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アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年10月18日

アレルギーと腸には、実は密接な関係があります。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎に悩む人は、腸内環境を整える食事や生活習慣を知っておくことが大切です。

1.免疫細胞の70%は腸に集中している


私たちの体には、細菌やウイルスのような異物から身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。

しかし食べ物や花粉など、もともとは体には害のないものが、免疫のシステムによって異物=敵とみなされると、敵を追い出そうとする仕組みがはたらいて、くしゃみやかゆみなどの症状が起こるのです。

このように、体を守るための免疫が、逆に体を傷つけてしまう反応を「アレルギー」といいます。

◆「アレルギーの原因・種類・検査・治療の基本情報」>>

喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患の発症には、腸内環境が深くかかわっていることが指摘されています。

例えば、腸内細菌の働きによって産み出される短鎖脂肪酸という物質が、アレルギー反応を軽減するなどの研究結果が報告されています。

【参考情報】『短鎖脂肪酸がアレルギーを抑制する作用機構を解明~アレルギーに対する食物繊維の有効性を分子レベルで実証~』東京理科大学
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240201_2581.html

免疫細胞の50%は小腸に、20%は大腸に集中しています。小腸の表面には、病原菌などの外敵から身を守るリンパ節に命令を出すセンサーがたくさんついています。そして、大腸には100兆もの腸内細菌が棲みつき、それらの細菌のバランスによって、免疫力が左右されています。

つまり、病気やアレルギーから体を守るためには、腸内環境を整え、腸を元気に保つことが重要なのです。

22.アレルギー体質を改善する食事・3つのポイント


アレルギー体質を改善したい人の食事は、善玉菌を増やす食材を積極的に摂り、主食などの糖質を減らすことがポイントとなります。

2-1.善玉菌を増やす食材

腸内環境のバランスを整えるには、乳酸菌のような善玉菌を含む食材を摂ること、そして善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を含む食材を摂ることが大切です。

昔ながらの和食には、善玉菌を増やす食物繊維や発酵食品が豊富に含まれています。しかし現代は、食生活の欧米化やファストフードの普及により、毎日の食事で善玉菌を増やす機会が減っています。

その結果、昔に比べて免疫力が弱くなり、アレルギーに悩む人が増えてきたのだと考えられています。

2-2.糖質中心の食生活を見直す

アレルギーの症状に悩んでいる人は、悪玉菌のエサとなる「糖質」が好きな傾向があります。

糖質はお菓子だけではなく、ご飯やパン、麺類などの炭水化物にも多く含まれているので、毎日の食事で主食類を摂り過ぎていないかどうかチェックしてみましょう。

糖質を摂り過ぎていると、血糖値の変動が激しくなります。そこで、血糖値を安定させるために、コルチゾールという副腎皮質ホルモンが分泌されます。

コルチゾールは、アレルギーの治療に使われるステロイドと同じはたらきをするホルモンです。

【参考情報】『Cortisol』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22187-cortisol

そのコルチゾールが血糖値を安定させるために使われてしまうと、アレルギーを抑えるはたらきができなくなるため、アレルギーの症状が悪化してしまうのです。

◆「糖質がアレルギー疾患に与える影響とは?」>>

丼物やラーメンなど、手ごろな値段ですぐに食べられる食事は、たいてい糖質中心のメニューです。糖質も体に必要な栄養素ではありますが、このようなメニューばかり食べていると、血糖値の変動が激しくなるだけではなく、食物繊維やタンパク質が不足して、腸内環境が悪化します。

食物繊維は善玉菌のエサになりますし、タンパク質は免疫システムを働かせるために最も重要な栄養素です。腸内環境を整えるには「低糖質・高タンパク」の食事を心がけ、おやつもナッツやチーズなど、糖質が少ないものを選びましょう。

糖質を減らした食事に変えると、人によっては便が出にくくしまうことがあります。その場合は、キノコや海藻類など食物繊維が豊富な食材を増やし、水分をしっかり摂ってください。

◆「キノコが健康にいい理由」について>>

2-3.食べる順番を変える

血糖値の急激な変動を避けるには、1日に摂取する糖質の量を減らすほか、食事の順番にもコツがあります。

食事の際は、最初にサラダや野菜スープのような、食物繊維がたっぷり含まれたメニューを摂ります。その後に、肉や魚などタンパク質がメインのメニュー、そして最後に、ごはんやパンなどの主食を食べます。すると、糖の吸収がゆるやかになるので、血糖値の上昇もゆるやかになります。

3.「腸もれ」を引き起こす食べ物に注意


「腸もれ」(リーキーガット症候群)とは、腸の粘膜の細胞間がゆるんで小さなすき間があき、そこから細菌や毒素、未消化のタンパク質がもれ出している状態です。

腸からタンパク質がもれると、免疫の仕組みがそのタンパク質を「異物」と判断して攻撃を仕掛けるので、喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎などアレルギー性疾患が発症しやすくなります。

腸もれは、腸内環境が悪化して腸の粘膜が傷つけられること、そして、小麦や乳製品等によって引き起こされる「遅延型アレルギー」で、腸の機能が損なわれることによって引き起こされると考えられています。

食物アレルギーには、原因となる食べ物を口にしてすぐに症状が現れる「即時型アレルギー」と、しばらくたってから症状が現れる「遅延型アレルギー」の2種類があります。

特に、小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質が原因の「グルテン不耐症」と、乳製品に含まれる「カゼイン」というタンパク質が原因の「カゼイン不耐症」が、代表的な遅延型アレルギーです。

遅延型アレルギーは気づきにくいため、知らずに原因となる食べ物を摂取しては、何度も下痢や腹痛を繰り返している人も多いのではないでしょうか。

疑わしい場合は、小麦や乳製品を抜いた食事を2週間ほど続けて様子をみましょう。それで不調が改善したなら、今まで遅延型アレルギーによって腸もれが起こっていた可能性が高いでしょう。

4.おわりに

腸内環境が整うと、腸のはたらきがよくなって免疫力が上がります。その結果、アレルギーの症状が和らいでいきます。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎に悩む人は、ぜひ食生活を見直し、腸が元気になる食材を取り入れてみてください。

腸の動きをコントロールしている自律神経のバランスを整える運動もおすすめです。

自律神経のバランスを整えるには、きついトレーニングよりも軽めの運動が適しているので、ウォーキングやラジオ体操、ストレッチ、ヨガなどで全身を動かしましょう。また、駅ではエスカレーターを使わず階段を使うなど、日常生活の中でもこまめに体を動かすことを意識してください。

◆当院の栄養カウンセリングについて>>

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