花粉症の検査方法と検査ができる診療科
特定の季節になると鼻水やくしゃみ、目のかゆみといった症状が現れるなら、花粉症によるアレルギー症状の疑いがあります。
花粉症といえば「春」というイメージがありますが、原因となる植物によっては別の季節に症状が現れることもあります。
花粉症かどうかは検査で調べることができます。また、どの植物の花粉に反応するのかも調べることができます。
この記事では、花粉症の検査の方法を詳しく解説します。検査を受けることで、自分に合った対策や治療法を見つけましょう。
目次
1. 花粉症とはどのような病気か
花粉症は、植物の花粉が原因で引き起こされるアレルギー性疾患の一つです。くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみなどの症状が特徴で、花粉が飛散する季節に悪化します。
原因となる花粉はスギやヒノキが代表的ですが、ブタクサ・ヨモギ・カモガヤなどの花粉も影響します。
花粉症は、体の免疫システムが花粉を異物と認識し、過剰に反応することで発症します。この免疫反応により、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、炎症を引き起こします。
治療には、不快な症状を和らげる対症療法と、病気に根本的に対処する根治療法があります。
2. 花粉症の検査方法
花粉症であるかどうか、また、どのような種類の花粉で症状が起きるのかを判断するための検査方法は、大きく分けると(1)血液検査(2)皮膚テスト(3)鼻・目の検査の3種類があります。
2-1.血中総IgE値測定
血中総IgE値測定は、血液中のIgE(免疫グロブリンE)抗体の総量を調べる検査です。指先から少量の血液を採取して、体内にあるIgEすべての量を調べ、アレルギーの有無や程度を調べます。
IgEは、アレルギー反応に関与する抗体の一種で、花粉症や食物アレルギー、喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に関係しています。この検査によって、体内のアレルギー反応の強さを推測することができます。
一般的に、IgEの量が多いほど、アレルギーが強いとされます。しかし、血中総IgE値が高い場合でも、必ずしもアレルギー症状が出るとは限りません。
また、アレルギー体質でもIgE値が低い人もいるため、症状や他の検査結果とあわせて総合的に診断します。
【参考情報】『IgE抗体~アレルギーを知ろう』日本アレルギー学会
https://www.jsa-pr.jp/html/knowledge.html#IgE
2-2.特異的IgE検査(RAST)
血中総IgE値測定だけでは、どのアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応しているかはわかりません。特定のアレルゲンを調べるには、特異的IgE抗体検査を行います。
花粉症の人は、花粉に対するIgE抗体がたくさん作られています。その中でも、スギ花粉で発症しやすい人はスギ花粉のIgE抗体、ヒノキ花粉で発症しやすい人はヒノキ花粉のIgE抗体がたくさん作られているなど、IgE抗体の種類や量には個人差があります。
特異的IgE検査は、IgE抗体の種類を調べ、アレルギーを引き起こす物質が何かを特定する検査です。原因となる物質がわかるだけではなく、その物質で起こるアレルギーの強さも6段階で評価されます。血中総IgE値測定と同じく、指先から少量の血液を採取して検査します。
検査には、採血から結果が分かるまで数日かかるもの、検査から約20分後に結果を聞くことができるものがあります。検査でわかる項目や料金もそれぞれ違うので、医師と相談して自分に合った検査を受けてください。
2-3.プリックテスト
皮膚テスト用の針(プリック針)を刺して、少量のアレルゲンを皮膚に入れます。約15分後、その箇所が虫刺されのように赤くなったり腫れたりしていたら、アレルギー症状を起こす可能性があると判断します。
【参考情報】『What is a skin prick test? Allergic Rhinitis (Hay Fever)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8622-allergic-rhinitis-hay-fever#:~:text=This%20blood%20test%20is%20called,allergens%20are%20causing%20your%20symptoms.
似たような検査方法として、皮膚に小さな擦り傷をつけ、少量のアレルゲンをつけて反応を見る、スクラッチテストがあります。
2-4.鼻汁好酸菌検査
鼻をかんでもらい、その鼻汁を顕微鏡で調べる検査です。鼻汁の中に、白血球の一種である好酸球という物質が増えていると、アレルギーの疑いがあります。
ハウスダストやダニなどが原因で引き起こされるアレルギーでは、1年を通して好酸球が多いのに対し、花粉症では、原因となる花粉が飛散している時期にだけ好酸球が増えます。
目がかゆいなど目の症状がある方も、同じように目の結膜の分泌液を調べる事で、アレルギーによる症状なのかどうかを調べることができます。
2-5.鼻粘膜誘発検査
鼻の粘膜に、原因と考えられる花粉エキスがしみ込んだ紙を貼り付け、どんな症状が出るかを調べる検査です。
かゆみやくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が出たら、花粉症だと判断します。
2-6.細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)
眼科で行われる検査です。細隙灯(さいげきとう)顕微鏡という医療機器で、目の表面や内部を拡大して観察し、充血や炎症の程度を確認します。
3. 花粉症の検査と治療ができる診療科
花粉症の検査は、アレルギー専門医のいる病院のほか、内科や耳鼻咽喉科、小児科など、さまざまな診療科で実施しています。
3-1.アレルギー科
アレルギー全般を専門的に扱う診療科です。血中総IgE値測定や特異的IgE検査などの検査が可能です。
花粉症だけでなく、他のアレルギー疾患も診ることができるので、特にアレルギー性疾患のある方は、総合的な治療を受けることができます。
3-2.耳鼻咽喉科
鼻水・くしゃみ・鼻づまりが主な症状の場合に適しています。花粉症と併発しやすい副鼻腔炎や中耳炎の診察・治療も可能です。
3-3.内科
内科のかかりつけ医がある人は、そちらで相談するのもいいでしょう。アレルギーの専門医がいれば、なお安心です。
持病でかかっている方は、他の病気との関連や薬の飲み合わせなども考慮してもらえます。
検査の結果、必要に応じて専門科を紹介してもらうこともできます。
3-4.眼科
目のかゆみや充血など、目の症状がひどい場合に適しています。
細隙灯顕微鏡検査で目のアレルギー反応を調べたり、目の症状を和らげる点眼薬や眼瞼クリームを処方してもらうことができます。
3-5.皮膚科
花粉症との関連が強いアトピー性皮膚炎で皮膚科に通っている人や、花粉による湿疹、かゆみ、肌荒れがひどい人は、皮膚科で相談することもできます。
角質を保護するスキンケアの方法を教わったり、塗り薬を処方してもらうことが期待できます。
3-6.小児科
お子さんは、小児科を受診してもいいでしょう。子どもの年齢に応じた診察を受けることができます。
4. 検査で花粉症だとわかったら
まずは、できるだけ花粉に触れないようにしましょう。外出を控える、マスクやメガネを着用する、空気清浄器を利用するなど、なるべく花粉が体に入らないよう、適切な対策を施しましょう。
疲労やストレス、睡眠不足も、症状を悪化させる要因となります。栄養バランスの良い食事や適度な休息を心掛け、できるだけ規則正しい生活を送りましょう。
病院での治療としては、症状を抑えることが目的の治療(対症療法)と、症状の原因そのものをなくしていくための治療(根治療法)があります。症状を和らげるには、花粉が飛び始める前から薬を服用するのが有効です。
検査の結果、花粉以外の物質が原因でアレルギー症状を起こしていると判断されるかもしれません。また、アレルギーとは別の原因で症状が出ていると診断される場合もあります。そのような時は、適切な対処法や治療法を医師に確認してください。
5. おわりに
当院でも、花粉症をはじめとするアレルギーの検査を行っています。
特定の季節になると症状が出る方はもちろん、花粉症のような症状が長く続いているなど、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
【参考文献】『あなたの知らない 花粉症の治し方』大久保公裕/暮しの手帖社