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家に帰ると咳が出る原因とは?家庭でできる予防・対策まとめ

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月04日

日中、会社や学校にいる間は問題ないのに、家に帰ると咳が出たり、咳が増えることはありませんか?

あるいは、自宅では咳は出ないのに、実家に帰るとなぜか咳が出るという人もいるでしょう。

その様な場合、部屋の乾燥寒暖差ハウスダストペット化学物質など、家の環境が原因かもしれません。

また、対策をしても改善されない場合、喘息咳喘息アレルギー性鼻炎などの呼吸器疾患が隠れていることもあります。

この記事では、家に帰ると咳が出る原因と、自宅でできる簡単な対策、さらに受診の目安についてわかりやすく解説します。

1.家に帰ると咳が出る主な原因

外出中は問題がなくても、帰宅後に咳が出始めたり、咳が増える原因を確認していきましょう。

1-1.室内の乾燥による咳

室内が乾燥すると、咳が出やすくなるため注意が必要です。

空気が乾燥すると、気道の粘膜も乾燥し、ウイルスや細菌の侵入を防ぐバリア機能が弱まります。

その結果、感染や炎症が起こりやすくなり、咳が出やすくなります。

特に冬は空気が乾燥しやすく、さらに暖房の使用で室内の湿度が下がりやすいため、より乾燥対策が重要となってくるのです。

◆「咳が止まらない時こそ乾燥に注意!」>>

【参考情報】”Indoor Air and Health” by U.S. Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/inside-story-guide-indoor-air-quality

1-2.家の中と外の温度差(寒暖差アレルギー)

家の中と外の温度差が大きいと、自律神経が乱れ、咳が出やすくなります。

人の体は自律神経によって体温を一定に保っていますが、急激な寒暖差があるとこの働きが乱れ、咳・くしゃみ・鼻水などの症状が起こりやすくなります。

暖房で温まった室内と、寒い屋外との温度差が大きいと発症しやすく、この状態を「寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)」と呼びます。

◆「寒暖差による咳喘息の症状と対策」について詳しく>>

【参考情報】『血管運動性鼻炎』徳島県医師会
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/902-2013-11-05-00-42-28

【参考情報】『天気とぜん息の関係』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202207_2/

1-3.アレルギー(ハウスダスト・ペット・ダニ・カビ)

ダニ・カビ・ホコリ・ペットの毛などにアレルギー反応を起こすと、咳が出ることがあります。

家の中にはさまざまなアレルゲンが存在し、アレルギー体質の人はそれらに反応して気道が刺激され、咳が出やすくなります。

ダニやカビが多い部屋、ホコリの溜まった環境、犬や猫の毛が舞う室内では症状が起こりやすく、子どもやアレルギー体質の人は特に注意が必要です。

◆「アレルギー」について詳しく>>

◆「咳の原因は猫アレルギーかも」>>

【エアコンの掃除方法とポイント】
1.フィルター掃除
・1~2週間に1回を目安に取り外して掃除機でホコリを吸い取る。
・水洗いできるタイプは、汚れがひどい場合に中性洗剤で洗い、しっかり乾燥させる。

2.内部のカビ対策
・シーズン開始前と使用後に内部の送風口やファンを乾拭きする。
・エアコン内部のカビ防止スプレーや専用クリーナーを使うと効果的。

3.運転時の工夫
・冷房や暖房使用後に、内部を乾かす「送風運転」を5~10分行う。
・換気をしながら使用すると、室内のアレルゲン濃度を下げやすい。

◆「エアコンの上手な使い方」について>>

◆「車に乗ると咳が出る」方はこちらも>>

1-4.芳香剤や洗剤などの化学物質

芳香剤や洗剤などに含まれる化学物質が気道を刺激し、咳の原因になることがあります。

香料界面活性剤などの刺激性物質が気道を刺激することで、咳反射が起こりやすくなるのです。

自宅で使う芳香剤洗剤消臭剤、さらには家具に含まれる化学物質でも咳が誘発される場合があります。

◆「喘息の悪化と洗剤の影響」>>

【参考情報】『シックハウス症候群・化学物質過敏症』旭川市
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/kurashi/135/136/138/p001980.html

【参考情報】”Volatile Organic Compounds’ Impact on Indoor Air Quality” by U.S. EPA
https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/volatile-organic-compounds-impact-indoor-air-quality

1-5.夏型過敏性肺炎(カビ)

家のカビを吸い込むことで「夏型過敏性肺炎」を起こし、家にいると咳が出る場合があります。

「トリコスポロン」というカビが原因でアレルギー性の肺炎が起こり、咳・息切れ・発熱などの症状が出ます。

特に湿気が多い環境ではカビが増えやすく、症状が悪化します。

症状は初夏〜秋に出やすく、古い家屋湿気がこもりやすい場所(台所のシンク下、浴室、カーペット、畳の裏)、エアコン内部にカビがある場合 に発生しやすいです。

旅行などで家を離れると症状が軽くなり、放置すると肺線維症へ進行する危険があります。

◆「夏型過敏性肺炎の症状・原因・治療法」について>>

【参考情報】『夏型過敏性肺炎』宮崎大学
https://www.miyazaki-u.ac.jp/tsunomaru/kenkounikki/natsugatakabinnseihaienn

【参考情報】”Hypersensitivity Pneumonitis” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/hypersensitivity-pneumonitis

1-6.喘息・咳喘息などの呼吸器疾患

喘息や咳喘息のある人は、夜間帰宅後に咳が出やすくなります。

私たちの体は、交感神経と副交感神経のバランスにより呼吸や体温などが調節されていますが、夜になると副交感神経が優位になり、気道の筋肉がゆるんで狭くなり、咳が起こりやすくなるためです。

特に既往歴がある人や家族に喘息の人がいる場合は注意が必要で、帰宅後や就寝前に咳が続くことがあります。

◆「喘息・咳喘息かも?何科を受診する?」>>

【参考情報】”Autonomic Nervous System” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/23273-autonomic-nervous-system

【参考情報】”Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/

【受診の目安】

ここまで紹介したように、帰宅後の咳にはさまざまな原因がありますが、次のような場合は自己判断で様子を見ず、早めに医療機関を受診しましょう。

・咳が2週間以上続く場合
・息苦しさや胸の痛みがある場合
・発熱を伴う場合
・痰に血が混じる場合
・夜間・早朝の咳が強く、日常生活に支障がある場合
・喘息やアレルギーの持病があり、症状が悪化している場合

原因が重なっているケースも多いため、検査によって早めに原因を特定することが大切です。

◆「その咳の原因、呼吸器内科で検査しましょう」>>

2.帰宅後の咳を和らげる家庭でできる対策

家の中に咳の原因がある場合、以下の対処法で咳を和らげることができる可能性があります。

2-1.室内の湿度を適切に保つ

室内の湿度を40~60%程度に保つと、のどの乾燥を防ぎ、ウイルスの活動を抑えることができます。

加湿器を使ったり、洗濯物を室内で干したりして、空気の乾燥を防ぎましょう。

ただし、過度な加湿はカビの発生を招き、アレルギーの原因になることがあるので、注意してください。

◆「加湿器が原因で咳が出る?加湿器肺炎について」>>

2-2.防寒対策を行う

寒い時期には、しっかりと防寒対策を行いましょう。

外出時は、重ね着や保温性の高い下着などで体が冷えないように心掛け、家の中と外の体感温度の差を少なくすることが大切です。

首回りには太い血管が通っているので、その部分を温めると体全体が温まりやすくなります。

マフラーを巻いて首周りを温めるのもいいでしょう。

その他の防寒対策:   
・厚手で長めのカーテンの使用     
・窓サッシに隙間テープを貼る  
・サーキュレーターでの空気循環  
・床暖房の導入

2-3.こまめな掃除でアレルゲンを減らす

アレルギー性疾患のある人やアレルギー体質の人は、こまめに掃除してホコリなどのアレルゲンを家から取り除きましょう。

布団やシーツなどの寝具も定期的に洗濯して、アレルゲンをしっかり除去してください。

ダニは布団やソファなど布製品に潜み、ホコリは家具の隙間や裏側、エアコンのフィルターに溜まりやすいので、これらの場所も丁寧に掃除しましょう。

◆「ソファを選ぶポイントと注意点」>>

掃除機を使う際は、微細なホコリやダニの死骸を逃しにくいHEPAフィルター付きの掃除機を選ぶとより効果的です。

特にアレルギー体質の人は、掃除中にホコリが舞い上がりにくくなるため、症状の予防にもつながります。

◆「喘息・アレルギーを悪化させない、カビ掃除の注意点」>>

2-4.生活環境の見直し(香料・洗剤の使用)

香りの強い芳香剤や刺激の強い洗剤がある場合は、いったん使用を止め、無香料・無添加のものに替えてみましょう。

使うのを止めて咳が少なくなるようであれば、それらに含まれる化学物質が影響していた可能性があるため、引き続き刺激の少ない製品を選んでください。

【参考情報】”Household Chemical Products and Your Health” by Agency for Toxic Substances and Disease Registry
https://www.atsdr.cdc.gov/toxfaqs/tfacts6.pdf

3.対策しても効果が感じられない場合に疑われる病気


いずれの対策を行っても効果が感じられない場合、以下のようなアレルギー性疾患が原因で咳が出ている可能性があります。

3-1.喘息

気道に慢性的な炎症が起こっているため、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。

原因は、ダニやカビなどからストレスや気候の変化など多岐にわたります。

喘息の咳は市販薬では良くならないので、病院で吸入ステロイド薬などを処方してもらい、毎日服用する必要があります。

◆「喘息の症状・原因・検査・治療について」>>

【参考情報】”Asthma Overview” by National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/asthma

3-2.咳喘息

喘息とよく似た病気ですが、息苦しさはなく、咳だけが長く続く病気です。

風邪などの呼吸器感染症をきっかけに発症することが多く、風邪が治って発熱や鼻水などの症状がなくなっても、咳だけがしつこく続きます。

咳喘息を放っておくと、3分の1の人が喘息に移行すると言われています。

◆「咳喘息の原因・症状・治療について」>>

3-3.アレルギー性鼻炎

花粉やダニなどのアレルゲンが原因で鼻の内部の粘膜に炎症が起こり、咳や鼻水、鼻づまりなどの症状が現れる病気です。

花粉が飛ぶ時期など、特定の季節だけに症状が現れる場合と、季節に関係なく1年中症状が現れる場合があります。

◆「花粉症で咳が出る理由」アレルギーとの関係について>>

【参考情報】『アレルギー性鼻炎 花粉症』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-09.pdf

4.呼吸器内科で行う検査

咳が2週間以上長引いていたら、何らかの病気の疑いがあるので、呼吸器内科で検査して原因を調べておきましょう。

以下、呼吸器内科で行う主な検査を紹介します。

4-1.画像検査

X線(レントゲン)やCT(コンピュータ断層撮影)を使い、胸部の状態を詳しく確認します。

主に、肺炎、肺がん、間質性肺炎、過敏性肺炎などの異常を確認することができます。

X線は手軽で迅速に行えますが、CTはより詳細に肺の構造や病変の広がりを確認できます。

※放射線を使用するため、妊娠中の方は事前に医師に伝えることが重要です。

◆「レントゲン写真から、呼吸器内科でわかること」>>

4-2.血液検査

血液を採取して、全身の状態やアレルギーの有無、炎症の程度を調べます。

アレルギーの確認:
IgE抗体や好酸球の数値を調べることで、アレルギー性の咳(喘息やアレルギー性鼻炎など)の可能性が分かります。

感染症の評価:
炎症反応(CRPや白血球数)を測定し、細菌感染やウイルス感染の有無を確認します。

その他:
肝臓や腎臓の機能、全身の健康状態も併せて評価されることがあります。

【参考情報】”Allergy Blood Tests” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/tests-procedures/allergy-tests/about/pac-20392895

4-3.呼吸機能検査

呼吸機能検査では、肺がどれだけ効率よく空気を出し入れできるかを調べます。

スパイロメトリー(息を吸ったり吐いたりして肺活量や呼気量を測定)や、モストグラフ(より詳細な肺の動きを測定)などがあり、喘息や咳喘息、COPDなど、気道の狭窄(きょうさく)や過敏性の有無を確認できます。

症状がない日でも測定できるため、診断だけでなく、治療効果の確認や経過観察にも使われています。

※呼吸に協力が必要なので、子どもや高齢者の場合はサポートが必要な場合があります。

◆「呼吸器内科で行う検査」についてもっと詳しく>>

4-4.その他の検査

呼吸器内科では、上記の基本的な検査に加えて、症状や疑われる病気に応じて以下のような検査が行われることがあります。

喀痰(かくたん)検査:
咳で出る痰を採取し、細菌やウイルス、炎症細胞の有無を調べます。

肺炎や結核、慢性気管支炎などの診断に役立ちます。

アレルギー検査:
皮膚テスト(スクラッチテストやプリックテスト)や血液検査で特定のアレルゲンに対する反応を確認します。

ハウスダスト、ダニ、花粉、ペットなど、原因物質の特定に役立ちます。

呼気一酸化窒素(FeNO)検査:
喘息の炎症の指標となる一酸化窒素を呼気中で測定する簡便な検査。

気道炎症の程度や治療効果の評価にも利用されます。

5.おわりに

家に帰ると咳が出る原因には、部屋の乾燥、室内外の温度差、アレルギーなどがあります。

帰宅後の咳が激しくてつらい場合や、対策を行っても咳が2週間以上続いている場合は、病院を受診して原因を調べましょう。

病気によっては、放置していると悪化することもあります。

早めに原因を調べ、適切な治療を開始しましょう。

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