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喘息治療薬「パルミコート」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)

パルミコートは喘息の治療に用いる薬です。「タービュヘイラー」とよばれるデバイス(吸入用器具)を使って吸入するタイプと、ネブライザーという器具を使って服用する吸入液があります。

この記事では、パルミコートの使い方や効果、副作用について解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ最後までお読みください。

1.パルミコートとはどのような薬か

パルミコートは、吸入ステロイド薬である「ブデソニド」を主成分とする喘息の治療薬です。

【参考情報】『Budesonide』MedlinePlus.gov
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a608007.html

喘息の治療薬には、毎日服用することで発作を予防する「コントローラー(長期管理薬)」と、発作が起こった時に鎮めるための「リリーバー(発作治療薬)」があります。

パルミコートは、コントローラーにあたる薬です。コントローラーは、吸入してすぐに効果は現れませんが、使い続けることで気道の炎症を抑え、呼吸をラクにします。

パルミコートとよく似た容器を用いた薬剤として、「シムビコート」があります。

シムビコートは、コントローラーとしてもリリーバーとしても使用できる薬ですが、パルミコートはリリーバーとしては使えないので、発作時に誤って吸入しないよう注意してください。

◆「シムビコート」について詳しく>>

2.パルミコートの使い方

以下、タービュヘイラーと吸入液にわけて、使用方法を説明します。

2-1.タービュヘイラー

通常、成人は1回100〜400μgを、1日2回吸入します。

小児は1回100〜200μgを、1日2回吸入します。


①キャップを外す

②右に回す

③カチッと音がするまで左に戻す
カチッと音がしたら、1回分の薬が準備できた合図です。
※②〜③の動作は「クルッ」「カチッ」と覚えておくと良いです。

④息を吐き出す
姿勢を正し、無理のない程度で、しっかり息を吐き切ります。

⑤薬剤を吸い込む
マウスピース(吸入口)を深くくわえて口をすぼめ、「強く」「早く」「一気に」スーッと息を吸い込んでください。

⑥息を止める
薬剤を吸い込んだら、マウスピースから口を離して3~5秒ほど息を止め、その後ゆっくりと息を吐いて呼吸を再開します。

⑦キャップをしめる

⑧うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。

【空打ちに関して】
未使用の吸入器を初めて使用する場合のみ、茶色の回転グリップを左右に回し、カチッと2 回鳴らします。

【参考情報】『正しい吸入方法を身につけよう:タービュヘイラー』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/method02.html

2-2.吸入液


通常、成人は1アンプルを1日2回、または2アンプルを1日1回吸入します。

小児は0.25mgを1日2回、または1アンプルを1日1回吸入します。

吸入用のネブライザーは、「ジェット式」を使ってください。

◆「ネブライザー」の種類と使い方>>


①アルミ袋から吸入液の入ったアンプルを取り出し、1回分のアンプルを切り離す

②アンプルの上を持ち、円を描くようにゆっくりと振り混ぜる

③アンプルの上を持ち、ねじるようにして切り離す

④ネブライザーの薬液ボトルの中に吸入液を全部入れる

⑤薬液ボトルをネブライザーにセットする

⑥ネブライザーの電源スイッチを入れる

⑦マウスピースまたはフェイスマスクをつけ、ネブライザーから出てくる霧状の薬をゆっくりと吸入する

⑧薬が出なくなったら吸入終了

3.パルミコートの副作用

パルミコートの代表的な副作用は、口腔カンジダ症や声枯れ(嗄声:させい)です。

口腔カンジダ症は、カンジダ菌という真菌(しんきん:カビ)が繁殖し、舌や頬の内側などの粘膜に白い苔(コケ)のようなものが付着する病気です。口内の痛みや味覚異常などの症状もみられます。

【参考情報】『口腔カンジダ症』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_koku/#c05

これらの副作用は、吸入後のうがいによって予防できます。

その他の副作用として、咽喉への刺激感や味覚異常、咳、吐き気、神経過敏、情緒不安、気分の落ち込み、不自然な行動、不眠、皮下出血なども報告されています。 これらの症状が強い時は、医師に報告しましょう。

また、皮膚のかゆみ、発疹、蕁麻疹や、顔・舌・喉のはれ、息が苦しいなどの症状があらわれた場合は、使用をやめ、すぐに医師に相談してください。

4.使用上の注意点

パルミコートは、喘息の発作を抑える薬ではありません。発作が起こり、咳や息苦しさが強くなってきたときは、医師から処方された発作治療薬(リリーバー)を服用してください。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

パルミコートは、「ドライパウダー」という非常に細かいパウダー状の薬剤です。そのため、「吸入しても吸った感じがしない」という患者さんが多いです。

しかし、正しい方法で吸入していれば、しっかりと薬剤は服用できているので、吸入した感じがしないからといって、何度も吸入しないようにしましょう。

また、吸入器(タービュヘイラー)を振ると、「カサカサ」という音が聞こえますが、これは乾燥剤の音であって、薬剤の音ではありません。

乾燥剤の音を、薬がまだ残っていると勘違いして、残量ゼロなのに吸入し続けてしまったというケースも報告されているので、吸入器の小窓部分にある「残量表示」を確認してから薬剤を吸入するようにしてください。

吸入を忘れてしまった場合は、気づいたときに1回分を吸入してください。次の吸入時間が近い場合は、その時間に1回分を吸入してください。2回分をまとめて吸入しない、指示された1日の回数を守る必要があります。

妊婦又は妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性の方は、パルミコート使用の可否について主治医と相談して下さい。

妊娠中の方は、赤ちゃんのことを考え、薬を使わない方がいいのではと使用をためらう方もいますが、主治医の指導の元、適切に使えば問題になることはほとんどありません。

喘息が悪化し発作が起こることで低酸素状態になると、妊婦の命に関わることになりかねませんし、低酸素状態は赤ちゃんにもいい影響はありません。

主治医の指示に従い、自己判断で吸入薬の服用をやめたりせず、治療を継続しましょう。薬を服用してから、不安なこと、体調の変化等があれば必ず主治医に相談してください。

◆「喘息の女性が気になる妊娠中の不安や疑問に答えます」>>

【参考情報】
『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/

『パルミコート®タービュヘイラー®を使用される患者さんへ』アストラゼネカ
http://www2.astrazeneca.co.jp/yourhealth/pulmicort/pdf/safeuse.pdf

5.パルミコートの薬価


パルミコートの薬価(2024年8月調べ)は、以下となります。


 ・パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入11.2mg 996円

 ・パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入11.2mg 996円

 ・パルミコート200μgタービュヘイラー112吸入22.4mg 1244円


 ・パルミコート吸入液0.25mg            117.3円

 ・パルミコート吸入液0.5mg            160.1円


パルミコートの代わりとなるジェネリック医薬品には「ブデソニド」があります。

6.おわりに

パルミコートと同じような、喘息治療用の吸入ステロイド薬には、以下のようなものがあります。

 ・フルタイド

 ・オルベスコ

 ・アニュイティ

パルミコートを使っても症状が良くならない人や吸入が難しいと感じる人は、ほかの薬が使えるかどうか医師に相談してみましょう。

◆「呼吸器内科とはどんなところ?」について詳しく>>

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