睡眠時無呼吸症候群の人は、コロナとその後遺症のリスクが高いと判明
睡眠時無呼吸症候群の人は、生活習慣病や心血管疾患のリスクが高くなることがわかっています。
それだけではなく、新型コロナウイルス感染症のリスクも高いことが、最近の研究から明らかになってきました。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群とコロナの関係について解説します。
治療により、コロナのリスクが減らせる可能性もあるため、気になる方はぜひ読んでください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に一瞬呼吸が止まることや、浅い呼吸になることを繰り返す病気です。
この病気には、何らかの原因で気道が狭くなったために呼吸がしにくくなる「閉塞型」と、心臓や神経の病気により無呼吸が発生する「中枢型」の2つのタイプがあります。
患者のほとんどは閉塞型で、肥満のため脂肪で圧迫され、気道が狭くなったことが原因で発症しているケースが多いです。
寝ている間に無呼吸になっても、すぐに呼吸は再開されるので、病気になっても気づかないかもしれません。
しかし、家族やパートナーから「いびきが激しい」「毎晩のようにいびきをかいている」と指摘されている人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
いびきのほか、昼間の眠気や倦怠感が強かったり、起床時の頭痛が続くようなら、さらに可能性は高くなります。
2.睡眠時無呼吸症候群の人がコロナにかかりやすい理由
18歳以上の睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、新型コロナワクチン接種の「基礎疾患を有する方」に含まれています。
【参考情報】『基礎疾患を有する者』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/disease.pdf
つまり、コロナにかかると重症化する恐れが大きいと判断されているのです。
その判断のもととなったのが、アメリカのノースウェスタン大学で行われた研究です。
【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea and Risk of COVID-19 Infection, Hospitalization and Respiratory Failure』Northwestern University
https://www.scholars.northwestern.edu/en/publications/obstructive-sleep-apnea-and-risk-of-covid-19-infection-hospitaliz
上記の研究によると、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人は、そうでない同年代の人と比べると、コロナに感染するリスクが8倍高いとされています。
なお、コロナに感染すると重症化するリスクや、入院が必要となる可能性が高くなることも指摘されています。
睡眠時無呼吸症候群の自覚症状は、いびきや眠気などありふれたものなので、加齢やストレスのせいだと思われがちです。
しかし、病気を放っておくと、コロナにかかりやすくなり、しかも重症化しやすくなるので、思い当たる人は、病院で検査を受けることをおすすめします。
3.睡眠時無呼吸症候群の人は、コロナ後遺症を発症しやすい
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、コロナにかかりやすいだけではなく、後遺症も発症しやすいという報告もあります。
下記の研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の成人は、睡眠障害のない人に比べ新型コロナ後遺症の発症リスクが75%ほど高い可能性があると発表されました。
【参考情報】『Risk of post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection associated with pre-coronavirus disease obstructive sleep apnea diagnoses: an electronic health record-based analysis from the RECOVER initiative』Oxford Academic
https://academic.oup.com/sleep/advance-article/doi/10.1093/sleep/zsad126/7155872
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんには肥満の人が多く、生活習慣病など別の病気も合併していることがよくあります。
そのような肥満や合併症が、コロナ後遺症のリスクと関係があることもわかっています。
さらに、睡眠時無呼吸症候群を発症している女性は、男性よりコロナ後遺症になりやすいというデータもあります。
睡眠時無呼吸症候群の男性は、そうではない男性に比べると、後遺症を発症するリスクは59%高くなるのに対し、女性は89%も高くなることが示されています。
また、肥満がコロナ後遺症を長期化させるリスクがあるという研究結果も発表されています。
【参考情報】『Association between Long COVID and Overweight/Obesity』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34575251/
コロナ後遺症にかかった人と、かかっていない人の平均BMI(Body Mass Index:肥満度を表す指数)を調べると、前者の方が平均よりBMI値が高いという結果が出ています。
4.コロナの後遺症とは
新型コロナウイルス感染症の後遺症には、以下のようなものがあります。
・咳
・頭痛
・息切れ
・倦怠感
・集中力低下
その他、脱毛や味覚障害、筋力低下、思考力低下(ブレインフォグ)など、さまざまな症状が現れます。
症状は、時間の経過とともに改善することが多いのですが、1年以上続き、日常生活に支障をきたしている人も少なくありません。
いまのところ、コロナ後遺症に有効な治療法はないので、辛い症状を落ち着かせる対症療法が行われています。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A
』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html
5.睡眠時無呼吸症候群の治療でコロナのリスクは減らせるのか
以下の研究で、閉塞性無呼吸症候群の人が、CPAP(シーパップ)を用いて治療している場合のコロナ感染率および重症度への影響についての発表がありました。
【参考情報】『Impact of Obstructive Sleep Apnea and Positive Airway Pressure Therapy on COVID-19 Outcomes』ATS Journals
https://www.atsjournals.org/doi/10.1164/ajrccm-conference.2021.203.1_MeetingAbstracts.A1108
睡眠時無呼吸症候群を発症している人でも、CPAPでの治療を受けていれば、睡眠時無呼吸症候群ではない人と同程度まで、コロナ発症のリスクが下がることが報告されています。
逆に、未治療の患者は、睡眠時無呼吸症候群の重症度が高いほど、コロナの感染率が高くなっています。
CPAPを用いた治療は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けた人のうち、重症度を表す指標であるAHIが20以上あった場合、健康保険が適用されます。
治療を受けると、コロナのリスクが減らせるだけではなく、合併症のリスクも減らせ、いびきや昼間の眠気も軽減することができます。
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群の人は、コロナ感染と後遺症を発症するリスクのどちらも高くなります。
しかし、病気のサインに気づいて検査を受け、CPAPでの治療を開始すれば、リスクは十分に減らすことができます。
激しいいびきや昼間の眠気など、睡眠時無呼吸症候群の症状がある人は、病院で検査を受け、治療につなげましょう。
同時に、手洗いなどの基本的な感染対策やワクチン接種も忘れずに行いましょう。