喘息の方におすすめのスポーツと、運動時の発作を予防する対処法
喘息の人は運動ができない・・・と思っていませんか?
実は、スポーツの種類や環境を選べば、喘息だからといって運動を控える必要はありません。むしろ、適度に体を動かすことで、体力がついて発作が起きにくくなります。
この記事では、喘息の方におすすめのスポーツや、発作を起こさないための工夫をお伝えしていきます。ぜひ参考にして、自分に合った運動を見つけてください。
目次
1.喘息の人がスポーツの際に気をつけたいこと
喘息患者さんの気道は、アレルギー物質(ダニ・ホコリ・花粉など)や気候の変化など、さまざまな刺激に対して過敏に反応します。
運動をする際は、これらの刺激を遠ざけ、発作が起きないように対策をすることが重要となります。
運動による激しい呼吸で、一時的に発作が引き起こされる「運動誘発喘息」には注意が必要です。
【参考情報】『運動誘発喘息とは何ですか?』山梨大学アレルギーセンター
https://yallergy.yamanashi.ac.jp/ynavi/a_id-288
運動誘発喘息とは、アスリート喘息とも呼ばれ、運動に伴って誘発される喘息発作のことを指します。運動開始数分後から運動終了後に、咳やゼーゼーする息切れや呼吸困難を起こします。
運動誘発喘息が起こりやすい条件は以下の通りです。
・激しい運動や長時間の運動をしたとき
・普段から喘息のコントロールがうまくいっていないとき
・気道が過敏で少しの刺激でも発作が誘発されるとき
・空気が冷たく乾燥しているとき
ほとんどの場合、5分程度でピークを迎えて徐々に治まっていきます。
運動誘発喘息が出た場合は、処方されている発作止めを吸入し、水分を取って楽な姿勢で休みましょう。また、事前に発作止めを吸入することで予防ができます。
適度な運動は、心肺機能を高め、喘息の症状の改善や発作の予防につながります。さらに、太りにくくなるため、生活習慣病の予防や健康維持にもつながります。
まずは発作を引き起こしにくいスポーツを選択し、無理のない範囲で運動を始めてみましょう。
2.喘息患者におすすめのスポーツ
喘息の人にとって不向きであると言われているのは、ジョギング、サッカー、バスケットボール、マラソンなど持久力が必要なスポーツです。
これらのスポーツは、全身を常に動かし続けるため、体への負担が大きくなります。
しかし、持久力が必要なスポーツでも「水泳」だけは、喘息患者さんにもおすすめできます。
水泳は、水の中で行う運動なので湿度が十分に保たれ、気道の水分が失われにくいのが、その理由です。
特に、室内にある温水プールなら、水温が保たれているので冷気による刺激もなく、1年中楽しむことができます。
【参考情報】『喘息をもつメタボリックシンドロームの方への運動療法』労働者健康福祉機構(現・労働者健康安全機構)
https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/oshirase/pdf/reef6zensokumetabo.pdf
外で行う運動は、ホコリが舞ったり、急に気温が下がるなど、喘息発作の引き金となる要因が現れることもあります。しかし、室内のプールなら、そのリスクは激減します。
水泳以外には、野球、バレーボール、ゴルフ、体操、ヨガなど、合間に休憩をとりながら行えるスポーツもいいでしょう。
休憩が入ることで呼吸を整えることができ、肺への負担が抑えられます。
【参考情報】『Clinical Effects of Yoga on Asthmatic Patients: A Preliminary Clinical Trial』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3275836/
3.発作を起こさないための対処法
喘息の人には向いていないと言われるスポーツでも、プロとして活躍している選手もいます。
【参考情報】『ぜん息児へのエール プロサッカー選手/大津祐樹選手』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/44/yale/index.html
やってみたいスポーツがある人は、喘息だからといってあきらめず、まずは医師に相談してみましょう。そして、症状をコントロールする方法や運動時の注意点などを確認してください。
そのうえで、以下の内容を参考にして、発作を予防してください。
3−1.環境を整える
喘息発作を起こさないためには、「寒い」と感じる気温や、「空気が乾燥している」中での運動は避けた方がよいでしょう。
また、花粉が飛散している時期や、風が強くて土埃が舞うような時は、外での運動は控えた方が安心です。
寒い時期に外で運動を行う場合は、マスクを着用すると、気道が乾きにくくなります。しかし、激しい運動の際は、マスクをつけたままだと呼吸が苦しくなるので、外気温に慣れたらマスクを外してみましょう。
室内での運動なら、外気の影響が少なく、湿度も管理しやすいのですが、それでも最初から激しい運動はせず、まずはウォーミングアップから始めましょう。
3−2.ウォーミングアップを行う
いきなり激しい運動を行うと、呼吸の回数が多くなり早くなることで気道が乾燥し、水分や熱が奪われることがあります。
運動を始める際は、まずは深呼吸をして、5〜10分のウォーミングアップを行いましょう。
例えば、ジョギングをするなら、最初はウォーキングから始めます。そして、体が慣れてきたらジョギングにしてペースを上げていきます。
ヨガや体操をするなら、手足のマッサージやストレッチから始め、その後、全身を動かしていきます。
時間をかけて体を運動に慣らしていくことで、運動誘発喘息が次第に起きにくくなるといわれています。また、発作が起きにくくなれば、徐々に運動量を増やしていくこともできます。
【参考情報】『小児の運動誘発性発作~喘息ガイドライン作成に関する研究 簡易版抄録』Mindsガイドラインライブラリ|日本医療機能評価機構
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0003/G0000003/0065
3−3.継続的に運動を行う
運動を続けることで、肺にたくさんの酸素を取り込むことができ、心肺能力が上がります。また、基礎体力もついてくるので、少し強めの運動にも耐えられるようになります。
体力や心肺能力が向上すると、同じ運動量でも以前より息苦しさが改善し、発作が起きにくい体になります。日々の運動の積み重ねで、ぜひ呼吸機能を高めていきましょう。
3−4.呼吸訓練をする
発作で息が苦しい時のために、普段から腹式呼吸を身につけておくと効果的でしょう。意識的に横隔膜を使った腹式呼吸ができるよう訓練しておくことで、運動誘発喘息や小さな発作などであれば、症状が落ち着く場合もあります。
・腹式呼吸のやり方
背筋を伸ばし(椅子に座った状態でも構いません)、鼻からゆっくりと息を吸い込みます。このとき、おへその下に空気を溜めていくイメージでお腹をふくらませていきます。
つぎに、口からゆっくりと息を吐き出します。このとき、しっかりと息を出し切ることがポイントです。吸うときの倍くらいの時間をかけて吐いていきます。
これを1日10回~20回程、行いましょう。ただし、無理はしないようにしてください。
4.運動中に発作が起きたら
十分に予防していても、運動中に呼吸が苦しくなったり、発作が起こってしまうこともありえます。
そんな時はすぐに運動を中止して、休憩しながら水分補給を行いましょう。気管支拡張薬があれば服用してください。
もし、運動誘発喘息が心配なら、運動前に気管支拡張薬やロイコトリエン受容体拮抗薬を服用して予防することもできるので、主治医と相談しましょう。
運動誘発喘息を起こさないためには、運動の前にだけ薬を服用するのではなく、普段から症状をコントロールしておくことが基本となります。
医師から処方されたコントローラー(長期管理薬)を毎日服用し、気道の状態を改善しておくことも忘れないでください。
5.おわりに
喘息だからといってスポーツを控えるのではなく、病気とうまく付き合いながら体を動かし、体力をつけていきましょう。体を動かすと、ストレスも解消できるので気持ちがスッキリします。
発作を起こしにくい運動以外でも、好きなスポーツがある人は、医師と相談しながら上手に症状をコントロールして、存分に楽しみましょう。