インフルエンザとはどのような病気か~ウイルスの型と症状・対処法
インフルエンザは感染力が非常に強く、流行し始めると短い期間で多くの人に感染が拡大します。
インフルエンザの症状は風邪とよく似ていますが、症状の強さや出方に違いがあります。
近年はタミフルやリレンザ、イナビルなどの薬も登場し、治療も進歩していますが、時には死に至る恐ろしい病気であることには変わりありません。
この記事では、インフルエンザの初期症状と対処法についてご紹介します。感染が疑われる症状が出たら、早く、正しく行動してください。
目次
1.インフルエンザとはどのような病気か
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因で起こる感染症です。
感染経路としては、感染している人のくしゃみや咳、会話などで空気に拡がったウイルスを吸い込んでしまう「飛沫感染」が多く、スイッチ・蛇口・ドアノブなどの物に付着したウイルスに触れ、鼻や口などを通って感染する「接触感染」があります。
感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は1~3日間ほどです。インフルエンザにかかると、高熱や体の痛みなど強い全身症状に急激に襲われます。
その後遅れて、のどの痛みや鼻汁、咳といった風邪のような症状が現れてきます。
【参考情報】『About Flu』CDC
https://www.cdc.gov/flu/about/index.html
1-1.A型インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスは、ウイルスの形を変化させて進化していく特徴があります。そのため、一度感染しても、変化したウイルスには体の免疫が効かず、同じシーズンに繰り返し感染することがあり、大きな流行になることがあります。
A型インフルエンザの初期症状
- 流行時期:11月~2月が多い
- 初期症状:38 ℃以上の高熱。頭痛、関節痛、筋肉痛など体の痛み。全身のだるさ。
1-2. B型インフルエンザ
B型インフルエンザウイルスは、同じシーズンに繰り返し感染することはあまりありません。またA型は、人から動物へ、動物から人へと感染することがありますが、B型は人と人との間でしか感染しません。
B型インフルエンザの初期症状
- 流行時期:2月~3月が多い
- 初期症状:下痢や腹痛などお腹の不調。
1-3. その他のインフルエンザ
新型インフルエンザ
これまで一度も流行したことのない新しいウイルスが原因となって起こるインフルエンザです。ウイルスへの免疫を持っている人がほとんどいないため、世界的な大流行(パンデミック)となる可能性があります。
鳥インフルエンザ
鳥の感染症ですが、まれにウイルスが人に感染し、インフルエンザの症状を引き起こすことがあります。日本国内での感染例はありませんが、弱った野鳥や死んでいる野鳥を見てもさわらないでください。
2.病院での検査と治療
症状がひどかったり、呼吸が苦しくてつらい時は、病院で診察を受けましょう。
特に、呼吸器・循環器・腎臓等の慢性疾患や糖尿病等の代謝疾患がある方、ステロイド薬の服用で体の免疫力が抑制されている方は、感染すると肺炎などの合併症を起こす危険性があります。
上記の方は、疑わしい症状が出たら、すぐにかかりつけの病院に相談することをおすすめします。
小児の場合、インフルエンザ脳症という合併症が引き起こされることがあります。感染してから1~2日くらい後に、意識障害、けいれん、異常言動・行動等の症状が起こったら、すぐに病院を受診しましょう。
2-1. 何科を受診すればいいのか
持病があり定期的に病院に通っている方や、妊娠中の方は、かかりつけの病院に電話して対処法を聞きましょう。
それ以外の方は、内科を受診するのがよいでしょう。大学病院など大きな病院は紹介状が必要なので、まずは近くの内科で診断を受けましょう。
2-2. いつ受診すればいいのか
症状が現れてから、12時間~48時間の間に受診することをおすすめします。
発症してから48時間以内に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、症状の悪化を防ぐことができる可能性が高くなります。また症状が出てから12時間以降に検査を行うと、正しい結果が出やすくなります。
2-3. インフルエンザの検査方法
一般的には、細い綿棒のようなものでのどの奥や鼻の奥をこすり、そこについたものを専用のキットで検査して、陰性(感染していない)か陽性(感染している)かを判断します。
検査の精度はA型で65%、B型で52%と言われ、検査で「陰性」と出ても、実は感染していた、ということもありえます。
そのため病院では、検査結果だけでなく、医師が症状や地域の流行状況などを総合的に見て判断します。
2-4. インフルエンザの治療薬
治療にはウイルスを攻撃する薬(抗インフルエンザウイルス薬)を使う場合と、つらい症状を和らげるための薬を使う場合があります。
抗インフルエンザウイルス薬
抗インフルエンザウイルス薬には、カプセル・ドライシロップの「タミフル」や錠剤の「ゾフルーザ」、吸入粉末剤タイプの「リレンザ」「イナビル」などがあります。どの薬も、発症後はできるだけ早く飲み始めることが大事です。
高齢者や子ども(新生児を除く)など、口から薬を飲むことが難しい方には、「ラピアクタ(ペラミビル)」という点滴タイプの薬を使うこともあります。
症状を和らげる薬
抗インフルエンザウイルス薬以外にも、高熱が出た場合には熱を下げる薬(解熱鎮痛薬)、咳が出る場合にはしずめる薬(鎮咳薬)などを使うこともあります。
3.インフルエンザと診断されたら
症状が治まった後も、ウイルスの感染力はまだ残っているので、元気になったからといって職場や学校に行くと、他の人に感染させてしまう恐れがあります。
インフルエンザと診断されたら、できるだけ家の中で安静にして過ごしましょう。
3-1. 自宅療養中の注意点
- 処方された薬は、医師の指示に従って、最後まで飲みましょう
- 1日1回は体温を測り、記録しておきましょう
- 充分な睡眠をとり、静かに過ごしましょう
- 高熱で脱水を起こしやすくなっているので、こまめに水分を補給しましょう
- 食事は口あたりがよく、やわらかく、消化のよいものにしましょう
- 部屋の湿度は、50~60%にするのが望ましいです
- 1日数回、部屋の換気をしましょう
同居している家族は、できるだけ患者とは別の部屋で過ごしましょう。
患者と接するときにはマスクを着用し、看護の後は手を洗いましょう。
患者が使った食器や衣類は、通常の洗濯や洗浄、乾燥で消毒できます
めったにないことですが、インフルエンザに感染した子どもが異常行動を起こし、高層階から転落するなどの死亡事故が報告されています。
未成年者がインフルエンザと診断された場合、事故を防ぐため、治療を開始してから2日間は一人にしないように注意してください。
3-2. 職場や学校へ行けるタイミング
少なくとも、熱がさがってから2日目までは、外出しないようにしましょう。
学校保健安全法では、児童・生徒がインフルエンザと診断された場合、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで登校しないこと」とされています。出席停止の期間については、学校や園に確認しましょう。
社会人の場合、職場復帰についての決まりは特にありませんが、周囲への感染拡大を防止するためにも、インフルエンザと思われる症状が始まった日の翌日から7日目までは、できるだけ不要な外出をしないようにしましょう。
4. まとめ
- 高熱や体の痛み、お腹の不調が急激に起こったらインフルエンザを疑う
- 症状が現れてから12時間~48時間の間に、かかりつけの病院か近くの内科を受診しましょう。
- 療養中は医師の指示通りに処方薬を服用し、こまめに水分を摂りながら、できるだけ安静に過ごしましょう。
- ほかの人への感染を防ぐため、少なくとも熱がさがってから2日目までは、外出しないようにしましょう。
- 咳やくしゃみが出る場合は、「咳エチケット」を行い、家族やほかの人への感染拡大を防ぎましょう。
- そもそも、インフルエンザにかからない為に効果的なことは、ワクチンの接種です。ワクチンの効果は接種後2週間からだいたい5か月程となりますので、流行前に接種するとよいでしょう。