睡眠時無呼吸症候群の治療に使う「ASV」とは?
睡眠時無呼吸症候群というのは、その名の通り、睡眠時に呼吸が止まったり、うまく行われないことで、一時的に無呼吸・低酸素状態が発生する病気です。
無呼吸・低酸素状態を繰り返していると、昼間の眠気や頭痛に悩まされたり、ひいては脳卒中や心筋梗塞などの恐ろしい病気を招く可能性もあります。
この病気の代表的な治療法として、CPAP(シーパップ)療法や手軽なマウスピースを用いたものが知られていますが、新しい治療法として、ASV(Adaptive servoventilation)が登場しました。
この記事では、ASVについて詳しく解説します。
1.睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法・CPAP
睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法として、CPAP(シーパップ)療法があります。
この療法では、寝ている間に専用のマスクを装着して鼻から空気を送り込み、睡眠中に気道が塞がらないようにして無呼吸を防ぎます。
CPAPで無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、健康な人と同程度まで抑えられることがわかっています。
【参考情報】『CPAP(シーパップ)とはどのような治療法ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q32.html#:~:text=CPAP%EF%BC%88%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%97%EF%BC%9A%E6%8C%81%E7%B6%9A%E9%99%BD%E5%9C%A7,%E9%81%A9%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
2.新しい呼吸補助療法・ASV
ASVは、心臓の機能が低下している慢性心不全の患者さんが、在宅で使用する人工呼吸器として使われてきました。
慢性心不全の患者さんは、睡眠中に呼吸が止まってしまったり、逆に呼吸が極端に速くなってしまうなど、しばしば呼吸が乱れてしまうことがあります。
このような呼吸の乱れ(チェーンストークス呼吸)によって、全身に酸素が届きにくくなり、結果的に低酸素状態となります。
呼吸の乱れが毎晩のように続くと、ますます心臓の機能が悪化し、眠りも浅くなる…という悪循環が発生します。慢性心不全の患者さんの半数以上が、このような症状に悩まされていると言われています。
ASVは、このような呼吸困難感や息切れを改善するために開発された、マスク式の人工呼吸器です。
慢性心不全の患者さんが、呼吸の乱れによって睡眠中に低酸素状態となるメカニズムは、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、無呼吸により低酸素状態となる流れと似ています。
そこで、睡眠時無呼吸症候群の患者さんにも、睡眠時の無呼吸状態や低酸素状態を改善するために、ASVの使用が有効な場合があると考えられるようになったのです。
【参考情報】『Basics of Sleep Apnea and Heart Failure』American College of Cardiology
https://www.acc.org/latest-in-cardiology/articles/2014/07/22/08/25/basics-of-sleep-apnea-and-heart-failure
3.CPAPとASVとは何が違うのか?
CPAPもASVも「睡眠時の呼吸をサポートする」という働きは同じです。
しかし、CPAPがいつも一定のリズムで酸素を送り込むのに対して、ASVは使用者の呼吸に合わせて適正な量の酸素を送り込む(呼吸と同調する)機能を持っています。
そのため、呼吸が止まったり速くなってしまう慢性心不全の患者さんには、不規則な呼吸に対応できるASVが使われているのです。
睡眠時無呼吸症候群の治療ではCPAPを用いることが多いのですが、心臓の病気などが原因で呼吸のリズムが乱れてしまう患者さんには、ASVを使用することがあります。
【参考情報】『睡眠呼吸障害と心不全の関係』日本心臓病学会
http://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jjc/pdf/J071-11.pdf
4.ASVの使用方法
ASVは、専用のマスクを装着すれば自動的に作動する仕組みになっているので、難しい操作は必要ありません。
ただ、寝ている間にマスクを装着するということに、はじめは違和感を持つ人もいるかもしれません。また、洗浄などのお手入れも必要なので、面倒に感じることもあるでしょう。
使っているうちに慣れてくるとは思いますが、装着時の違和感がいつまでも消えなかったり、使用方法に疑問を感じたら、医師や看護師に相談してください。
5.おわりに
ASVもCPAPも、睡眠時の無呼吸を防ぐために有効な装置です。どちらを使用するかは、病気の原因や症状によっても変わってくるので、医師の判断に従ってください。
また、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を引き起こさないため、生活習慣の見直しや肥満の解消、睡眠時無呼吸症候群の原因となる疾患の治療も併せて行っていきましょう。