腸内環境を整えて免疫力をアップさせる食事の基礎知識
腸は「第2の脳」とも言われ、食べ物を消化するだけではなく、アレルギーや肥満など、全身の健康と深くかかわっていることが明らかになっています。
特に最近は、体内に入ったウイルスや細菌、異物などから体を守るシステムである「免疫」をコントロールする力に注目が集まっています。
目次
1.腸内環境と免疫力の関係
私たち人間の腸には1000種類、100兆以上の細菌が、人間が食べたものをエサにして生きています。このバラエティー豊かな細菌たちの群れは、電子顕微鏡で見るとまるでお花畑(フローラ)のように見えるので「腸内フローラ」といいます。
腸内に棲みついている細菌たちはお互いに影響を及ぼし、複雑なバランスを保ちながら共に生きています。そして、この細菌たちのバランスこそが、免疫力を左右するカギを握っているのです。
腸内の細菌は、善玉菌、悪玉菌、そして腸内の環境によって善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見(ひよりみ)菌の3種類に分けられます。腸内の善玉菌が優勢だと、体のあらゆる機能を健康な状態に保ってくれますが、悪玉菌が優勢だと免疫力がダウンして、生活習慣病やアレルギー性疾患が発症しやすくなります。
つまり、心身の健康を保つには、善玉菌を増やして悪玉菌の力を抑え、腸内環境を整えて免疫力をアップすることが重要なのです。
【参考情報】『The role of gut microbiota in immune homeostasis and autoimmunity』National Library of Medicine
2.65才を過ぎると、ビフィズス菌がゼロになる人も
善玉菌の一種であるビフィズス菌ですが、残念なことに老年期(65歳以上)になると、10人のうち3人の腸内にはビフィズス菌がまったく見られなくなるといわれています。
人間の腸内環境は、胎児のときは無菌状態ですが、生まれてから母乳を飲み始めると、生後1週間で90%以上がビフィズス菌で占められるようになります。その後、離乳食を食べるようになるとほかの菌も徐々に増えていき、大人と同じような腸内環境になります。この段階で、ビフィズス菌は腸内細菌全体の20%程度まで減少し、成年期から老年期になるにしたがって、さらにビフィズス菌は減少していきます。
善玉菌が減って悪玉菌が優勢になると、腸内環境が悪化して、アンモニアなどの有害物質や発がん性物質が増え、それらの有害物質、血液によって全身に運ばれていきます。すると、肌荒れや口臭、免疫力の低下、生活習慣病の原因となるほか、自律神経の乱れや食欲不振など、さまざまな不調が生じてきます。
高齢になるほど健康面で問題を抱える人が増えるのは、ビフィズス菌をはじめとした善玉菌の減少により、腸内環境が悪化することも理由のひとつと考えられます。
【参考情報】『日本人における加齢に伴う腸内細菌叢の変化を確認』森永乳業
https://www.morinagamilk.co.jp/assets/release/17758.pdf
3.腸内環境に良い食事とは?
腸内環境は、食生活や生活環境の変化、ストレスによって大きく変化します。
3−1.善玉菌を増やす食品
善玉菌は、食物繊維やオリゴ糖、納豆などの発酵食品をエサにして増えていきます。
特に食物繊維には、便のカサを増して腸のぜん動運動を促すはたらきがあるので、不足すると便を押し出すために必要な腸のぜん動運動が弱くなったり、便が硬くなって出にくくなったりして、便秘を引き起こすことがあります。
現代人の食生活は食物繊維が不足気味だと言われているので、意識して食べることが大切です。
発酵食品であれば、ぬか漬けやキムチ、納豆、味噌、塩麹などがおすすめです。また、オリゴ糖は大豆やタマネギ、ニンニクなどに多く含まれています。
3−2.悪玉菌を増やす食品
一方、悪玉菌は糖質、脂質が大好物です。主食である麺類・パン・ご飯などの炭水化物も糖質なので、食べ過ぎると悪玉菌が増殖する原因となります。
腸内に悪玉菌がたくさんいる状態のままにしておくと、腸に穴が開く「腸もれ」を起こすことがあり、ウイルス感染だけでなく、生活習慣病やうつ病を引き起こすリスクが高くなります。
腸もれを改善し腸内環境を整えるためには、糖質類はできるだけ減らしていきましょう。
また、「乳酸菌生産物質」をサプリメントで摂ると、もともと自分の体内にある乳酸菌を効率よく増やすことができるため便利です。
4.ヨーグルトは善玉菌を増やすのか?
乳酸菌というと、真っ先にヨーグルトなどの乳製品を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。特に健康に関心のある方は、毎日ヨーグルトを食べているという人も多いでしょう。
しかしながら、乳製品で腸内環境を改善することは、難しいのが現実です。
私たちの腸内には、長い時間をかけて形成された腸内フローラの複雑なバランスがあります。そこへ新しい乳酸菌が入ってきても、簡単には受け入れられない土壌ができているのです。そのため、生きた乳酸菌が腸まで届いたとしても、ほとんどは便と一緒に排出されてしまいます。
さらに、人によっては乳製品に含まれる「カゼイン」というたんぱく質が体質に合わず、ヨーグルトを食べるとかえって腸内環境が荒れてしまったり、アレルギーの原因となることもあるので注意が必要です。
【参考情報】『牛乳・乳製品|原因別アナフィラキシー|食物アレルギー』アナフィラキシーってなあに.jp
https://allergy72.jp/cause/food/allergen/milk.html
また、乳製品には脂肪分や糖質が多く含まれています。そのため、健康のためにと思って毎日食べるのはおすすめしません。
5.おわりに
腸内環境のバランスが乱れている人も、善玉菌のエサとなる食材を積極的に取り入れることで、弱った免疫力を整えることができます。
喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患に悩む人はもちろん、便秘がちな人や、いつまでも元気で健康な生活を送りたい人も、ぜひ今日から善玉菌が喜ぶ食事を増やしてみてください。