嚢胞性肺疾患について
「嚢胞」とは、体内にできる袋状の組織で、通常はみられない異常な組織です。
嚢胞性肺疾患とは、肺の中に多数の嚢胞が生じる病気の総称です。
1.嚢胞性肺疾患
嚢胞性肺疾患には、さまざまな原因や病態があります。
肺の中にある1㎜以下の薄い壁を持つ1㎝以上の嚢胞を「ブラ」と言います。
ブラは、自然気胸の原因や、巨大なブラが正常な肺を圧迫して呼吸困難につながる可能性もあります。また、ブラがある場合は、正常な肺と比べて32倍肺がんのリスクがあるとされます。
1−1.発生異常
胎児のときに気管支や肺の組織が正常につくられないと、子どもの肺に嚢胞ができることがあります。
気管支原性嚢胞は、胎児のときに異常な組織が発生し、それらが正常な気管支にならず、嚢胞を形成するものです。
先天性肺気管支奇形は、未熟な気管支の異常増殖により、肺の中に様々な大きさの嚢胞を形成します。
その他に、新生児大葉性肺過膨張症、肺分画症などでも嚢胞形成がみられます。
1−2.非感染性肺病変
自己免疫疾患などに関連し、肺に嚢胞ができることがあります。
リンパ球性間質性肺炎では、白血球の一種であるリンパ球が、肺の空気の袋である肺胞に集積することによって嚢胞が形成されます。
その他に、リンパ脈管筋腫症やアミロイドーシスなどでも嚢胞形成がみられます。
1−3.感染性肺病変
細菌や寄生虫に感染することが原因で、肺に嚢胞ができることがあります。
ブドウ球菌性肺炎では、肺に膿がたまったり、嚢胞が形成されることが知られています。
後天性免疫不全症候群(AIDS)患者にみられるニューモシスチス肺炎では、肺の上側に嚢胞ができることがあります。
寄生虫に感染して起こる包虫症や肺吸虫などでも嚢胞形成がみられます。
1−4.遺伝性肺病変
遺伝性の病気が原因で、肺に嚢胞ができることがあります。
神経線維腫症や結節性硬化症などが肺に嚢胞を形成することがあります。
1−5.腫瘍性
がんが転移したものが、嚢胞としてみられる場合があります。
【参考資料】「What to Know About Cystic Lung Disease」 Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/how-you-can-help-reach-the-right-cystic-lung-disease-diagnosis/
2.症状
肺の嚢胞は、さまざまな原因によって形成されます。
初期段階では無症状ですが、嚢胞が大きくなると正常な肺を圧迫して息切れや胸痛などの症状があらわれます。
細菌感染などが原因の肺炎だと、発熱や咳、痰などもみられます。
3.検査
胸部エックス線検査や胸痛CT検査が中心となります。
最初の画像診断として、胸部エックス線検査によりブラや気胸があるかを確認します。その後、胸部CT検査により部位や状態などを確認します。
4.治療
無症状のブラに対しては、経過観察となります。
自然気胸に対しては、体内にたまった空気を抜く「胸腔ドレナージ」が行われます。
再発性の気胸や抗生物質で改善しない感染性のブラなどに対しては、手術が行われます。
【参考資料】「新・呼吸器専門内科医テキスト」日本呼吸器学会
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/
5.おわりに
嚢胞は、様々な原因で形成され、呼吸困難やがんにつながる可能性もあります。
息苦しさなどの気になる症状がありましたら、早めに呼吸器内科を受診しましょう。