口呼吸がいびきにつながる理由と予防のためにできること
寝ている間に口を開けて呼吸をしていると、いびきをかきやすくなります。
とはいえ、睡眠中は意識して口を閉じることもできず、どうしても口が開いてしまうこともあるでしょう。
この記事では、口呼吸になるといびきをかきやすい理由を説明し、睡眠中に口が開いてしまうのを予防する方法も紹介します。
いびきに悩んでいる人や、口がポカンと開いてしまう人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.いびきの主な原因
いびきは、寝ている間に何らかの原因によって気道が狭くなり、狭くなった気道を空気が通り抜ける際に出る音です。
以下、いびきの主な原因について説明します。
1-1.疲労やストレス
疲れやストレスを感じると、体は回復のために筋肉を緩ませて緊張をほぐします。
その際、のど周辺の筋肉も緩むことで気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。
1-2.飲酒
アルコールには、筋肉を緩める作用があります。
特に寝酒の習慣がある人は、アルコールが体から抜ける前に寝てしまうので、アルコールで緩んだ舌の筋肉が気道を塞ぎ、いびきにつながります。
【参考情報】『アルコールの作用』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-003.html
1-3.喫煙
タバコには、ニコチンをはじめ多くの化学物質が含まれています。そのため、吸い続けることで気道の粘膜が化学物質に刺激され、むくみや炎症が起こりやすくなります。
むくみや炎症が起こると気道が狭くなるので、いびきが出やすくなります。
1-4.鼻づまり
風邪や副鼻腔炎などの病気にかかると、鼻が詰まってしまうことがあります。
鼻が詰まると、空気の通りが悪くなるため、鼻で呼吸をするのが難しくなります。すると、つい口を開けてしまうので口呼吸となり、いびきをかきやすくなります。
1-5.肥満
肥満体型になると、首回りや舌にも脂肪がつきます。
首回りについた脂肪は、外から気道を圧迫します。さらに、舌に脂肪がつくと重くなり、のどに落ち込みやすくなります。
従って、圧迫と閉塞によって気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。
◆「いびきの原因は肥満?」>>
◆「いびきと舌」の関係について>>
1−6. 顔の骨格
肥満体型の人だけでなく、痩せていても顎が小さいといった顔の骨格によって、いびきをかく場合があります。
食生活の変化により顎が発達しにくくなり、小顔がもてはやされている風潮により、いびきに悩むのは男性だけでなく、小顔の女性も増えているようです。
2.口呼吸の主な原因
口が開いてしまうことで口呼吸になる原因には、以下のようなものがあります。
2-1.鼻づまり
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、花粉症などの病気で鼻が詰まっていると、鼻で呼吸をするのが苦しくなります。
鼻での呼吸が苦しいと、口で呼吸をする方が楽になるので、自然と口呼吸の回数が増えます。
2-2.歯並び
例えば、上顎前突(出っ歯)など歯並びの問題により、物理的に口が閉じにくくなっている人がいます。
そのような人は、自然と口が開いてしまうので、口呼吸になりがちです。
2-3.口周りの筋肉が弱い
加齢で口周りの筋力が衰えると、自然に口がポカンと開いてしまい、口呼吸になることがあります。
また、乳幼児は口周りの筋力がまだ弱いため口が開きやすく、口呼吸になることがあります。
3.なぜ、口呼吸だといびきが出やすいのか
寝ている間に口呼吸になると、舌が気道へと落ち込みやすくなります。
もともと睡眠中は全身の筋肉が緩むため、起きている時よりも気道が狭くなるのですが、舌に塞がれた気道はさらに狭くなり、空気が通りにくくなります。
気道が狭くなって空気が通りにくくなった人は、必要な酸素を得るため、無意識のうちに思い切り息を吸うようになります。
その時、狭い気道を空気が加速して通り抜けるため、気道の粘膜が大きく振動して音が出るのです。
4.睡眠中の口呼吸を防ぐ方法
睡眠中にどうしても口呼吸になってしまう人は、以下の対策を試してみましょう。
4-1.テープやマスクで口を閉じる
口呼吸防止用に、睡眠中に口を閉じるテープが販売されているので、試してみるのもいいですしょう。
ただし、鼻が詰まっている人は、呼吸が苦しくなってしまい危険なので、使わないでください。
肌が弱くて、テープを貼るとかぶれてしまう人は、マスクを着用して口が開くのを防ぐこともできます。
4-2.寝酒を控える
お酒を飲んだ方がよく眠れるという理由で、寝る前に飲んでいる人もいるでしょう。
しかし、アルコールが体内から抜けきる前に寝てしまうと、筋肉が弛緩して口が開いてしまい、いびきが出やすくなります
いびきが気になる人は、寝る4時間前には飲酒を終えるといいでしょう。
4-3.禁煙する
喫煙の習慣がある人は、気道の粘膜が炎症を起こしやすくなるため、いびきが出やすくなります。
気道の慢性的な炎症を防ぎ、いびきを改善するには、禁煙が有効です。
しかし、長年タバコを吸い続けていると、止めるのは難しいかもしれません。そのような人は、禁煙外来を利用するのもひとつの方法です。
【参考情報】『Smoking as a risk factor for sleep-disordered breathing』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7944843/
4-4.鼻づまりを治療する
風邪などで鼻が詰まっても、それは一時的なことなので、風邪が治れば鼻づまりも解消されます。
しかし、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎のような、慢性的な鼻の病気が原因であるなら、鼻詰まりのもととなる病気を治療しなければ、なかなか口呼吸は改善されません。
慢性的な鼻づまりがある人は、耳鼻咽喉科を受診して原因を調べ、病気を治療するのがよいでしょう。
4-5.肥満体型の人は減量する
肥満体型の人は減量して、標準体重を目指して減量に取り組みましょう。
標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で計算できます。
例えば、身長165cmの人なら、1.65×1.65×22=59.865となるので、標準体重は60kg程度となります。
全身の脂肪が落ちてくると、気道周辺や舌についた余分な脂肪も落ちてきます。すると、狭くなった気道が広がって鼻呼吸がしやすくなるので、いびきが出にくくなります。
4-6.口周りや舌の筋肉を鍛える
口周りや舌の筋力が衰えているのであれば、鍛えることでいびきが改善する可能性があります。
口周りの筋力が上がると口が開きにくくなり、口呼吸が改善していきます。
また、舌の筋力がつけば舌は正しい位置に戻り、寝ている間に喉へ落ち込むことが少なくなります。
【参考情報】『オーラルフレイル対策のための口腔体操』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/jda/release/detail_141.html
4−7. マウスピースを付ける
軽度から中度のいびきであれば、就寝時にマウスピースを装着することで効果が期待できます。
就寝時に口の中にマウスピースを装着すると、寝ている間に下あごが前に出て気道が広がり、空気が通りやすくなります。
5.対策しても効果が感じられない場合
さまざまな対策をしても効果がなかった場合、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、いびきが出ているのかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを、何度も繰り返す病気です。
この病気の人は、毎晩のように激しいいびきをかくため、周りの人から指摘されることも少なくありません。
また、夜中に十分に眠れないため、日中の猛烈な眠気やだるさに悩まされることがあります。
睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、生活習慣病や心血管疾患のリスクが高くなります。
また、居眠り運転で事故を起こしたケースが相次いでいるため、運転業務に携われる人は、会社から検査を受けるよう指導されることもあります。
6.おわりに
睡眠中の口呼吸は、いびきを引き起こす原因のひとつです。そのため、対策を講じて口呼吸が改善すると、いびきが軽減できる可能性があります。
しかし、口呼吸が改善してもいびきが良くならない場合は、睡眠時無呼吸症候群がいびきの原因かもしれません。
いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合、呼吸器内科で治療ができます。
早めに治療を開始することで、いびきの改善はもちろん、さまざまな合併症の予防にもつながります。また、睡眠の質量が上がるので、目覚めの気分も改善されるでしょう。