アレルギーの原因・種類・検査・治療の基本情報
・何かのきっかけで咳が出て止まらなくなる
・肌が乾燥するとかゆくなる
・特定の食べ物を口にするとじんましんが出る
・花粉の季節になるとくしゃみが出る
このような症状がある人は、アレルギー疾患の疑いがあります。
この記事では、アレルギーの原因や病気との関係について説明します。思い当たる方は、アレルギーの基本をおさえておきましょう。
目次
1.アレルギーの原因は何か?
人間の体には、細菌やウイルス、寄生虫などの異物などから身を守るため「免疫」という仕組みが備わっています。「ウイルスから身を守るためには免疫力を上げることが大切」といわれるのはこのためです。
この免疫の働きが、環境やライフサイクルの変化などが引き金となって過剰になり、体に害のないものまで攻撃してしまうと、くしゃみ、発疹、咳などの症状が起こります。これを、アレルギー反応といいます。
【参考情報】『アレルギーについて』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/allergy/about_allergy.html
2.アレルギーによる病気の種類
アレルギーが原因となって起こる病気はたくさんあるのですが、特に多いのは「喘息」「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」「花粉症」です。
2−1.喘息
喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的に炎症を起こすことで、激しい咳が出たり、呼吸が苦しくなる病気です。
喘息は、アレルギーが原因のものと、過労やストレスなどアレルギー以外の原因によるものがあります。子どもの喘息はアレルギー、大人の喘息はアレルギー以外の原因によるものが多いです。
アレルギーが原因の喘息は、ダニやホコリ、カビなど特定の物質を吸い込むと、それらを有害な異物と認識して排除しようとする免疫の仕組みがはたらくことで症状が現れます。
◆「ソファで喘息が悪化?適切なソファの選び方とお手入れ方法」>>
2−2.アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が慢性的に出る病気です。症状は良くなったり悪くなったりを繰り返します。
原因はまだ十分にわかってはいませんが、外部の刺激から身を守る皮膚のバリア機能が弱っている状態で、アレルギーを引き起こす食べ物やダニなどが体の中に侵入すると、発症しやすくなると考えられています。
◆「アレルギー専門医がすすめるアトピー性皮膚炎改善の方法」>>
2−3.食物アレルギー
食物アレルギーとは、特定の食べ物を口にすると、じんましん、咳、下痢、唇の腫れなどの症状が引き起こされる反応です。
食物アレルギーは、食べ物の中に含まれているタンパク質が、免疫のシステムの誤作動で異物と認識されることで起こります。原因となる主な食べ物は卵、乳、小麦ですが、魚介類や果物、ナッツで起こる人もいます。
2−4.花粉症
花粉症とは、植物の花粉が鼻や目の粘膜に触れることで、くしゃみ、鼻水、目のかゆみ等のアレルギー症状が発生する病気です。
原因となる主な植物はスギやヒノキですが、ヨモギ、ブタクサ、カモガヤなどの植物で引き起こされることもあります。
2−5.その他
その他、ニッケルやコバルトなどの金属に触れると皮膚炎を起こす金属アレルギー、血液中のタンパク質が薬と結合して起こる薬物アレルギー、ペットの毛やフンによって起こるペットアレルギーなどがあります。
【参考情報】『薬物アレルギーとは』中外製薬株式会社
https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/body/body005.html
3.アレルギーの検査
アレルギーの有無や程度、種類を調べるには、主に血液検査を行います。
3−1.血液検査
血液検査では、主に以下の内容をチェックします。
・血中総IgE値:アレルギーになりやすい体質かどうかを調べる
・好酸球数:アレルギーがあるかどうかを調べる
・抗原特異的IgE抗体:アレルギーの原因になる物質を突き止める
アトピー性皮膚炎の患者さんは、重症度や治療の効果を確認するために、血液検査でTARCという値を調べることがあります。
【参考情報】『お役立ちコラム①(IgEとIgG)』東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/article/column01.html
3−2.その他の検査
血液検査のほかに、以下の検査を行うこともあります。
・皮膚テスト:皮膚に針を刺し、アレルギーの原因と疑われる物質を注入
・食物経口負荷試験:診療体制が整った病院で、疑わしい物質を食べてみる
・鼻粘膜誘発テスト:鼻の粘膜に花粉エキス入りの紙を貼り付けてみる
また、喘息の疑いがあるときは呼吸器の検査を行うなど、ほかにも症状を診ながら検査を組み合わせていきます。
4.アレルギーの治療
アレルギーによる病気は、残念ながら完治が難しいのですが、原因となる物質を避ける工夫をしながら治療を続けることで、症状が出ない体質に改善していきます。
4−1.喘息の治療
喘息の薬物治療は、気道の炎症をコントロールして発作を防ぐ薬を中心に行います。服薬とともに、感染症の予防や生活環境の見直しで悪化を防ぎます。
4−2.アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の薬物治療は、ステロイドを配合した塗り薬を中心に、抗ヒスタミン薬などの飲み薬を組み合わせていきます。併せて、皮膚の清潔やうるおいを保つスキンケアを続けます。
4−3.食物アレルギーの治療
アレルギーの原因となる食べ物を避けることが基本ですが、原因となる食べ物を必要最低限の量だけ続けて食べて、徐々に増やしていくことで体を慣らしていく「経口免疫療法」を実施している医療機関もあります。
【参考情報】『The Current State of Oral Immunotherapy』American Academy of Allergy、Asthma&Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/conditions-library/allergies/the-current-state-of-oral-immunotherapy
4−4.花粉症の治療
花粉症の治療には、鼻水や鼻づまりなどの症状を一時的に抑えるために飲み薬や点鼻薬を使う「対症療法」と、原因となる花粉を少しずつ体の中に取り入れ、徐々に体を慣らしていくことで症状が出ない体質に変えていく「アレルゲン免疫療法」があります。
5.アレルギーの予防
ダニやホコリでアレルギーの症状が出る人は、なるべくこまめに部屋を掃除して悪化を防ぎます。また、花粉症の症状がある人は、外出時は眼鏡やマスクを着けて、口や鼻から侵入する花粉の量を減らしましょう。
また近年、アレルギー性疾患の発症には、腸内環境が深くかかわっていることが徐々に明らかになってきました。腸内環境を整えるには、野菜や魚、発酵食品が豊富な昔ながらの和食を食卓に取り入れることに加え、ごはんやパン、麺類などの主食を食べ過ぎないことが大事です。
◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>
6.おわりに
アレルギーになりやすい体質を持っている人は、アトピー性皮膚炎が良くなったと思ったら今度は喘息に悩まされるなど、形を変えて次々と症状が出る恐れがあります。
症状に気づいたら、早めに原因を突き止めて治療を開始するとともに、食事や睡眠、運動といった基本的な生活習慣を整えて、免疫力を維持しましょう。