アレルギーの一種・パンケーキ症候群を知っていますか?
ホットケーキやお好み焼き、たこ焼きを作るとき、手軽に使えるミックス粉を利用する人は多いでしょう。しかし、これらのミックス粉が原因でアレルギーの症状が現れることがあります。
そんな時、アレルギーの原因は小麦粉だと思いがちですが、実は「ダニ」が原因かもしれません。
この記事では、パンケーキ症候群と呼ばれるアレルギーについて説明します。さらに、ダニを防ぐ方法も紹介します。
目次
1.パンケーキ症候群とは
パンケーキ症候群とは、ホットケーキミックスやお好み焼き粉などのミックス粉に繁殖したダニが原因で、全身にアレルギー反応を引き起こす「経口ダニアナフィラキシー」のことです。
アメリカの家庭でよく使われるパンケーキミックスの粉が原因で発生することが多いため、俗にパンケーキ症候群と呼ばれています。
小麦粉にもダニが発生することはありますが、ミックス粉は小麦粉より栄養分が豊富なため、ダニが繁殖しやすいのです。また、顆粒だしやプロテインの粉も栄養があるので、ダニが好みます。
これらの粉を使い切れずに保管した場合、袋の中にダニが入り込んで繁殖することがあります。このダニを摂取したことで、経口ダニアナフィラキシーが引き起こされるのです。
小麦も食物アレルギーの原因となることがあるので紛らわしいかもしれませんが、パンケーキ症候群の原因は食物アレルギーではなく、ダニアレルギーです。
【参考情報】『Dust mite infestation in cooking flour: experimental observations and practical recommendations』Asian Pacific Journal of Allergy and Immunology
https://www.apjai-journal.org/wp-content/uploads/2016/10/7DustmiteinfestationAPJAIVol33No2June2015P123.pdf
2.パンケーキ症候群の症状
パンケーキ症候群の症状は、食べてから30分以内に現れることが多いです。
<主な症状>
・じんましん
・むくみ
・下痢
・腹痛
・嘔吐
・強い喘鳴(ぜいめい:「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音)
・呼吸困難
ダニを摂取したからといって、すべての人に症状が出るわけではありませんが、もともと喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を持っている人は発症しやすいので注意が必要です。
パンケーキ症候群が重症化すると意識レベルが低下し、命に関わることもあります。
3.パンケーキ症候群の検査と治療
ダニアレルギーの有無は、検査で確認することができます。
3-1.検査
ダニアレルギーは、血液検査や皮膚検査で調べます。
血液検査では、アレルギーの有無や、アレルギーの原因となる物質を調べることができます。
ただし、アレルギー症状には個人差があるため、判定結果とアレルギー症状が一致しないこともあります。判定結果の解釈には注意が必要です。
皮膚検査では、アレルギーの原因となる物質を針で皮膚に少量入れ、皮膚の変化を見ます。皮膚が赤くなったり膨らんだりしたら、その物質に対してアレルギーがあるとわかります。
その他、症状が出たときに食べていたミックス粉があれば、ダニを顕微鏡で確認することができます。
3-2.治療
症状が軽い場合は、ステロイド薬や抗ヒスタミン薬を服用します。重症の場合は、アドレナリンの筋肉注射が必要です。
過去にアナフィラキシーを経験し、エピペンを持っている人は、受診前にエピペンを使用して症状の悪化を防いでください。
【参考情報】『アナフィラキシー時のエピペン®の使用について』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/column/202102_2/
症状が重いと感じたら、迷わず救急車を呼びましょう。アナフィラキシーショックの症状を見て驚いてしまうかもしれませんが、慌てず落ち着いて対処しましょう。
4.ダニを防ぐ方法
ダニはパンケーキ症候群だけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を引き起こしたり、悪化させる原因にもなります。
ダニが好む場所や湿度を把握し、繁殖をできるだけ防ぐことが大切です。
4-1.小麦粉やミックス粉にダニが発生する理由
ダニは、家の中のあらゆる場所にいます。特に、室温が20度以上で湿度が高い場所を好み、そのような場所では大量に繁殖します。
ダニは、人のフケや垢などをエサとしていますが、小麦粉などの粉類もエサとなります。特にミックス粉は、糖分や脂質、タンパク質が豊富に含まれ栄養が豊富なので、ダニが好みます。
小麦粉やミックス粉の袋を開封し、使い切れなかった分を保存する際、保存方法によっては、袋や容器の中が、ダニの繁殖に適した場所となることがあります。
ダニは、肉眼では見えないほど小さな生き物なので、袋や容器のわずかな隙間からでも、中に入り込むことができます。
ゴムやテープだけで袋の口を止めていたり、袋のジッパーがしっかり閉められていなかった場合、その隙間からダニが侵入する恐れがあります。大量に発生している場合、粉が動いて見えることもあります。
ダニは加熱すると死滅しますが、死骸やフンもアレルギーの原因となります。そのため、死骸が残った粉で調理したものを食べれば、加熱してもアレルギーの症状が現れる可能性があります。
4-2.ダニを防ぐ方法
小麦粉やミックス粉は、一度開封したら早めに使い切ることが大切です。とはいえ、どうしても使い切れずに残ってしまうこともあるでしょう。
残った小麦粉やミックス粉を保存する際は、ダニが入りにくい密閉容器に入れましょう。特にミックス粉はダニが繁殖しやすいので、冷蔵庫で保存するのも効果的です。
【参考情報】『小麦粉の上手な選び方・使い方・保存方法』製粉振興会
https://www.seifun.or.jp/pages/91/
5.ダニによるアレルギー疾患
ダニは、さまざまなアレルギー性疾患に関与しています。
この章では、ダニによるアレルギー疾患を紹介します。
5-1.喘息
喘息は、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで発症します。
喘息の原因には、ダニやカビなどのアレルギーによるものと、ストレスや過労などアレルギー以外のものがあります。
喘息になると、健康な人ならほとんど反応しない些細な刺激にも反応し、激しい咳や喘鳴、息苦しさなどの症状が現れます。
喘息を治療せずに放っておくと、だんだん症状がひどくなり、重症化して命にかかわることもあります。
5-2.アトピー性皮膚炎
かゆみのある発疹が現れ、症状が悪くなったり良くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。
アトピー性皮膚炎の悪化要因には、皮膚の乾燥やストレスなどさまざまなものがありますが、ダニもそのひとつです。
悪化を防ぐためには、掃除や洗濯でダニをこまめに取り除くことが大切です。
5-3.アレルギー性鼻炎
アレルギーを引き起こす物質に反応し、鼻腔の粘膜に炎症が起こる病気です。主な症状は、くしゃみや鼻水、鼻づまりです。
アレルギー性鼻炎には、1年中症状が現われる通年性と、特定の季節にだけ症状が現われる季節性がありますが、通年性は、ほとんどがダニによるものです。
◆「喘息の悪化を招く鼻炎!合併しやすい理由と治療での改善について」>>
5-4.アレルギー性結膜炎
アレルギーを引き起こす物質に反応し、目の結膜に炎症が起こる病気です。主な症状は、眼のかゆみや充血、違和感、目やに、涙の増加です。
アレルギー性鼻炎と同様に、1年中症状が現われる通年性と、特定の季節にだけ症状が現われる季節性がありますが、通年性はダニが原因となることが多いです。
【参考情報】『アレルギー性結膜炎』日本眼科学会
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=13
6.おわりに
小麦粉やミックス粉はダニのエサになることがあります。「開封したらなるべくすぐに使いきる」「残ったら密閉容器に保存する」などの方法で、できるだけダニの発生や繁殖を防ぐようにしましょう。
特にダニアレルギーの人や、喘息などのアレルギー性疾患を持つ人は注意し、食後にアナフィラキシーのような症状が出たら、重症度に応じて救急車を呼ぶか、すみやかに大きな病院を受診しましょう。