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喘息治療に使う吸入ステロイド薬の副作用は?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年11月21日

・喘息だと診断され、吸入ステロイド薬が処方された
・ステロイドには副作用もあると聞くけど、使っても大丈夫?

テレビやネットでステロイド薬の情報を見て、不安を感じてしまう方も多いと思います。

この記事では、喘息の治療で使う吸入ステロイド薬と、内服や注射のステロイド薬の違いを説明します。副作用が気になる方はぜひ読んでください。

1.ステロイド薬とは

まず、ステロイド薬がどんな薬であるのか、気になる副作用について理解していきましょう。

1−1.ステロイドは体内で作られるホルモン


ステロイドはもともと、副腎という臓器で作られるホルモンです。副腎は腎臓の上に対になって位置する小さな臓器で、ステロイドをはじめとした各種ホルモンを分泌しています。

【参考情報】『副腎とは』名古屋大学医学部附属病院 乳腺・内分泌外科
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/nyusen/sick/adrenal/about/

ステロイドには、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用があります。この作用を活かして開発されたのがステロイド薬です。

ステロイド薬には、塗り薬、吸入薬、内服薬、注射薬などがあり、以下のように使われています。

・塗り薬:主にアトピー性皮膚炎の治療に使用
・吸入薬:主に喘息の治療に使用
・内服薬:リウマチや膠原病などの治療に使用
・注射薬:関節炎や腱鞘炎の痛み止めなどに使用

上記以外にも、ステロイド薬はさまざまな病気の治療に用いられ、病気の重症度や患者の状態によって、薬の種類や投与法を使い分けます。

1−2.ステロイド薬の副作用


ステロイド薬には、炎症を抑える強い効果があります。その反面、長期間使用したり、一度に大量に使用した場合に、以下のような副作用が現れることがあります。

・免疫力の低下:風邪などの感染症にかかりやすくなります
・骨粗鬆症:骨量が減少して、骨がもろくなります
・満月様顔貌(ムーンフェイス):顔に脂肪がついて丸くなることがあります
・精神症状:イライラしたり、不眠になることがあります

その他、白内障、緑内障、生理不順などの副作用が現れることがあります。

【参考情報】『ステロイド剤はこわい?』全日本民医連
https://www.min-iren.gr.jp/?p=26742

2.なぜ吸入ステロイド薬は安全なのか


ステロイド薬は効果が高いものの副作用も強いため、慎重に扱うべき薬ではあります。

しかし、喘息の治療に用いる吸入ステロイド薬で強い副作用が現れることは、まずありません。その理由を説明します。

2−1.吸入ステロイド薬が安全な理由


ステロイド薬を注射や内服で服用すると、血液に運ばれて全身に作用します。そのため、症状のない部位にまで影響が出て、強い副作用が現れます。

しかし、吸入薬は使用した部位にのみ作用し、それ以外の部位にはほとんど吸収されません。また、注射や内服に比べると使用量もごくわずかです。

喘息の治療に用いる吸入ステロイド薬は、気道に直接作用するように作られています。また、1回の使用量は注射や内服薬の約100分の1に設定されています。

そのため、長期間使用しても、副作用は非常に少ないのです。

◆「喘息吸入薬の種類について。市販薬はあるの?」>>
◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

2−2.吸入ステロイド薬の副作用と予防法


吸入ステロイド薬の副作用はわずかではありますが、以下のような症状が現れることがあります。

・声がかすれる
・のどに違和感が残る
・舌や口の粘膜に白いものが付く(口腔カンジダ症)

これらの副作用は、口の中に薬が残っていることが原因で起こります。副作用を防ぐには、吸入後にしっかりうがいをして、薬を水で洗い流しましょう。

うがいが難しい場合は、口の中をブクブクとすすいでみましょう。

うがいをしても、患者さんによっては声がれなどが生じることがあります。その場合は、薬の種類を変更するなど、対処できることもありますので、気になる症状があれば担当医に相談しましょう。

子どもの場合、吸入ステロイド薬の使用量が多いと身長が伸びにくくなるという報告もあります。しかし、その差は吸入ステロイド薬を使わない子どもに比べて1cmほどで、極端な低身長になるわけではありません。

【参考情報】『Inhaled corticosteroids in children with persistent asthma: effects on growth』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25030198/

3.吸入ステロイド薬を毎日使う理由


喘息の薬には、毎日続けて使用する薬と、発作が起こった時にだけ使う薬があります。吸入ステロイド薬は、毎日続けて使う必要があります。

3−1.吸入ステロイド薬の役割とは


吸入ステロイド薬は、喘息の原因である気道の炎症を抑えるために使用します。

喘息の患者さんは、発作がない時でも気道の炎症が続いています。炎症を起こした気道は、ちょっとした刺激にも過敏に反応し、その結果、激しい咳が出たり呼吸が苦しくなります。

この状態を放っておくと、気道はさらに過敏になり喘息が悪化します。すると、ますます呼吸が苦しくなり、最悪の場合、発作による呼吸困難で死に至ることもあります。

吸入ステロイド薬を止めると、薬の力で抑えていた気道の炎症がぶり返し、せっかく落ち着いてきた症状がまた現れ、以前よりひどくなることもあります。

吸入ステロイド薬1回の使用による効果が持続するのは約12~24時間とされています。毎日薬を服用するのは面倒かもしれませんが、気道の炎症を抑えるためにはどうしても必要なことなので、自己判断で止めることは絶対にしないでください。

◆「喘息治療のカギとなる「気道の炎症」を抑えるには?」>>

4.おわりに

吸入ステロイド薬は、「気道に直接作用する」「1回の使用量がとても少ない」という2つの理由で、毎日使用しても安全な薬として認められています。

吸入後にうがいをして声がれなどの副作用を防ぎ、毎日の使用で気道の炎症をコントロールしてください。

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