喘息の悪化と洗剤の影響。洗剤の選び方と注意点は?
喘息の患者さんは、洗剤の成分の中に含まれる物質が刺激となり、咳や息苦しさなどの症状が強く出ることがあります。
とはいえ、洗剤を使わずに日常生活を送ることは難しいので、なるべく刺激に触れないように工夫して、悪化を防ぐ必要があります。
この記事では、洗剤の成分と喘息の関係を説明します。洗剤の選び方や注意点についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.喘息とはどんな病気か
喘息とは、気道に慢性的な炎症があることで、咳や息苦しさなどの症状が続く病気です。
喘息の原因は、アレルギー性と非アレルギー性に分類されます。
アレルギー性は、ダニや花粉、ホコリ、カビ、ペットの毛など、特定の物質に反応してアレルギーが生じ、症状が引き起こされます。
非アレルギー性は、気候や気温の変化、タバコ、ストレスなど、アレルギー以外の原因によって生じます。
2.洗剤に含まれる主な成分
家庭用の洗剤には、酸性・中性・アルカリ性の3種類があります。酸性やアルカリ性は洗浄力が強い反面、体への刺激が強いものがあります。
以下、洗剤に含まれる主な成分を紹介します。
2-1.界面活性剤
本来であれば混ざり合わないものを、混ぜ合わせるための物質です。
界面活性剤の働きにより、水だけでは落とすことが難しい皮脂などの汚れを水と混ざりやすくし、汚れを落とすことができます。
「界面活性剤は刺激が強い」と思われる方も多いのですが、種類によって、刺激の強いものと少ないものがあります。
2-2.水軟化剤
水の中には、カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンが含まれています。この金属イオンは、界面活性剤の働きの妨げになります。
水軟化剤は、金属イオンと結びついて水の硬度を下げ、界面活性剤の洗浄力を高めてくれます。
2-3.酵素
垢などの皮脂汚れや、食べ物や血液などのタンパク質の汚れは、界面活性剤だけでは落としにくいこともあります。
酵素は、繊維の奥まで入りこんだしつこい汚れを分解し、汚れを落としやすくします。
2-4.蛍光増白剤
染料の一種で、布の見た目の白さを強調する働きがあります。
通常、落としきれなかった汚れは黄ばみとなって目に見えるようになりますが、蛍光増白剤を使うと、汚れが白く見えるようになります。
2-5.漂白剤
シミや汚れを化学反応によって分解し、白くする物質です。除菌・殺菌もできます。
家庭でよく使われる塩素系漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウムという成分でできています。この成分には、ツンとした特有の匂いがあるので、不快に感じる方もいます。
2-6.香料
花やフルーツの香りなど、人が心地いいと感じる香りをつけるための物質です。
植物など天然の成分で作られているものもあれば、石油系の原料を化学的に合成して作られるものもあります。
3.なぜ、洗剤で喘息が悪化することがあるのか
先に紹介した洗剤の成分の中には、喘息の症状を引き起こす恐れがあるものが含まれています。
以下、喘息が悪化する可能性のある洗剤成分について説明します。
3-1.界面活性剤
界面活性剤を吸い込んでしまうと、空気の通り道である気道に備わったバリア機能が障害され、炎症が引き起こされるという研究があります。
もともと喘息の患者さんは、気道に慢性的な炎症が起こっているのですが、バリア機能が障害されると、ますます炎症がひどくなる恐れがあります。
さらに、界面活性剤は洗剤の中だけではなく、家庭内のホコリの中にも一定量存在することが分かっています。
ホコリの中に界面活性剤が存在する理由としては、洗剤で洗った衣服の中に残っている分が、リビングやベッドの上に落ちるのだと考えられています。
【参考情報】『洗剤に含まれる界面活性剤が喘息様気道炎症を誘導するメカニズムを解明』国立育成医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0516.html
3-2.漂白剤
漂白剤に含まれる塩素を吸い込むと、強烈な臭いに刺激されて咳き込み、喘息発作が誘発されることがあります。
さらに、のどの痛みや目の痛みが生じることもあります。
【参考情報】『Chlorine: Lung Damaging Agent』CDC
https://www.cdc.gov/niosh/ershdb/emergencyresponsecard_29750024.html
3-3.香料
洗剤や柔軟剤の香料に含まれる化学物質は、喘息発作を引き起こす可能性があります。
香料の入った製品が喘息患者に与える影響について調べた研究では、半数以上に呼吸器系の問題や偏頭痛、喘息発作などの影響があったと報告されています。
洗剤のほか、芳香剤や消臭剤など香料が使用された製品でも、同様の影響があります。
近年、香料により健康被害が誘発される「香害」や、化学物質過敏症の問題に注目が集まっていますが、喘息の患者さんは、化学物質の刺激を受けやすいと考えられています。
【参考情報】『Fragranced consumer products: effects on asthmatics』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5773620/
4.喘息の悪化を防ぐ洗剤の選び方と注意点
喘息の人は、以下のような、気道への刺激が少ない洗剤を選びましょう。
・香料が含まれていない
・「無添加」「敏感肌用」の表示がある
良い匂いやさわやかな香りを楽しみたい人もいると思いますが、香料に含まれる化学物質の影響を避けるには、やはり無香料の製品が安心です。
また、「無添加」「敏感肌用」の洗剤は、化学物質による刺激が低いので、体への負担が少なくなります。
洗剤を使う際には、手袋やマスクを着用して、触れたり吸い込んだりするのを避けるのもよいでしょう。換気も十分に行って、刺激となる物質を外へ追い出しましょう。
洗剤の量は、必要最小限としておきましょう。しっかり洗いたいからといって、たくさん使ってしまうと、その分、刺激となる物質の量も多くなります。
洗濯の最後には、衣服に洗剤が残らないよう、十分にすすぎましょう。洗剤が残っている衣類を着用すると、刺激となる成分を吸い込んでしまう恐れがあります。
5.おわりに
喘息の患者さんは、洗剤に含まれる成分によって、症状が悪化することがあります。洗濯の際に、咳き込んだり息苦しくなることがあれば、刺激の少ない製品に替えてみましょう。
洗剤を変えても効果が感じられない場合は、原因が洗剤だけではない可能性もあります。なかなか症状がよくならない時は、医師に相談して原因を探りましょう。