喘息性気管支炎の原因と症状、治療法は?喘息との違いについても解説します
子どもが呼吸器の病気にかかると、まるで喘息のような「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という呼吸音や、激しい咳が出ることがあります。
しかし、それは喘息ではなく、喘息性気管支炎という病気のせいかもしれません。
この記事では、喘息性気管支炎の原因や症状、治療法について解説します。喘息との違いも説明しますので、お子さんの咳が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
1.喘息性気管支炎とは
喘息性気管支炎とは、気管支炎の一種です。
気管支炎とは、気管や気管支が炎症を起こし、咳や痰、のどの痛み、発熱などの症状が現れる病気です。
気管支炎には、急性と慢性があります。急性気管支炎の原因はウイルスや細菌の感染です。慢性気管支炎の原因はさまざまですが、最大の原因は喫煙です。
喘息になると、「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」という特徴のある呼吸音がします。この音を「喘鳴(ぜんめい)」といいますが、急性気管支炎が悪化すると、この喘鳴が現れることがあります。
このように、喘息のような喘鳴が伴う気管支炎を喘息性気管支炎、または喘息様気管支炎と呼んでいます。
喘息と喘息性気管支炎は、似たような症状が出るため間違われやすいのですが、別の病気です。それぞれ原因や治療法が違うため、適切な診断が重要となります。
【参考情報】『急性気管支炎|感染性呼吸疾患』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/a/a-03.html
2.喘息性気管支炎の原因
原因となるウイルスは、RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなど、風邪の症状をもたらすウイルスです。
その他、マイコプラズマやクラミジアニューモニエなどによる感染も原因となります。
特に、2歳くらいまでの乳幼児は気管支の発達が未熟であるため、喘息性気管支炎を発症することが多く、繰り返すことも稀ではありません。
しかし、成長につれ気管支も発達するので、気管支炎になっても、喘鳴の症状は次第に現れなくなってきます。
3.喘息性気管支炎の症状
症状は、咳、痰、発熱など風邪と同じですが、同じ症状でも風邪より強く出てきます。
風邪のような症状が出た後、もともと細い子どもの気管支が炎症によってさらに狭くなり、ヒューヒュー、ゼイゼイという呼吸音・喘鳴が現れます。
喘鳴がひどい時は、患者の背中に耳を当てただけでも聞こえます。子どもがしんどそうに息をしていたら、背中に耳を当てて確認してみるといいでしょう。
悪化すると、肩を上下させて呼吸をしたり、胸のあたりがペコペコとへこむ陥没呼吸が見られることもあります。
このような症状が出た場合は、入院して酸素吸入や呼吸のモニタリングを行うこともあります。
また、1才以下の乳児で強い呼吸困難が生じた場合は、急性細気管支炎(気管支よりさらに細い気道に起こる感染症)の可能性があります。 急性細気管支炎は喘鳴、呼吸困難が伴い、入院治療を要することがあるため、 喘鳴や陥没呼吸等の呼吸困難の症状がある場合は特に注意が必要です。
4.治療について
主な治療法は、症状を和らげる対症療法となります
咳がつらい場合は、咳止め薬。痰がしつこく絡む時は、痰を切れやすくする薬。その他、気管支を広げる薬を用いることもあります。細菌に感染した場合は、抗生剤の投与も行います。
咳き込みや喘鳴が強く、水分の摂取ができない場合や、睡眠が十分に取れない場合は、入院での治療が必要となることもあります。
特に乳幼児は、哺乳力が落ちたり、食事が摂れなくなることが多いので、そのような場合も入院することがあります。
痰が詰まって、お子さんがしんどそうにしている時は、縦に抱っこして姿勢を起こすと、多少ラクに息ができるようになります。
鼻吸い器を使って、痰や鼻水を吸引するのも効果があります。
5.予防について
年齢が小さいうちは、気管支炎にかかると症状が悪化しやすいです。
風邪などの呼吸器感染症が流行している時期は、以下のような基本的な感染対策をきちんと行いましょう。
・手洗い、うがいを行う
・呼吸器感染症が流行している時期は、マスクを着用する
・部屋の湿度が低い場合は、加湿して50%前後の湿度を保つ
ただ、小さい子どもは口の中に、ウイルスや細菌が付着した手指やおもちゃを入れてしまうため、基本的な対策を徹底しても、予防が難しいかもしれません。
子どもと一緒に過ごす大人が感染対策を忘れずに行い、ウイルスや細菌をなるべく家に持ち込まないように気をつけましょう。
日頃から規則正しい生活を行い、疲れやストレスを溜めないことも重要です。バランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、丈夫な体をつくりましょう。
【参考情報】『Infection Control Basics』CDC
https://www.cdc.gov/infection-control/about/index.html
6.喘息性気管支炎から喘息に移行するのか
喘息性気管支炎と喘息は、まったく別の病気です。
喘息性気管支炎は、ウイルスや細菌の感染によって、症状が現れます。
一方、喘息は、アレルギーやタバコ、外気温など何らかの刺激によって症状が現れます。
それぞれの病気は、原因も治療法も大きく異なります。もし間違った治療を行うと、症状が悪化することもあります。
ただし、病院で処方された薬を飲むなどして、喘息様気管支炎の治療を受けてもなかなか治らない場合や、何度も激しい咳を繰り返す場合は、実は喘息、または咳喘息だったということもあり得ます。
咳が続いている人が、以下の項目に当てはまるなら喘息、咳喘息の疑いもあります。
・夜間から早朝にかけて咳が出る
・何かのきっかけで咳が出ると、なかなか止まらない
・血縁者にアレルギー体質の人がいる
・犬や猫などのペットに近づくと、咳が出る
・風邪を引いた後、咳だけがしつこく続いている
心配な場合は、喘息治療の経験が豊富な病院を受診して検査を受けてください。
◆「子どもの咳が治まらない…小児喘息の原因と症状、治療法」>>
7.おわりに
喘息性気管支炎と喘息の症状はよく似ているので、見分けるのは難しいかもしれません。
同じような症状でも、喘息性気管支炎なら、時間はかかっても徐々に症状は落ち着いてきます。
しかし、喘息であれば、適切な治療を受けない限り、症状は悪化していくばかりです。
長引く咳や繰り返す咳に悩んでいる方は、呼吸器内科を受診して咳の原因を突き止め、自分に合った治療を受けてください。