睡眠時無呼吸症候群で骨粗鬆症のリスクが高くなる?理由と予防法について
睡眠時無呼吸症候群と骨粗鬆症は、一見まったく関係のない病気だと思うかもしれません。しかし、実は密接なつながりがあります。
特に、高齢者や閉経後の女性は骨粗鬆症のリスクが高いため、睡眠時無呼吸症候群のサインに気づいたら、すぐに治療につなげてほしいです。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群と骨粗鬆症の関係性や合併のリスクについて説明します。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり、呼吸が浅くなることを繰り返す病気です。
この病気は、何らかの原因によって気道が狭くなるために起こる「閉塞性」と、心臓や神経の病気によって呼吸の指令がうまく働かないことで起こる「中枢性」があります。
患者のほとんどは閉塞性で、主に肥満が原因で気道の閉塞が生じています。
この病気の症状として、大きく激しいいびきや日中の眠気、起きた時の倦怠感などが挙げられます。
放っておくと、睡眠中の無呼吸や低呼吸による酸素不足により、心臓や血管に負担がかかります。その結果、心血管疾患や生活習慣病などの合併症が引き起こされる危険があります。
また、日中の眠気や集中力の低下により、仕事や学習のパフォーマンスが下がることでストレスを感じたり、居眠り運転による自動車事故を招くこともあります。
2.骨粗鬆症とは
骨粗鬆症とは、骨の量が低下して、骨が弱くなる病気です。
この病気になると、転んで手をついた時や尻餅をついた時など、わずかな衝撃で骨が折れてしまうことがあります。さらに、骨折がきっかけで寝たきりとなる恐れもあります。
骨は新陳代謝を繰り返し、古くなった骨を破壊すると同時に新しい骨を作ることで骨量をほぼ一定にし、強度を保っています。このバランスが崩れると骨量が低下して、骨がスカスカになります。
骨量は、年齢とともに減っていきます。特に女性はホルモンの影響により、閉経後に骨粗鬆症が増える傾向にあります。
骨を強くするための食事や運動で、骨密度の低下を抑えることも大切ですが、生活習慣の見直しだけでは改善できない場合は、ビスホスホネートや活性型ビタミンD3などの薬剤を用いて治療します。
【参考情報】『骨粗鬆症』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-043.html
3.睡眠時無呼吸症候群が骨粗鬆症のリスクを高める理由
睡眠時無呼吸症候群と骨粗鬆症の関連性は、さまざま論文で報告されています。
3-1.酸素不足
睡眠時無呼吸症候群の患者を調査した研究では、睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足は、骨粗鬆症のリスクを高めると報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の患者は、そうでない患者より骨粗鬆症のリスクが2.7倍高く、特に女性と高齢者のリスクが高いことが示されています。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、寝ている間に無呼吸になることで、体内に十分な酸素が取り込めなくなるため、血液中の酸素量が減ってしまいます。
体内の酸素が不足すると、骨を破壊する細胞の働きが促される一方、骨を作る細胞の機能が抑えられてしまいます。
そのため、骨が弱くなり、骨粗鬆症を発症しやすくなります。
【参考情報】『Obstructive sleep apnea and risk of osteoporosis: a population-based cohort study in Taiwan』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24735427/
『Relationship between obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome and osteoporosis adults: A systematic review and meta-analysis』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9712780/
3-2.睡眠不足
睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足も、骨粗鬆症のリスクを高めます。
閉経後の女性を対象に、普段の睡眠時間および睡眠の質と骨密度の関連について調査した研究によると、夜間の睡眠時間が5時間以下の女性は、7時間の女性よりも骨密度が低かったという結果が得られています。
睡眠中には、骨の成長や修復など、骨を強くする役割を果たす成長ホルモンが分泌されています。
睡眠時間が不足すると、睡眠中に分泌される成長ホルモンも不足します。そのため、骨密度が低下していきます。
また、成長ホルモンは、眠りが深いときに分泌量が多くなるため、睡眠時無呼吸症候群による夜間の覚醒などで睡眠の質が下がると、やはり不足がちになります。
【参考情報】『Short Sleep Is Associated With Low Bone Mineral Density and Osteoporosis in the Women’s Health Initiative』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31692127/
4.睡眠時無呼吸症候群の治療で骨粗鬆症のリスクは減らせるのか
睡眠時無呼吸症候群の治療により、睡眠の質量が改善されると、骨の健康に欠かせない成長ホルモンの分泌が促され、骨粗鬆症のリスクが減少することが期待できます。
治療には、主にCPAP(シーパップ)という医療機器を用います。眠っている間に、CPAPで呼吸をサポートすることで、睡眠中の無呼吸や低呼吸を防ぎます。
骨粗鬆症の対策には、睡眠時無呼吸症候群の治療のほか、食事や運動の見直しも大切です。
食事では、骨を丈夫にする栄養素であるカルシウムの摂取はもちろん、骨の吸収を助けるビタミンDやビタミンKも摂取しましょう。
ビタミンDは魚介類や卵、キノコ類、ビタミンKはブロッコリーや小松菜などの緑黄色野菜や納豆、海苔に多く含まれています。
運動は、ウォーキングやスクワットのような、骨に負荷や刺激が加わる種目が効果的です。ビタミンDは日光浴でも合成されるので、天気の良い日は屋外で運動するのもいいでしょう。
ただし、特に高齢者の場合、過度な運動は体への負担にもつながるので、膝や腰、関節などに痛みのある方は、医師に相談して自分に合った運動を行ってください。
【参考情報】『骨粗鬆症の予防のための食生活』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html
『骨粗鬆症の予防のための運動』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-001.html
5.おわりに
激しいいびきや、日中の猛烈な眠気に悩まされている人は、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。
疲れた時や、お酒を飲み過ぎた時などに、たまにいびきをかく程度なら心配ありません。しかし、毎晩のようにいびきが出ているなら話は別です。
睡眠時無呼吸症候群を治療せずに放っておくと、骨粗鬆症のほか、高血圧や糖尿病、心筋梗塞など、さまざまな病気が引き起こされる恐れがあります。
特に女性は、閉経後に睡眠時無呼吸症候群と骨粗鬆症、両方のリスクが高くなるため、注意してください。