女性の悩みの多くは「鉄不足」が原因です
女性は毎月の生理があるため、男性に比べると鉄が不足しがちです。
鉄が不足すると、頭痛やめまい、手足の冷え、肌の乾燥などが起こりますが、自覚症状がなく「なんとなく疲れやすい」と感じている人も多いようです。
鉄はアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症などのアレルギー疾患を起こしやすい体質を改善するためにも必要な栄養素です、特に子どもの皮膚のトラブルは、鉄不足が一因となっていることがあります。
この記事では、鉄という栄養素のおもな特徴と、不足したときに起こりえる症状を紹介します。鉄を効率よく摂取する方法も紹介しますので、病気の予防や悩みの解消にぜひ役立ててください。
1.鉄とはどのような栄養素か
鉄は、血液の成分である赤血球をつくるために必要な栄養素です。赤血球は体のすみずみまで酸素を運び、運ばれた酸素は、私たちが生きていくために必要なエネルギーの燃料となります。
鉄が不足すると、質の良い赤血球をつくることができなくなり、体内に酸素が十分に行き渡らなくなります。すると、酸素が末端まで十分に届かないため手足が冷えたり、酸素を体内に届けようとして血管が激しく伸びちぢみすることで、頭痛が起こるのです。
2.鉄不足で皮膚のトラブルが起こる理由
鉄が不足すると、皮膚の構造の内側にある皮下組織に、十分な酸素が行き渡らなくなります。すると、皮膚の新陳代謝がスムーズにできなくなり、健康な皮膚がつくられなくなります。
そのため、乾燥肌やしもやけなど皮膚のトラブルが起こったり、アトピー性皮膚炎の引き金となるのです。
鉄は、皮膚のうるおいに必要なコラーゲンにも関係のある栄養素です。コラーゲンの合成には十分な酸素が必要で、その際、鉄とビタミンCが使われます。
◆「ビタミンCのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき」>>
コラーゲンは皮膚だけでなく、髪や目、筋肉、骨など体のあらゆる部分に含まれているので、コラーゲンが不足すると、抜け毛や筋力の低下、骨粗しょう症などが起こりやすくなります。
また、肌のシミは紫外線を浴びると発生する「活性酸素」が原因でできるのですが、活性酸素は、鉄から作られる「カタラーゼ」という抗酸化酵素によって無害化されます。つまり、鉄を十分に摂っていれば、シミやくすみも改善できるというワケです。
【参考情報】『活性酸素と酸化ストレス』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-04-003.html
3.鉄は子どもの健康と成長に欠かせない
鉄は子どもの成長、特に脳の成長に欠かせない栄養素です。
脳内の神経伝達物質が作られる際には鉄が必須なので、鉄が不足すると脳の情報伝達がうまくいかなくなり、脳細胞の機能が低下する恐れがあります。
特に、2歳以下の子どもで鉄が不足した状態が3カ月以上続くと、発達に影響が出るといわれています。
【参考情報】『小児と思春期の鉄欠乏性貧血』加藤陽子|日本内科学会雑誌 第99巻 第6号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/99/6/99_1201/_pdf
鉄が不足して、脳を含めた全身への血流が悪くなると、喘息などのアレルギー疾患にかかる可能性も高くなります。ほかにも「朝起きられない」「疲れやすい」「授業に集中できない」などの症状が現れることがあります。
部活などでスポーツに打ち込んでいるお子さんは、激しい運動をすることで起こる「スポーツ貧血」にも注意が必要です。
妊娠中、授乳中の母親が鉄不足だとお子さんも鉄不足になります。妊娠がわかったら鉄を多く含む食材を取り入れたり、鉄が効率よく摂取できるメニューを増やしましょう。
4.鉄を効率よく摂取する方法
鉄不足を改善するためには毎日の食事が大切なので、鉄が効率よく摂れる食材や食べ方を紹介します。
4-1.食事のポイント
食事で効率よく鉄を摂取するためのポイントは、「ヘム鉄」の多い食材を選ぶことです。
食品に含まれている鉄には、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。
ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄は、ほうれん草やプルーンなどの植物性食品に含まれています。
ヘム鉄が体内で吸収される率は10~20%ですが、非ヘム鉄は5%以下と大きな差があります。なので、鉄をたくさん補給したい人は、ヘム鉄が豊富な肉や魚を意識して食べましょう。レバーのほか、牛肉、あさり、かつお、ぶり、まぐろにもヘム鉄が豊富に含まれています。
野菜に含まれるビタミンCは、非ヘム鉄の吸収を高める効果があります。例えば、料理にレモンをしぼってかけたり、非ヘム鉄を含む食材をたっぷりの野菜と一緒に調理することで、鉄の吸収率を高めることができます。
また、赤血球の中に含まれるヘモグロビンの材料となるタンパク質を、一緒に摂るのもおすすめです。
4-2.サプリメントの選び方
成人女性が1日に摂取しておきたい鉄分の量は10.5mgとされていますが、この量を食品で摂る場合、およそ以下のようになります。
・納豆: 10パック
・ほうれん草のおひたし: 10皿(1皿100g)
・牛ステーキ: 5皿(ヒレ・赤身1皿100g)
・かつお: 5皿(春獲り1皿100g)
これだけの量を食事だけで摂取するのは、なかなか大変です。そんな時は、サプリメントで鉄を補給するのもよいでしょう。
病院で「鉄欠乏性貧血」と診断されると鉄剤が処方されますが、その鉄剤は非ヘム鉄であるため吸収率が低く、胃のむかつきや便秘が起きやすくなります。
また、吸収されなかった非ヘム鉄が腸内に多く残っていると、腸内の悪玉菌が鉄を奪って繁殖し、腸内環境が悪化することがあります。すると、腸の粘膜が傷ついて炎症を起こし、アレルギーが起こることにもなりかねません。
【参考情報】『Iron Supplementation Influence on the Gut Microbiota and Probiotic Intake Effect in Iron Deficiency—A Literature-Based Review』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7400826/
病院で鉄欠乏性貧血と診断された人は、食事療法だけではよくならないので、医師の指示通りに鉄剤を服用してください。しかし、貧血を予防したい人は非ヘム鉄ではなく、ヘム鉄のサプリメントを選ぶことをおすすめします。
信頼できる製品を選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
5.おわりに
「朝起きるのがつらい」「体が冷える」「肌が乾燥しやすい」などの悩みがあるときは、鉄が不足している恐れがあります。
加えて頭痛やめまい、胸の痛みなどの症状がある人や、目の下のクマが目立つ人、そして妊娠や授乳で、お子さんの分も鉄が必要な女性は、ぜひヘム鉄が豊富な食材やサプリメントを摂取して、美と健康を守ってください。
自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。