咳で血の味がした時に考えられる病気
咳をした時に、痰に血が混じったり、血の味がしたり、という経験はありますか? その場合にはさまざまな病気が疑われます。
中には深刻な病気も存在し、できるだけ早期に呼吸器専門医の対応が必要になるケースも少なくありません。
そこでこの記事では、咳や痰に血が混じる場合に考えられる疾患やその対応方法についてお伝えします。
目次
1.咳や痰に血が混じっていた場合は?
咳や痰に血が混じるという場合には、血痰(けったん)と喀血(かっけつ)に分類して診断を進めます。
一般的に、痰に血液が混じっている場合を血痰、何らかの原因で、気道の出血によって咳や痰と一緒に血液そのものを吐く場合を喀血と呼びます。
喀血の色調は鮮紅色で、血液中に泡が含まれていることがあり、食物の残渣は混じっていません。
多くは咳とともに喀血しますが、咳がないこともあります。
参考までに、喀血の量と外来受診の目安として以下ご覧ください。
<喀血の量と治療の必要性>
・少 量:ティッシュに付着する程度 ⇨経過観察、外来受診
・中等量:コップ1杯程度 ⇨外来受診
・大 量:コップ1杯以上 ⇨救急受診
それぞれによって原因となる病気や状態は異なるため、血痰なのか喀血なのかを判断することが重要となります。
例えば、口から血が出た場合(痰に血が混じった場合)、真っ先に考えられる出血した可能性のある部位としては、鼻の中や口の中、喉から、気管支から、あるいは鼻血が口の中に流れることで、口から血が出たように錯覚する場合もあります。
【参考情報】『痰に血が混じりました』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q04.html
2.血液の混じった痰以外の症状がポイント
激しい咳などの症状がなく、少量の血液が痰に混じっているというような場合には、口の中や鼻の粘膜からの出血である可能性が高いです。
しかし、咳や発熱など、その他の症状が発現している状態で、咳や痰に血が混じっているという場合には、のど(咽頭・喉頭)からの出血や気管支・肺からの出血も否定できません。
特に、肺の奥からの出血の場合、早急な対応が必要となることも少なくありません。もしくは、吐血(とけつ)といった食道や胃からの出血である可能性も考えられます。
そのため、呼吸器の専門医であれば、痰に血が混じるという症状の他に、咳や発熱、腹部の痛みなど、さまざまな症状を総合的に判断して診察を進めていきます。
◆「血痰が気になりますか?呼吸器内科で原因を調べましょう」>>
3.血液の色や性状で見分ける場合も
血痰や喀血、吐血などを、色や性状で見分けることもできます。
一般的に血痰や喀血は鮮紅色の出血であることが多く、吐血は嘔吐とともに食べ物が混じった暗赤色の出血のことが多いといった違いがあります。
吐血の血液は、嘔吐とともに胃液によって酸化されることで黒く変色するため、暗赤色のどす黒い血液になりやすいです。
しかし、例外的に、食道からの吐血の場合は血液が胃を通過しないため、喀血と同じように赤い血液が吐き出されることもあります。
他にも、睡眠中に喀血が起きてしまうと、血液を飲み込んでしまうため嘔吐することがあります。この場合は、胃液の影響を受けて黒褐色に変化し、消化管からの吐血に間違えてしまうことがあります。
このように、咳や痰に血が混じるという病気には、呼吸器系の病気以外にもさまざまな病気が考えられるため、全身症状を診て総合的に診断していく必要があります。
鼻や喉からの出血となれば耳鼻咽喉科、吐血であれば消化器科、血痰・喀血であれば呼吸器内科で診てもらうのがよいです。
【参考情報】『吐血の原因』タケダ健康サイト
https://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=toketsu
4.咳や痰に血が混じる場合に行う検査
咳や痰に血が混じる場合には、以下のような検査が行われます。
• 聴診: 医師が聴診器を使用して胸部の音を聴き、呼吸音や異常な音を確認します。
• 血液検査: 血液検査により、貧血や感染症の兆候を調べます。
• 胸部X線検査: 胸部のX線画像を撮影し、肺や気管支に異常がないかを確かめます。
• 胸部CT検査: X線を使用して高解像度の断層画像を撮影し、より詳細な検査を行います。
これらの検査によって、結核や肺がん、肺塞栓症などの病気がないかを確認します。
5.喀血の見方
咳に血液が混じっているという状態の中でも、重篤な疾患が潜んでいる可能性がある「喀血」についてご紹介します。
5−1.喀血の原因となる病気
喀血を引き起こす病気には、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、特発性喀血症(原因不明で発症する喀血)、肺アスペルギルス症、肺結核や肺結核後遺症、肺がんなど、さまざまな病気が存在します。
喀血の原因となる疾患は呼吸器系の疾患である場合が多く、中には重篤な病気も含まれているため、咳と同時に鮮やかな血液が出るという症状がある人は、早期に呼吸器専門医を受診することをおすすめします。
少量の出血では、抗生剤や止血剤の服用によって治療するのが一般的です。大量喀血は極めて稀ですが、止血困難な場合や、それにより命の危険もあり、速やかに専門的な治療が必要となります。
とはいえ、喀血(喀血疑い)の原因はそれほど重篤なものではないこともあるので、過度な心配をする必要はありません。
例えば、先にも述べたように、血が混ざった痰は、上気道感染症やウイルス性気管支炎など、多くの軽い呼吸器感染症でよく見られる症状であり、鼻からの出血が喉を伝って咳と共に排泄されているだけのこともよくあります。
そのため、痰や咳に血が混じったという症状があっても、過度な心配は不要ですが、大きな病気が隠れている可能性もあるため、できるだけ早く専門家による診察を受けましょう。
【参考情報】『Coughing up blood』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/symptoms/coughing-up-blood/basics/definition/sym-20050934
5−2.特に注意すべき喀血は?
喀血のある人に、咳とともに大量の血が出る(激しい咳が出る)、息切れがある(呼吸が苦しい)、大量の出血(筋力低下、立ちくらみ、発汗、心拍数の上昇など失血症状がみられる)などの状態が合併している場合には、救急受診が勧められます。
以上のような深刻な症状がなくても、呼吸器系疾患を抱えている人(喘息やCOPD、肺がんなど)などは、喀血が確認された後、少なくとも1-2日以内にかかりつけ医の診察を受けることが重要です。
万が一大きな病気や重篤な症状であった場合にも、早期の対応で治療できる可能性が高まります。
【参考情報】『喀血・受診のタイミング』MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp
◆「「肺がん」は死亡原因第1位。だからこそ早期発見、そして「禁煙」を」>>
6.おわりに
咳や痰に血が混じることでパニックになる人もいるかと思いますが、まずは落ち着いて「どのような血液なのか」を観察しましょう。
そして、しっかりとその情報を医師に伝えられるようにしておきましょう。適切に情報を伝えることで、診断や治療を行いやすくなるからです。
特に咳などの呼吸器症状を合併している場合には、呼吸器系に大きな病気が隠れている可能性があるため、早めに呼吸器の専門医を受診することをおすすめします。