睡眠時無呼吸症候群は減量で改善する?肥満との関係や減量方法を解説
肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群を発症した人は、症状を悪化させないためにも減量が必要です。
しかし、正しい方法で行わないと、結果が出なかったり、減量に挫折することもあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群と体重の関係や、減量の目安・方法・効果について説明していきます。
ダイエットに取り組んで、質の良い睡眠と健康を取り戻したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に空気の通り道である気道が狭くなることで、浅い呼吸や無呼吸が引き起こされる病気です。
あごの骨格や神経の異常で発症することもありますが、多くの患者さんは肥満が原因で発症しています。
寝ている間に何度も呼吸が中断されると、体に十分な酸素が運ばれず、全身に負担がかかります。特に、心臓や血管に負担がかかるので、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まるのが恐ろしい病気です。
肥満が原因で発症した場合、治療法は「CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法)」が第一の選択肢となります。
CPAPは、寝ている間に鼻から空気を送り込み、睡眠中の無呼吸を防ぐ医療機器です。効果が高い反面、毎晩装着するのが面倒だという声もあります。
2.減量で症状が改善する可能性
肥満の人は、気道の周囲にも脂肪がついているため、気道が脂肪で圧迫されて狭くなります。そのことが原因で、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなります。
以下、肥満と睡眠時無呼吸症候群の関係を見ていきましょう。
2−1.重症度の指標「AHI」とは?
睡眠時無呼吸症候群には、「AHI」という重症度をはかる指標があります。AHIは、睡眠1時間あたりの無呼吸および低呼吸の合計回数で、以下のように分類します。
・軽症 5~15
・中等症 15~30
・重症 30以上
治療と生活習慣の改善で、AHIが5以下になることを目指していきましょう。
2−2.体重とAHIの関係
アメリカの研究では、体重が10%増えるとAHIが32%増加し、10%減るとAHIが26% 減少すると報告されています。
【参考情報】『Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep AHEAD』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7874406/
肥満は生活習慣病など、多くの病気を引き起こしますが、睡眠時無呼吸症候群に関しても、体重の増加により症状が悪化することが認められます。
3.減量の目安
減量の目安として、まずは自分の適正体重(BMI=22)を確認しましょう。BMIが25以上だと肥満です。
【参考情報】『肥満と健康』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html
BMIは、肥満度を表す指標として国際的に使われているものです。日本ではBMI=22が標準体重であり、一番病気にかかりにくいとされています。
【参考情報】『BMIと適正体重』高精度計算サイト|カシオ計算機
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
4.減量の方法
減量の基本となる「食事療法」と「運動療法」について説明します。
4−1.食事療法
肥満の人は、肥満になりやすい食生活をしています。
・ご飯、パン、麺などの主食が多い
・ジャンクフードが多い
・早食い
・寝る前に食事をする
・甘い飲み物をよく飲んでいる
・お酒の量が多い
まずは、自分の食生活を見直し、当てはまる点があれば改善しましょう。
そのうえで、以下のことを意識してみましょう
・よく噛んでゆっくり食べる
・栄養バランスの良いメニューを選ぶ
・三食規則正しく食べる
できそうなことから試し、少しずつ健康な食生活へと改善していきましょう。
【参考情報】『ちょうどよいバランスの食生活』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wakaisedai/attach/pdf/balance-8.pdf
4−2.運動療法
食事療法だけでは効果が出にくいため、併せて運動療法も行いましょう。
運動は、頑張りすぎずに続けられる事が大切なので、まずは無理なく行える有酸素運動から始めてみましょう。
ウォーキングなら、20分程度をめどに開始し、徐々に距離を伸ばしていきましょう。一日にまとめてたくさん歩くより、短時間でも週に何度もこまめに歩く方が効果的です。
【参考情報】『エアロビクス / 有酸素性運動』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-072.html
慣れてきて、余裕が出てきたら、筋力トレーニングを追加するのもいいでしょう。
筋力トレーニングのような無酸素運動は、基礎代謝を高める効果があります。また、余分な脂肪を落とし、適度な筋力をつけると、痩せやすい体になっていきます。
肥満で足腰への負担が重い方は、水中ウォーキングがおすすめです。水の中では浮力が働くため、足腰に負担なく歩くことができます。
運動に苦手意識がある方や、やる気が起きない方は、ゲームソフトを利用して楽しみながら行うと習慣化しやすいので、ぜひ試してみてください。
【参考情報】『肥満症・メタボリックシンドロームの人を対象にした運動プログラム』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000656470.pdf
5.減量に成功すると治療はいらなくなるのか
減量で体重が減っても、自己判断で治療をやめることはせず、今後の治療については医師と相談してください。
AHIの値によっては、CPAPがいらなくなったり、マウスピースに変更できるかもしれません。
しかし、いったん適正な体重になっても、油断すると再び体重が増加して、また症状が現れることがあります。
減量後も体重をキープするため、食事療法と運動療法を続け、体重をコントロールしていきましょう。
加齢とともに基礎代謝は下がるので、若い頃に比べると減量が難しいと感じる方もいると思います。
当院では、管理栄養士による栄養カウンセリングも実施しています。体重のコントロールがうまくいかないときは、ぜひご活用ください。
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、正しい治療を続けていれば、多くの場合症状が激減していきます。
さらに肥満が解消されると、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善されるだけではなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防・改善にもつながります。
はじめは面倒に感じるかもしれませんが、正しい食事や運動の習慣が身に付くと、自然と生活習慣も変わって、それが普通になってきます。
ぜひ減量に取り組んで、病気のリスクを減らし、健康寿命をのばしていきましょう。