新型コロナウイルス感染症治療薬「パキロビッド」の特徴と効果、副作用
パキロビッドは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療に用いる飲み薬です。高齢者や持病のある方など、重症化リスクの高い人のうち、軽症から中等症の患者さんに処方されます。
この記事では、パキロビッドの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて飲む方や、服用に不安がある方は、ぜひ読んでください。
1.パキロビッドとはどのような薬か
パキロビッドは「二ルマトレビル」と「リトナビル」という2つの成分が配合された薬です。2種類の薬が、1つのパッケージに入っています。変異株への有効性も期待されている薬です。
2つの成分のうち、二ルマトレビルがウイルスが作られるのに必要な酵素の邪魔をし、ウイルスが増えるのを抑える、抗ウイルス効果を持つ薬です。リトナビルは、二ルマトレビルが体内で代謝・分解されるのを遅らせて、二ルマトレビルの効果を最大限に発揮できるようにする薬です。
【参考情報】『Paxlovid』NHS
https://www.nhs.uk/medicines/paxlovid/
2. パキロビッドの用法・用量
パキロビッドは「1日2回」「12時間ごとに」「5日間」、計10回内服する薬です。ただし、内服開始のタイミングによっては、日付をまたいで6日間となることもあります。
通常、パキロビッドは1回につき1パッケージ、つまり、二ルマトレビルを2錠、リトナビルを1錠、合計3錠を内服します。食事の時間に関わらず服用できるので、1日2回、12時間ごとになるように時間を決めて服用してください。
ただし、患者さんの状態や併用している薬によっては、二ルマトレビルを1錠、リトナビルを1錠、のように、1回の内服量を調節して使用することもあるので、主治医や薬剤師の指示に従って服用してください。
3. パキロビッドの副作用
副作用の少ない薬ではありますが、少数の人に、以下のような症状が現れることがあります。
・味覚障害
・下痢
・吐き気
・めまい
【参考情報】『パキロビッドパック 適正使用ガイド』ファイザー
https://www.covid19oralrx-hcp.jp/files/PAX51M001G_%E9%81%A9%E6%AD%A3%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89_230206.pdf
ただし、これらの症状はコロナに感染しても起こりうるので、薬の副作用なのかどうか見分けるのは難しいでしょう。
もし、このような症状が現れても、軽度であればそのまま少し様子を見てください。副作用を過剰に恐れる必要はありませんが、服用前と異なる症状が出たり、1、2日経っても症状が持続していたり、悪化するようなことがあれば、主治医に相談しましょう。
まれにですが、息苦しさや発疹、浮腫といった副作用が現れることがあります。そのような場合は、すぐに主治医に相談してください。
4.使用上の注意点
パキロビッドに含まれるリトナビルは、薬の代謝・分解を遅らせる薬です。そのため、併用する薬の効果に、大きな影響を与えることがあります。
使用中の薬がある人は、必ず主治医と薬剤師に伝えてください。一緒に飲むと、重大な副作用が現れる恐れのある薬がたくさんあります。
【参考情報】『「パキロビッド®パックとの併用に慎重になるべき薬剤リスト」の公開について 』国立国際医療研究センター
https://www.hosp.ncgm.go.jp/phar/140/20220210.pdf
服用の必須条件として、成人または12歳以上で体重が40㎏以上の小児であることです。12歳以上でも体重の条件がありますので、注意してください。
パキロビッドは、症状が現れてから「5日以内」に飲み始めないと、増えたウイルスを減らすほどの効果が期待できない薬です。処方されたら、その日からすぐに飲み始めるようにしてください。
同じコロナの治療薬であるゾコーバやラゲブリオは妊婦には使えませんが、パキロビッドは安全性が高いという報告があります。
【参考情報】『Analysis of Clinical Outcomes of Pregnant Patients Treated With Nirmatrelvir and Ritonavir for Acute SARS-CoV-2 Infection』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36445705/
妊婦または妊娠している可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することが可能となっています。不安や気になることがある場合は、主治医に相談し、その上で服用してください。
5.パキロビッドの薬価
パキロビッドの薬価(2024年8月調べ)は、以下となります。
・パキロビッド300:12538.6円/シート(5日分:62693.0円)
・パキロビッド600:19805.5円/シート(5日分:99027.5円)
2023年5月、新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「5類相当」に該当する新興感染症に分類されました。
基本的には、5類の感染症には自己負担が求められるのですが、政府の特例措置により、コロナ治療薬の代金には公費の支援がありました。
しかし、2024年3月で公費による支援は終了し、4月から医療費の窓口負担割合に応じ、パキロビッドが処方された場合、最大約30,000円の自己負担が生じることとなりました。
【参考情報】『令和6年4月からの治療薬の費用について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001219096.pdf
パキロビッドの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
6.おわりに
新型コロナウイルス感染症の治療薬には、パキロビッドのほかに、以下のようなものがあります。
・ゾコーバ
・ベクルリー
パキロビッドは、コロナの症状がそれ以上悪化しないよう「重症化を防ぐ」のが目的の薬です。
症状がよくなってきたからといって、途中で飲むのをやめてしまうと、本来の薬の効果が得られない可能性があるので、必ず5日間最後まで飲み切るようにしてください。