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ビタミンB群で、脳と体のエネルギー不足を解消

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年10月18日

ビタミンB群はエネルギーの代謝に深くかかわる栄養素なので、十分な量を摂取しないと、疲れやすくなってしまいます。

また、ドーパミンやノルアドレナリンなど、脳の神経伝達物質を産み出すはたらきにもかかわっているため、足りなくなると集中力が続かなくなったり、イライラしやすくなります。

1.ビタミンB群は、8種類の栄養素の複合体

ビタミンB

ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンの8種類の栄養素をまとめた呼び名です。それぞれのはたらきを見てみましょう。

1−1.ビタミンB1

ビタミンB1は、ご飯やパンなどの主食や砂糖などに含まれる糖が、エネルギーとなる過程で必要な栄養素です。豚ヒレ肉や豚モモ肉、うなぎ、大豆、落花生などに多く含まれています。

ビタミンB1が不足すると、糖質を摂取してもエネルギーに変えることができません。すると、乳酸などの疲労物質がたまり、疲れやすくなります。また、脳の神経細胞はブドウ糖をエネルギー源にしているため、ブドウ糖をエネルギーに変える際も、たくさんのビタミンB1が消費されます。

1−2.ビタミンB2

ビタミンB2は、主に脂質の代謝に使われるほか、皮膚や粘膜、髪、爪の健康を維持するのに欠かせない栄養素です。また、老化の原因となる過酸化脂質が体内でできるのを防ぐはたらきがあります。豚レバー、卵、納豆などに多く含まれています。

ビタミンB2が不足すると、皮膚や粘膜が敏感になるため、肌荒れや口内炎を起こしやすくなります。また、アウトドアのレジャーやスポーツ、農作業などで、長時間紫外線にさらされた時も、日に焼けた皮膚の修復のため、ビタミンB2が必要です。

1−3.ビタミンB6

ビタミンB6は、肉や魚などに含まれるたんぱく質がエネルギーになる時に必要な栄養素で、筋肉や血液がつくられる仕組みにかかわっています。かつお、まぐろ、鮭、さんまなどに多く含まれています。

ビタミンB6は腸内細菌によってもつくられています。そのため、抗生物質を長期間飲んでいる人は、抗生物質が腸内細菌のバランスを乱すため、不足することがあります。また、ビタミンB6を摂ることで、生理前のイライラなどのPMS(月経前症候群)や、妊婦のつわりが軽減するという報告もあります。

【参考情報】『Is Vitamin B6 Beneficial in Treating PMS?』American Family Physician
https://www.aafp.org/pubs/afp/issues/2000/1015/p1912a.html#:~:text=One%20of%20the%20numerous%20treatments,depressive%20state%20and%20overall%20symptoms.

1−4.ビタミンB12

ビタミンB12は、血液の生成をサポートしたり、神経の機能を維持するはたらきを持っています。レバーや牡蠣(かき)など動物性の食品に含まれているほか、海苔(のり)にも多く含まれています。

ビタミンB12が不足すると、貧血を起こしたり、しびれやめまいなどの症状が現れることがあります。動物性食品に多く含まれるので、ベジタリアンの人や野菜中心の食生活をしている人は、不足しがちです。

1−5.ナイアシン

ナイアシンは、糖質、たんぱく質、脂質の代謝にかかわり、エネルギーを産み出す際に必要な栄養素です。肉や魚などの食品から摂取できるほか、体内でも必須アミノ酸のトリプトファンから合成されるという特徴があります。豚レバー、鶏レバー、たらこ、かつおなどに多く含まれています。

ナイアシンが不足すると、皮膚の乾燥や発疹が起こりやすくなります。また、アルコールの代謝にもかかわっているので、お酒をよく飲む人は不足することがあります。

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1−6.パントテン酸

パントテン酸は、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助ける栄養素です。また、ストレスに対応する副腎皮質ホルモンの合成や、皮膚や粘膜の健康にもかかわっています。豚レバー、納豆、鮭、いわし、卵などに豊富に含まれています。

パントテン酸は多くの食品に含まれるので、あまり不足することはないのですが、カフェインやアルコールを摂取すると消費されるため、コーヒーやお酒が好きな人は不足することがあります。

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1−7.葉酸

葉酸は、赤血球の合成のほか、細胞分裂やDNAの形成に必要な核酸の合成にかかわっている栄養素です。レバーや菜の花、枝豆、モロヘイヤに多く含まれています。

葉酸が不足すると赤血球ができにくくなるため、貧血を起こしやすくなります。また、妊娠初期に葉酸の摂取が不足すると、胎児が二分脊椎などの神経管閉鎖障害になる恐れがあります。厚生労働省では妊娠初期の女性に対して、サプリなどの栄養補助食品から1日400μgの葉酸を摂取するよう通知しています。

【参考情報】『葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

1−8.ビオチン

ビオチンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を助ける栄養素です。皮膚や粘膜、爪や髪の健康に深く関わっているため、皮膚炎や抜け毛、白髪を予防する効果が期待され、アトピー性皮膚炎の治療にも用いられています。レバーやあさり、落花生などに多く含まれています。

ビオチンは多くの食物に含まれ、また、腸内でも合成されるので、不足することはほとんどないのですが、長期間抗生物質を服用している人は不足することがあります。ビオチンが不足すると、肌荒れや脱毛などの皮膚症状や、食欲不振、うつなどの症状が現れることがあります。

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2.日本人はビタミンB群が不足している


このように重要なはたらきをしているビタミンB群ですが、現代の食生活では不足しやすい栄養素のひとつといわれています。平成29年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査」の結果では、ビタミンB1、B2、B6の摂取量が、すべての年代で推奨量を満たしていないことが明らかになりました。

ビタミンB群が不足してしまう理由としては、以下のようなことが考えられます。

・白米やパン、麺類などの主食や、甘いものをたくさん食べる
・強いストレスを受けている
・お酒をたくさん飲む
・激しいスポーツをしている
・妊娠や授乳で赤ちゃんの分も必要になっている

ビタミンB群が不足すると、食べた物の栄養素がうまくエネルギーに変えられず、代謝が悪くなります。すると、筋肉の疲れを感じやすくなり、肩こりなどの症状が現れます。

3.なぜビタミンB群が不足すると、脳が疲れるのか

やる気が出ない

「仕事が忙しすぎる」「心配ごとが多い」など、ストレスを抱えた毎日を送っていると、脳の神経伝達物質がたくさん消費されます。その結果、脳の神経伝達物質が不足して、脳のはたらきのバランスが崩れてきます。

脳の神経伝達物質には次のようなものがあります。

・GABA(気持ちをおだやかにする)
・ドーパミン(気持ちよさ、心地よさ)
・ノルアドレナリン(やる気、元気)
・セロトニン(幸福感)
・メラトニン(睡眠調節)

ビタミンB群は、これら脳の神経伝達物質の合成にかかわっているため、足りなくなると脳が疲れてしまうのです。

・やる気がでない
・集中力が続かない
・仕事中に眠くなってしまう
・ちょっとした事でもイライラする

このような時は、ビタミンB群が不足している可能性があります。

4.ビタミンB群を効率的に摂取するには

鍋
ビタミンB群を効率よく摂るには、調理法とサプリメントの選び方が重要なポイントとなります。

4−1.食事のポイント

ビタミンB群は水に溶ける性質を持っているため、食材をゆでたり水にさらしたりすると、調理の途中で溶け出してしまいます。

ビタミンB群の豊富な食材は、生で食べたり、サッと焼いて食べるほか、鍋やスープ、シチューなど、汁ごと食べるメニューにすると、溶けだした分も摂取できて効率的です。

4−2.サプリメントの選び方

ビタミンB群はお互い助け合いながらはたらいているため、どれかひとつだけでは効果を発揮しにくいという特徴があります。そのため、サプリメントなどで8種類をまとめて一緒に摂取すると効率的です。

サプリメントを選ぶときは、なるべく原料が天然のものを選びましょう。天然の原料は化学的に合成された原料より自然な食材に近いため、より高い効果が期待できます。また、含まれている栄養素の量が極端に少ないもの、余分な添加物の多いものは避けましょう。

信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめるとよいでしょう。GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。

5.おわりに

「寝ても疲れがとれない」「肩こりが治らない」「何をするのもおっくう」などの悩みがある人は、ビタミンB群が不足している恐れがあります。

やる気がでないというような脳の疲れ、肩こりや筋肉痛のような筋肉の疲れが長引いている人は、ぜひビタミンB群が豊富な食材やサプリメントを摂取してみてください。

自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。

◆「栄養カウンセリング」について>>

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