ビタミンCのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき
ビタミンCには、「活性酸素を無害化する」「日焼けを防ぐ」「ストレスや病気への抵抗力を高める」などさまざまな性質があります。
しかし、アレルギーを改善する役割については、あまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では、ビタミンCのおもな特徴と、アレルギー性疾患を改善するはたらきについてまとめました。ビタミンCを効率よく摂取する方法も紹介しますので、病気の予防や症状の緩和にぜひ役立ててください。
1.ビタミンCとはどのような栄養素か
ビタミンCは、かつて船乗りたちに恐れられた病気・壊血病(かいけつびょう)を予防する栄養素として有名になりました。
【参考情報】『壊血病』日本血栓止血学会
https://www.jsth.org/glossary_detail/?id=288
大航海時代の船乗りたちの多くは、冷蔵庫などの保管設備がない船中で長く過ごす中、新鮮な野菜や果物を摂取することができなかったことで、壊血病を発症していました。
壊血病とは、ビタミンCの不足により、血管がもろくなりやすくなったり、コラーゲンというたんぱく質がうまく作られなくなったりすることで、あざができる・皮膚や粘膜、歯肉からの出血・歯が抜ける・貧血・皮膚や毛髪の乾燥などの症状が出る病気です。
また、ビタミンCはライナス・ポーリング博士による、風邪に対するビタミンCの効果の研究によって、一般にも広く知られるようになりました。
犬や牛などの動物は、体内でビタミンCをつくることができます。しかし、人間はつくることができないため、健康のため必ず食事やサプリメントから摂る必要があります。
ビタミンCは水に溶け、血液や目の水晶体など体の水溶性の部分でサビをとってくれるほか、美肌のもと・骨の材料となる、コラーゲンをつくるためにも必須です。また、ビタミンCの点滴によるがん治療への応用も始まっています。
ビタミンCのはたらきと摂取により期待できる効果は、以下の通りです。
- コラーゲンをつくる
- 毛細血管を丈夫にする
- 風邪などの感染症にかかりにくくする
- がん予防、抗がん剤副作用の軽減
- ストレスに対応する
- 酵素の働きを助ける
- 肝臓の解毒作用がアップ
- メラニン色素の産生をストップし、シミやそばかすを防ぐ
- 鉄の吸収を助ける
- 骨を丈夫にし、骨粗しょう症や骨折を防ぐ
- アレルギー症状の改善
2.ビタミンCはなぜアレルギー疾患の改善に必要なのか
ビタミンCが不足すると、なぜアレルギー性疾患が悪化しやすくなるのでしょうか。そのメカニズムを説明するにあたって、まずはビタミンCとストレスの関係から解説します。
ストレスを感じると、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。この時、コルチゾールをつくるためにビタミンCが必要になります。
【参考情報】『Cortisol』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22187-cortisol
ストレスを感じる状態が長く続くほど、多くのコルチゾールが必要になるので、その分、体内のビタミンCも大量に消費されます。
【参考情報】『Vitamin C: an essential “stress hormone” during sepsis』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7024758/
また、ストレスが長期間にわたって続くと、コルチゾールの分泌が徐々に減ってしまうことがあり、この状態を「副腎疲労」といいます。
コルチゾールにはアレルギーの炎症を抑える働きもあるため、分泌が不足してしまうと、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患の悪化につながってしまいます。
つまり、なるべくストレスを避けてビタミンCを十分に摂取することで、体内で分泌されるコルチゾールが減らない状態を維持することができ、その結果、アレルギーの症状を抑えることができるのです。
ビタミンCには、細胞の酸化・老化の原因になる活性酸素を消去する抗酸化作用もあります。喫煙や飲酒、過度な運動、紫外線を浴びる機会の多い人は活性酸素が増えやすく、その分、ビタミンCが多く消費されます。
たとえば、タバコ1本を吸うごとに失われるビタミンCは、25mg以上といわれています。ストレスを受けやすかったり、喫煙習慣がある方は、特に意識してビタミンCを摂る必要があります。
3.ビタミンCを効率よく摂取する方法
ビタミンCは、必要量の個人差がとても大きい栄養素です。どのぐらいの摂取量が最適かは、発熱や炎症の有無、ストレスの強さなどの影響で大きく異なります。
推奨されるビタミンCの1日の摂取量は、成人では100mgとされていますが、栄養療法としてビタミンCを摂取して効果を得るには1000mg以上は必要です。
過剰摂取によるリスクは通常心配ないのですが、腎機能に問題がある人は、薬やサプリメントで大量に摂ると腎結石のリスクが高まることがあるので医師に相談してください。
【参考情報】『腎疾患とビタミンC』日本ビタミン学会
https://www.vitamin-society.jp/wp-content/uploads/2023/03/c9b1033fd43db1f691b830321fbc8c4f.pdf
3−1.食事で摂取する
ビタミンCを多く含む食品は、果物ではレモン、イチゴ、キウイ、柿。野菜では赤ピーマン、ブロッコリーです。ただ、果物には糖質も多く含まれているので、野菜から摂る方がよいでしょう。
ビタミンCは水に溶けやすい性質を持っているため、煮汁ごと食べられるスープやポトフにして食べるか、蒸して食べるのがおすすめです。
◆ビタミンC含有量
出典:文部科学省 食品成分データベース (https://fooddb.mext.go.jp/)
◆「アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係」>>
3−2.サプリメントで摂取する
ビタミンCは水溶性なので、摂取後数時間でほとんどが尿として流れ出てしまい、血中濃度が下がってしまいます。ですから、少量を数時間おきに摂るのが理想です。
しかし、一日に何度も野菜や果物を食べるのはなかなか大変なので、手軽に摂取できるサプリメントを利用するのも有効であるといえます。
信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。
GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
4.おわりに
ビタミンCが不足すると、病気に対する抵抗力が下がって風邪などの感染症にかかりやすくなったり、肌のハリやツヤが失われてしまいます。また、副腎が弱ることで、アレルギーの症状が出やすくなります。
「風邪をひきやすい」「ストレスが強い」「歯ぐきから血が出る」など、ビタミンCが不足しているサインに気づいたら、ビタミンCが豊富な食材を増やしたり、サプリメントを摂取して体調を整えてください。
自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。