アレルギー体質を改善したい人は「善玉菌」を増やそう
今や日本人の30%以上が、何らかのアレルギー性疾患を抱えていると言われています。
しかし50年前の日本では、アレルギーに悩む人はほとんどいなかったのです。それはなぜでしょうか。
1.アレルギーが「文明病」と呼ばれる理由
アレルギーとは、病気を防いで健康を守る「免疫」のシステムが、何らかの原因によって逆に体を傷つけてしまう反応です。
アレルギーが起こる原因としては、環境の変化やストレスのほか、現代人の食生活にも大きな問題があると指摘されています。
昔の日本では、野菜や海藻などの食物繊維、味噌などの発酵食品をたっぷり使った和食が普通でした。このような伝統的な和食には、善玉菌とよばれる細菌のエサとなる食材が豊富なので、自然と免疫のはたらきが保たれていました。
しかし、文明が発達するにつれ、ファストフードやコンビニ食品、出来合いのお惣菜が食卓に上ることも多くなりました。
これらの食品には化学調味料や食品添加物、保存料、着色料などの化学物質や、悪玉コレステロールを増加させるトランス脂肪酸やリノール酸が多く含まれています。さらに油分、糖分、塩分も多く、体にいい食べ物とはいえません。
また、インスタント食品やファストフードは似たようなメニューが多いため、そればかりを食べていると、どうしても食生活が単調になりがちです。
同じメニューばかり食べていると、腸内に棲みついているおよそ1000種類の細菌のうち、特定の細菌にだけエサが与えられることになるため、腸内環境のバランスが崩れやすくなるのです。
腸内環境のバランスが崩れると、肥満や生活習慣病、アレルギー性疾患などにつながる恐れがあります。
【参考情報】『腸内細菌叢の乱れがアレルギー疾患の原因か』関西医科大学
https://www.kmu.ac.jp/news/laaes7000000g08n-att/202100405PressRelease.pdf
腸内に棲む善玉菌は、歳を取ると自然と減っていきますが、若い人でも偏った食生活を続けていれば善玉菌が減り、高齢者と同じような腸内環境になることがあります。
2.やっかいな「アレルギーマーチ」とは
例えば、乳幼児期に食物アレルギーを発症した人が、小学校に入学する頃に改善されたとしても、今度はダニやハウスダストに反応して小児喘息になるなど、次々と異なるかたちでアレルギー性疾患が現れることはよくあります。
このように、形を変えてアレルギーが続く現象を「アレルギーマーチ」と呼びます。
アレルギーを起こしやすい人は、根本から体質を改善しない限り、抵抗力の弱った場所に次々とアレルギーの症状が起こり、長い間悩まされる恐れがあります。
アレルギーの発症には、腸内環境が深くかかわっていいます。体質を改善するためには、腸内に住む「善玉菌」を増やし、腸内環境を整える必要があります。
善玉菌を増やすためには、オリゴ糖や食物繊維、発酵食品を豊富に含む食材を積極的に摂るのがおすすめです。
伝統的な和食を基本に、時間がない方はチーズやバナナ、アボカドなど手軽に食べられる食材を取り入れるのも良いでしょう。
3.乳酸菌生産物質とは
善玉菌を増やすには、乳酸菌のような善玉菌を含む食材を摂ることと、善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を含む食材を摂ることが大切ですが、最近、乳酸菌が発酵する過程でできる「乳酸菌生産物質」にも注目が集まっています。
私たちが食べた物は、胃で消化されたのちに腸に運ばれ、乳酸菌をはじめとした善玉菌のはたらきによってオリゴ糖が生み出されます。すると、そのオリゴ糖をエサにして、善玉菌が増殖します。
【参考情報】『腸内細菌と健康』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
増殖した善玉菌は、酵素、核酸、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなど、からだの健康維持に必要不可欠な有効成分を生み出します。乳酸菌生産物質とは、この乳酸菌から生まれる有効成分を、大豆由来の成分などを用いて培養・発酵させたものです。
乳酸菌生産物質は、サプリやエキスとして販売されています。選ぶ際は、味や飲みやすさ、価格だけではなく、糖分や添加物などもチェックして、信頼できる製品かどうか確認しましょう。
4.乳酸菌と乳酸菌生産物質との違い
“乳酸菌”という言葉が入っているので、乳酸菌と乳酸菌生産物質は同じようなものだと思われるかもしれませんが、この2つはまったく違う性質を持っています。
乳酸菌は「生きている」ため、食べると胃や腸の消化液の影響でほとんど死んでしまいます。一方、乳酸菌生産物質は生き物ではなく物質なので、胃や腸の消化液の影響を受ける心配がありません。そのため、腸に直接届いて腸内環境にはたらきかけ、善玉菌を増やすことができるという利点があります。
また、ヨーグルトに入っている乳酸菌の種類は製品によってさまざまですが、その特定の乳酸菌が、自分の腸内環境と相性が良いとは限りません。相性が合わない場合、その乳酸菌は腸内に棲みつくことができず、便と一緒に排出されてしまいます。
その点、乳酸菌生産物質はどんな腸内環境でも変わりなく、もともと自分の腸内に棲んでいる乳酸菌を増やすことができます。
5.おわりに
善玉菌が増えて腸内環境が改善すると、以下のような作用があることが、臨床試験によって証明されています。
・アレルギー疾患の抑制
・ストレスの緩和
・肥満解消
・疲労回復
・血圧の正常化
・抗酸化作用
・歯周病抑制
・糖尿病の合併症予防
・発がん抑制
【参考情報】『The Impact of the Gut Microbiota on Human Health: An Integrative View』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5050011/
アレルギーは免疫機能の異常によって起こるので、腸内環境が整って免疫力がアップすれば、症状が抑えられる可能性があるわけです。
腸内環境はすぐに改善できるものではありませんが、善玉菌が喜ぶ食材や物質を摂り続けることで、理想のバランスに近づいていきます。
まずは「ランチにサラダをプラスする」など、すぐにできることから始め、体質改善を目指しましょう。