寝ている間にむせるのはなぜ?むせの原因や睡眠時無呼吸症候群との関係
夜中にむせて目が覚めたり、激しく咳き込んでしまい、熟睡できなかった経験はありませんか。
原因はいくつか考えられますが、むせとともに呼吸が一時的に止まったり、毎晩のようにいびきをかいている場合には、睡眠時無呼吸症候群になっている可能性があります。
この記事では、睡眠中にむせてしまう原因や、睡眠時無呼吸症候群との関連について解説します。思い当たる方は、ぜひ読んでください。
目次
1.睡眠中にむせてしまう原因
「むせる」とは、食べ物や飲み物、唾液などが、食道ではなく気管に入ってしまい、その刺激で咳が出ることを言います。
以下、睡眠中にむせる原因について、子どもの場合と大人の場合に分けて説明します。
1−1.子どもの場合
子どもは、気管の入口にある喉頭が大人よりも小さくて高い位置にあります。さらに飲み込む力が弱いため、大人に比べるとむせやすいです。
子どもの気道が大人と同程度まで発達するのは、10歳を過ぎてからだと言われています。
風邪やアレルギー性鼻炎などの病気で鼻がつまっているときも、口呼吸になったり、鼻水が口の中に垂れ込むことが原因で、睡眠中にむせやすくなります。
また、寝ている間に一時的に無呼吸になることを繰り返す睡眠時無呼吸症候群も、睡眠中にむせる原因となる病気です。
睡眠時無呼吸症候群は、大人の病気というイメージがあるかもしれませんが、小学生を対象にした疫学調査によれば、小学生の睡眠時無呼吸の有病率は8.4%にものぼるという結果が出ています。
【参考情報】『小児睡眠時無呼吸の疫学調査』第52回全国国保地域医療学会 特集号
https://www.kokushinkyo.or.jp/Portals/0/kenkyu-happyou/52/%E7%AC%AC52%E5%9B%9E_%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%99%BA%E8%A1%A8_001.pdf
1−2.大人の場合
大人も子どもと同様に、風邪やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻水・鼻づまりがある場合や、睡眠時無呼吸症候群がある場合は、睡眠中にむせることがあります。
また、加齢によってのど周囲の筋力や神経の働きが低下することも、睡眠中にむせやすくなる原因です。
私たちの体は、食物を飲み込むときに声門や喉頭蓋が気管の入口をふさいで、飲食物が気管に入らない仕組みになっています。
しかし、加齢によってのど周囲の筋肉が衰えると、飲み込むときに喉頭が十分に持ち上がらず、飲食物が食道へ流れにくくなります。
また、反射神経の衰えによって声門や喉頭蓋が気管をふさぐタイミングが遅れると、誤って飲食物が気管に入り込んでしまうことがあります。
高齢者は、このような嚥下機能の低下によって、食事中だけではなく睡眠中にもむせることがあります。
【参考情報】『誤嚥性肺炎』e-ヘルスネット| 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-011.html
2.睡眠時無呼吸症候群だとむせやすいのはなぜ?
睡眠時無呼吸症候群の人がむせやすいのは、就寝中の特徴的な呼吸と嚥下のパターンが関係していると考えられています。
2−1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。
「昼間に眠くなる」「熟睡できない」など睡眠の質が低下するだけではなく、寝ている間に低酸素状態が続くことで、心筋梗塞や高血圧などさまざまな合併症を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群は、肥満のある人、扁桃腺やアデノイドの肥大がある人、加齢によってのど周囲の筋力低下がある人などに起こりやすい傾向があります。
また、アルコールやタバコ、睡眠薬の使用など、生活習慣によっても悪化することがあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療には、原因となっている生活習慣の改善のほか、CPAP(シーパップ)と呼ばれる器具やマウスピースを用いる方法があります。
2−2.睡眠時無呼吸症候群でむせやすくなる理由
健康な大人は、寝ている間に唾液などを飲み込んでも、むせることはめったにありません。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の人は、一時的に止まっていた呼吸を再開して息を吸うとき、口の中に溜まった唾液や分泌物を飲み込むタイミングで誤嚥が生じやすくなり、むせるようになります。
また、睡眠時無呼吸症候群の人は、空気の通り道である気道が狭くなっています。そのため、睡眠中の呼吸が苦しくなることも、むせやすくなる原因でしょう。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群の睡眠中の嚥下機能』口腔・咽頭科24巻1号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stomatopharyngology/24/1/24_1_7/_pdf
2−3.睡眠中のむせが健康に及ぼす影響
睡眠時無呼吸症候群の人は、就寝中に呼吸が止まったり浅くなったりしますが、無呼吸や低呼吸の間は嚥下運動が止まってしまいます。
嚥下運動が起こらない間は、気道が清浄化されないため、口の中に細菌が溜まりやすくなります。
そして、細菌で汚染された唾液や分泌物を誤嚥すると、むせるだけではなく誤嚥性肺炎を起こす原因にもなります。
睡眠中のむせがみられる場合には、誤嚥による体への影響を抑えるためにも、早めに治療を受けることをおすすめします。
【参考情報】『睡眠中の嚥下と呼吸』音声言語医学52巻2号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjlp/52/2/52_2_132/_pdf/-char/ja
3.おわりに
睡眠時無呼吸症候群の患者さんがCPAP療法を行うと、睡眠中の誤嚥を予防する効果が期待できます。
【参考情報】『Obstructive sleep apnoea: a cause of chronic cough』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1920530/#:~:text=CPAP%20is%20a%20very%20effective,cough%20and%20obstructive%20sleep%20apnoea
睡眠中のむせにくわえて、無呼吸やいびきなどの症状がある人は、一度呼吸器内科で相談してみましょう。