睡眠時無呼吸症候群の精密検査について
病院で「睡眠時無呼吸症候群の疑いがある」と判断されたら、診断に必要な検査を行うことがあります。
検査には、自宅でできる「簡易検査」と、医療機関で行う「精密検査」があります。この記事では、精密検査の方法と、結果の見方について説明します。
検査の前に手順を確認しておきたい人や、検査を不安に感じている人は、ぜひ読んでください。
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に気道が狭くなり、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。
放っておくと、睡眠不足による居眠り運転や、心筋梗塞など命にかかわる合併症を引き起こす恐れがあります。
【参考情報】『Sleep apnea』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/symptoms-causes/syc-20377631
2.簡易検査
病院の問診で、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると判断されたら、まずは簡易検査を行います。
簡易検査では「アプノモニター」という小型の機械を使用します。患者さんは、アプノモニターを自宅に持ち帰り、夜寝る前にご自身でセットします。
簡易検査の結果は、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数である「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という指標をもとに見ていきます。
AHIが5未満なら、睡眠時無呼吸症候群ではないと判断されます。40以上なら明らかに重症なので、すぐに治療を開始します。
3.精密検査
簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要だと判断された場合は、ポリソムノグラフィー(PSG)という精密検査を行います。
精密検査は、医療機関や検査施設に一泊して行うことが多いのですが、当院では入院せずに自宅で検査を受けることも可能です。
ポリソムノグラフィーでは、体にたくさんのセンサーをつけて一晩眠ることで、以下のような項目をチェックします。
・脳波
・眼球運動
・筋電図
・心電図
・血液中の酸素の量
・鼻や口の中の空気の流れ
・胸部や腹部の動き
・いびきの音
例えば、脳や眼球が活発に動いているなら、眠っている間も脳が休まらず、疲れがとれていないことがわかります。
胸部や腹部の動きを見れば、睡眠時無呼吸症候群のタイプが、気道が狭くなったことで起こる「閉塞性」なのか、脳や神経、心臓の病気が原因で起こる「中枢性」なのかが推測できます。
また、周期性四肢運動障害やナルコレプシーなど、ほかの睡眠障害があれば、そちらの診断にも役立ちます。
【参考情報】『睡眠障害』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-027.html
4.精密検査の流れ
以下、基本的な精密検査の流れを見ていきましょう。
①入院
夕方過ぎ、仕事帰りなどに病院へ行き、そのまま入院の手続きをします。
②診察
センサー装着前に、体の状態をチェックします。
③センサーを装着
30分から1時間くらいかけて、頭やあご、腹など全身にセンサーをつけます。
④就寝
眠ると、自動で記録が開始されます。寝ている間に検査が終わります。
眠れない場合は、睡眠薬が処方されることがあります。
⑤起床
センサーを外します。
⑥退院
退院後、そのまま職場に直行する方も多いです。
⑥検査結果を確認
1週間ほどしたら、病院を受診して、検査結果を確認します。
精密検査の費用は保険適用(3割負担)で3~4万円程度です。トラックやタクシーの運転手など、運転業務に就いている方は、会社が費用を負担してくれる場合もあります。
◆「睡眠時無呼吸症候群と運転業務の関係性」についてもっと詳しく>>
5.検査後の治療について
AHIが20以上なら、睡眠中の呼吸をサポートする医療機器・CPAP(シーパップ)による治療が保険適応となります。
CPAPのほか、マウスピースやASVなど、結果に応じて適切な治療を検討・開始します。
睡眠時無呼吸症候群と診断されたら、月1回程度通院し、治療の効果が出ているかどうかを確認します。
まじめに治療に取り組めば、ぐっすり眠ってスッキリ起きられるようになり、AHIの数値も下がってきます。
6.おわりに
精密検査は、眠っている間に終わり、痛みや苦痛はありません。会社勤めの方も、仕事帰りに入院して一泊し、翌朝退院して出勤できるので、仕事への影響は少なくて済みます。
精密検査で重症だと判断されても、治療で改善することは可能です。睡眠の質を上げ、病気による事故や合併症を防いで、健康な生活を取り戻しましょう。