうつしてしまうことがあります。

乳児は自分でマスクや手洗いなどの予防ができず、かつ、感染すると重症化のリスクが高いため、周囲がきちんと対策して感染を防ぐことが大切です。

◆「新型コロナウイルスに感染しない・させない予防法」>>

早産で生まれたお子さんや、基礎疾患のあるお子さんは、医師からシナジス(パリビズマブ)の注射を勧められることがあります。

シナジスは、RSウイルス感染症の重症化を予防する薬剤ですが、非常に高価なこともあり、健康保険の適応になる対象は限られています。

2024年より、妊娠24~36週の妊婦は、胎児が生まれた後にRSウイルス感染症の発症や重症化を防ぐことができる、アブリスボというワクチンが接種できるようになりました。

また、60歳以上の方は、アレックスビーというワクチンが接種できます。

3.RSウイルス感染症から喘息になる?

RSウイルス感染症にかかって重症化すると、症状が治まった後も気管支が敏感になり、季節の変わり目や風邪をひいた時に、喘息のような症状が出ることがあります。

また、喘息になりやすい体質の子どもがRSウイルスに感染して重症化した場合、感染が引き金となって喘息を発症することがあります。

◆「小児喘息」について詳しく>>

喘息のような症状は、子どもの成長につれ出なくなることもありますが、2週間以上咳が続いているときは、呼吸器内科で咳の原因を調べてみることをおすすめします。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

ちなみに、高齢者も喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の持病がある人は、RSウイルスに感染したことをきっかけに、病気が悪化する恐れがあります。

4.おわりに

RSウイルスは繰り返し感染しますが、徐々に免疫ができるため、成長とともに症状は軽くなっていきます。

大切なのは、重症化しやすい乳幼児、特に生後6か月未満の乳児への感染を防ぐことと、乳幼児に呼吸困難が見られたら、ただちに病院を受診することです。

自分で対策できない乳幼児への感染を防ぐには、大人のサポートが欠かせません。保護者をはじめ、保育園・幼稚園のスタッフ、子ども向けの施設や教室で働いている人は、風邪のような症状が出たら、たとえ症状は軽くても、子どもにうつさないように対策を講じてください。

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