喘息に多い「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音・喘鳴(ぜんめい)とは?
呼吸をするときに、何らかの原因で「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がすることがあります。この音を、喘鳴(ぜんめい)といいます。
「風邪をひくたびにゼーゼーが止まらない」「コロナにかかった後、しつこく喘鳴が続いている」など、呼吸器の感染症によって喘鳴が引き起こされ、悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、喘鳴の原因を解説し、喘鳴が出る病気とその症状や検査、治療について紹介します。
目次
1.なぜ喘鳴が出るのか
喘鳴は、空気の通り道である気道が炎症を起こし、狭くなった時に出ます。
子どもは大人より気道や気管支が細く柔らかいため、風邪をはじめとした呼吸器感染症にかかると、喘鳴のような呼吸音が出ることがあります。このような場合は、原因となっている病気が治れば呼吸音も出なくなります。
しかし、気道に慢性的な炎症が起こっている場合は、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」が、なかなか治まりません。
喘鳴は、季節の変わり目や夜間に起こりやすく、息苦しさで眠れなくなることもあります。また、気圧の変化の影響で、大雨や台風が接近すると出る人もいます。運動や喫煙、飲酒で誘発されることもあります。
2.喘鳴は、どんな病気の時に起こるのか
喘鳴が起こる病気には、喉頭炎や肺がん、心不全などがありますが、もっとも多いのは喘息です。
また、喘鳴が聞こえるタイミングが息を吸う時か、息を吐く時か、病気によって異なります。息を吸う時に聞こえる場合は鼻や喉に、息を吐く時に聞こえる場合は気管支や肺に原因がある傾向があります。
2−1.喘息
喘息とは、気道に慢性的な炎症が起きて狭くなり、呼吸がしにくくなる病気です。
喘息で喘鳴が聞こえるのは、主に息を吐く時です。
炎症を起こしている気道は、冷たい空気など少しの刺激にも敏感に反応して、激しい咳や息苦しさなどの症状が現れます。
すると、ますます気道が狭くなり、症状が悪化していきます。この流れを「気道のリモデリング」といいます。
【参考情報】『Airway Remodeling in Asthma』Frontiers
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2020.00191/full
喘息が悪化すると、激しい咳や呼吸困難を伴う発作が起こり、最悪の場合、息ができずに命を落とすこともあります。
喘息の原因は、アレルギーによるものと、アレルギー以外によるものがあります。
アレルギー性喘息は、ダニやペットの毛、カビといったアレルゲンが原因です。小児喘息は、アレルギー性であることがほとんどです。
非アレルギー性喘息は成人に多く、過労やストレス、風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症が引き金となって発症します。
40~60歳で初めて発症するケースが60%以上と、職場で責任ある仕事を任されている世代に多いのが特徴です。
【参考情報】『成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07-0001.pdf
2−2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれてきた病気の総称で、タバコの煙などの有害物質を長年吸い続けることで肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気です。
COPDが進行すると、喘鳴が出ることがあります。COPDでの喘鳴も主に息を吐く時に聞こえます。
さらに、呼吸困難で寝たきりになったり、肺炎や肺がんのリスクが高まっていく恐ろしい病気です。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
3.喘鳴は何科を受診したらいいのか
喘鳴は、喘息やCOPDなど、呼吸器の病気で出ることが多いので、まずは呼吸器内科を受診するのが良いでしょう。
呼吸器内科とは、喉や肺、気道などの呼吸器を専門に診る診療科です。
通常、医師は聴診器で呼吸音を聞いて喘鳴に気づきますが、大きな喘鳴の場合、聴診器なしでも聞き取れることがあります。
喘鳴のほか、咳や痰、息切れ、息苦しさなど呼吸器の症状が目立つ場合も、呼吸器内科を受診してみましょう。
◆「呼吸器内科とはどんなところ?何をするのかを解説します」>>
4.呼吸器内科ではどのような検査をするのか
喘息が疑われる場合は、必要に応じて以下の検査を行います。
・呼吸機能検査
・胸部レントゲン検査
・血液検査
呼吸機能検査では、気道が狭くなっているかどうかを判断するモストグラフや、肺の機能を調べるスパイロメトリー、吐いた息に含まれるNO(一酸化窒素)の濃度を測定する呼気NO検査などを行います。
検査によって、喘息の有無や症状の重さがわかります。検査結果を専門医が判断し、今後の治療方法についてご提案します。
5.喘息だとどのような治療をするのか
喘息の治療には、気道の炎症をコントロールして発作を防ぐ薬(コントローラー)と、発作が起きた時に鎮めるための薬(リリーバー)を用います。
薬物治療と同時に、生活環境を見直したり、喘息日記をつけて、発作が起こらないように体調を管理していきます。
残念ながら、現代の医学では喘息の完治は難しいです。しかし、薬によって症状が安定すれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
6.喘鳴の対処法
既に喘息と診断されている方は、喘鳴が出て息が苦しくなったら、かかりつけ医から処方された気管支拡張薬を服用してください。
喘息と診断されていない方は、水分を補給して腹式呼吸をしてみてください。痰が出て呼吸がラクになることがあります。
7.おわりに
喘鳴がある場合に、まず考えられる病気は喘息です。
喘息には「子どもの病気」というイメージがあるかもしれませんが、肥満やストレスなどをきっかけに、成人になってから初めて発症するケースも少なくありません。
喘息の場合、風邪薬や咳止め薬などの市販薬を服用すると、かえって症状が悪化することがあるので、呼吸器内科を受診して、自分に合った薬を処方してもらいましょう。