喘息発作の治療に用いる気管支拡張薬「ベネトリン」の特徴と効果、副作用
ベネトリンは、喘息の発作が起こった時に使う治療薬です。気管支を速やかに広げ、呼吸をラクにする作用があります。
この記事では、ベネトリンの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問が出てきた方も、ぜひ最後までお読みください。
1.ベネトリンとはどのような薬か
ベネトリンは、短時間作用性β2刺激薬のサルブタモール硫酸塩が配合された薬です。炎症により狭くなった気管支を弛緩させ広げることで、息苦しさや咳を改善します
喘息のほか、気管支炎やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療にも用います。
気管支の平滑筋という筋肉には、β2受容体というタンパク質の仲間が存在しています。β2受容体は交感神経により刺激を受けると、気管支を広げます。
ベネトリンは体内の情報伝達調整役として働く細胞・アデニル酸シクラーゼを活性化させ、交感神経を活発にすることで、β2受容体を刺激します。
β2刺激薬には、長時間作用性のものと、短時間作用性のものがあります。
長時間の方は、毎日服用することで喘息の発作を予防する「コントローラー(長期管理薬)」として使用します。
短時間の方は、発作時に服用してすぐに症状を抑える「リリーバー(発作治療薬)」として使用します。
ベネトリンは、「リリーバー」にあたる薬です。
【参考情報】『Bronchodilator』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/17575-bronchodilator
2.ベネトリンの使い方
ベネトリンには、吸入液とシロップ(水薬)の2種類があります。以前は錠剤もありましたが、販売中止となりました。
吸入液は「ネブライザー」という医療機器を用い、薬剤を霧状にして吸入します。シロップはそのまま飲みます。
2ー1.吸入液の使い方
通常成人は、1回0.3〜0.5mL、小児は1回0.1〜0.3mLを吸入します。
ベネトリン0.3mLに対し、生理食塩水を2ml加え、ネブライザーを用いて深呼吸をしながら吸入します。
ベネトリンは、コントローラー(長期管理薬)であるインタールという薬剤を混ぜ、一緒に吸入することもできます。
ただし、自己判断で混ぜることなく、医師に確認してから行うようにしましょう。
2ー2.シロップの使い方
シロップは、通常乳幼児に処方されます。1日0.75mL/kgを、3回に分けて飲みます。
【1日の標準投与量】
・1歳未満 3〜6mL
・1〜3歳未満 6〜9mL
・3〜5歳未満 9〜15mL
吸入液・シロップともに、年齢や症状により適宜増減されるので、医師の指示通りの量を服用してください。
吸入液・シロップともに液体なので、薬剤は容器からスポイトで必要な量を吸い上げたり、カップで必要量を計測して使います。
3.ベネトリンの副作用
ベネトリンの主な副作用として、以下のような症状があります。
・動悸
・頭痛
・手の震え
・脈拍増加
・興奮
めったにないことですが、アナフィラキシーなど重篤な副作用が現れることもあるため、特に初めてベネトリンを使用する際は注意が必要です。
乳幼児は副作用があっても言葉で伝えるのは難しいため、保護者の方はよく観察してください。
4.使用上の注意点
ベネトリンは1日4回まで吸入できますが、吸入量が多すぎると強い副作用が現れる恐れがあります。
吸入しても発作が治まらない場合や、症状が悪化していく場合は、すぐに病院を受診してください。
過去にベネトリンを服用して重い副作用があった方は、二度とベネトリンを使ってはいけません。
また、ほかの薬と併用すると副作用が現れることがあるので、病院を受診する際はお薬手帳を持参し、医師に内服中の薬を伝えましょう。
併用に注意が必要な薬剤には、以下のようなものがあります。
・レルベア
・アドエア
ベネトリンは交感神経を活発にすることで、β2受容体を刺激しますが、同じく交感神経を活発にする薬剤を併用していると、作用が強く出過ぎます。
さらに、併用する薬剤によっては、体内の電解質バランスが崩れやすくなる恐れがあります。体内の電解質バランスが崩れると、頭痛や倦怠感、吐き気、めまいなどの脱水症状が現れることがあります。
ベネトリンの容器は、吸入液・シロップともに、開封後は日光が当たらない場所に保存してください。
また、シロップは甘い味がするため、お子さんが誤って飲んでしまわないよう、手の届かない場所に保管してください。
妊婦または妊娠の可能性がある方は、症状を診ながら薬剤の投与が適当かどうか判断するので、必ず医師にご相談ください。
【参考情報】『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://aafa.org/asthma/living-with-asthma/asthma-during-pregnancy/
5.ベネトリンの薬価
ベネトリンの薬価(2024年8月調べ)は、以下となります。
・ベネトリン吸入液0.5% 17.2円/mL
・ベネトリンシロップ0.04% 5.6円/mL
ベネトリンの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
6.おわりに
ベネトリンと同じように、喘息発作時の呼吸困難を改善する薬には、以下のようなものがあります。
・メプチン
発作時に使うリリーバーは、いざという時にきちんと吸入できるよう、健康な状態のときに使い方を練習しておきましょう。
ベネトリンを吸入しても症状が治まらない場合に備え、「どのタイミングで病院を受診をするのか」「どのような状況になったら救急車を呼ぶのか」など、主治医に確認しておきましょう。