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糖尿病と遺伝の関係|発症を防ぐためにできること

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年09月19日

糖尿病には1型と2型がありますが、2型糖尿病の発症には、食生活や運動不足といった生活習慣のほか、遺伝的な要素も関与していると考えられています。

そのため、もし親や祖父母などの血縁者に2型糖尿病の患者がいれば、発症のリスクは高くなります。

この記事では、糖尿病と遺伝の関係についてくわしく解説します。糖尿病の発症を予防する方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

1.糖尿病とはどのような病気か


糖尿病は、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンが不足したり、十分に働かないことで、血糖値が高い状態が続いてしまう病気です。

<診断基準>
空腹時の血糖値が126mg/dL以上
または食後2時間後の血糖値が200mg/dL以上

糖尿病には、1型と2型があります。

1型糖尿病は、インスリンが分泌されなくなるため、血糖値を下げることができなくなる病気です。

1型の原因はまだ明確ではありませんが、ウイルスや細菌などの異物から身を守る免疫の仕組みが、インスリンを分泌するすい臓の細胞を攻撃してしまう異常によるものだと考えられています。

【参考情報】『Type 1 diabetes』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/genetics/condition/type-1-diabetes/

2型糖尿病は、インスリンの分泌が不足したり、インスリンがうまく働かなかったりすることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。

主な原因としては、食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が挙げられますが、遺伝も関与していることがあります。

糖尿病は完治が難しい病気ではありますが、食事や運動、治療により血糖値をコントロールしていけば、病気の進行を防ぐことはできます。

反対に、放っておくと、心臓病や脳卒中、神経障害などさまざまな合併症が引き起こされる恐れがあります。

◆「糖尿病」についてもっとくわしく>>

2.糖尿病は遺伝するのか

糖尿病のうち、特に2型は遺伝が関与して発症することがあります。

以下、糖尿病と遺伝の関係について説明します。

2-1.1型糖尿病の遺伝

1型は、通常、遺伝することはないと考えられていますが、親またはきょうだいに1型糖尿病の人がいれば、発症するリスクがわずかに高くなります。

1型糖尿病を発症した人は、病気のリスクを高める特定の遺伝子を持っています。そのため、これらの遺伝子が親から子へと遺伝することはあります。

しかし、病気のリスクを高める遺伝子を受け継いだからといって、必ずしも1型糖尿病になるわけではありません。

【参考情報】『Type 1 diabetes』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/type-1-diabetes/symptoms-causes/syc-20353011

2-2. 2型糖尿病の遺伝

2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が大きく影響する病気です。しかし、甘いものをたくさん食べても、肥満体型になっても、糖尿病にならない人もいます。

2型の発症は、遺伝の影響も大きいと考えられています。研究によると、2型糖尿病患者のきょうだいは2~3倍発症リスクが高く、両親ともに2型糖尿病の子どもの発症リスクは3~4倍に高くなることがわかっています。

【参考情報】『2型糖尿病』日本内分泌学会
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=93

とはいえ、両親ともに糖尿病だからといって、必ずしも子どもが糖尿病になるとは限りません。

3.糖尿病の予防

俗に「糖尿病家系」といわれる体質を受け継いだ人でも、糖尿病を予防することはできます。

この病気の発症には、生活環境も大きく関係しているので、遺伝のリスクを踏まえつつ、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。

3-1.食事の注意点

食生活の乱れは血糖値に影響するため、日頃から適切な量の食事を、規則正しく食べることが基本となります。

◆「食事のポイント」についてもっとくわしく>>

その上で、糖尿病の予防に有効とされる食品を摂取するのもいいでしょう。

例えば、糖尿病の予防にはコーヒーが有効という研究報告があります。血糖管理のため、砂糖を入れずに飲むのはおすすめです。

また、女性においては、乳製品の摂取も効果があるという研究報告もあります。

ただし、予防に効果があるからといって、特定の食品ばかり摂取していると、栄養バランスが崩れてしまう恐れがあるので注意してください。

【参考情報】『「多目的コホート(JPHCコホート)」における糖尿病・メタボリックシンドロームの発症要因と実態分析に関する研究』厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/16644

3-2.効果的な運動

運動をすることでインスリンの効果が高まり、血糖値の上昇を抑えることができます。また、肥満の改善にも役立ちます。

特に有効なのは、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせです。ただし、普段あまり運動をしない人が、急に激しい運動を始めると、体に負担がかかる恐れがあります。

まずはウォーキングのような、体に負担の少ない有酸素運動から始め、継続していきましょう。

慣れてきたら、徐々に時間を増やしたり、筋トレにもチャレンジしながら、運動の習慣を続けることが大切です。

【参考情報】『糖尿病を改善するための運動』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-05-005.html

3-3.ストレスの緩和

ストレスを感じると、コルチゾールなど血糖値を上げるホルモンが分泌されるので、血糖値が上昇します。

また、ストレスを和らげたいからといって、暴飲暴食や喫煙に走ってしまうと、それらの行動がさらに糖尿病のリスクを高めます。

ストレスを完全に取り除くことは難しいかもしれません。しかし、生活習慣の乱れを招くような解消法ではなく、ストレッチのようなリラクゼーションや趣味などで発散してみましょう。

【参考情報】『ストレス』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-6_0003.pdf

3-4.節酒

適度な量の飲酒は問題ありませんが、毎日大量にお酒を飲んでいると、糖尿病のリスクが高まります。

アルコールの過剰摂取は、インスリンの分泌量を減少させます。また、お酒を飲む際の食事やおつまみでも、それらの量や種類によっては血糖値が上がりやすくなります。

だからといって、何も食べずにお酒を飲むと、低血糖が起こりやすくなります。

お酒を飲む人は、適切な量を、枝豆や刺身のようなカロリーの低いおつまみとともに楽しみましょう。

3-5.禁煙

喫煙により交感神経が刺激されると、血糖値が上がります。また、インスリンのはたらきも妨げられます。

禁煙は、糖尿病予防に有効な対策です。しかし、長年タバコを吸っていた人には難しいかもしれません。

タバコをやめたいと考えたら、自分だけで頑張るよりも、禁煙外来やアプリを利用して、短期間で禁煙するのが効果的です。

3-6.自分の血糖値を知っておく

糖尿病が心配なら、健康診断や人間ドックで血糖値を測定し、数値を把握しておくことが大切です。ただし、健康診断では血糖値の変動まではわからないことに注意してください。

通常、健康診断では空腹時の血糖値を測定し、その数値が高いと糖尿病を疑います。しかし、空腹時の血糖値は正常な人でも、血糖値の急激な上昇と下降を繰り返す「血糖値スパイク」が起きていることがあります。

食後に強い眠気に襲われたり、ちゃんと食べたはずなのに空腹感を覚える人は、血糖値スパイクを起こしている可能性があります。

血糖値スパイクがある人は、糖尿病になるリスクが高いので、健康診断では問題がなくても、思い当たる症状のある人は、病院で相談してみましょう。

◆「血糖値スパイク」についてくわしく>>

4.おわりに

糖尿病に関する遺伝子が、親から子へと遺伝することはあります。しかし、そのような遺伝子を受け継いでいても、必ずしも糖尿病になるわけではありません。

糖尿病は遺伝だけではなく、生活習慣の影響も大きい病気なので、血縁者に糖尿病の人がいなくても、糖尿病になる可能性もあります。

「親が糖尿病だから」と心配な人もいるかと思いますが、遺伝の可能性の有無にかかわらず、食事と運動を中心に体調を管理して、しっかりと予防に努めていきましょう。

そして、食事と運動による体調管理は、薬による治療に加えて糖尿病に罹患中の患者さんにも必要なことです。

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