糖尿病の尿の特徴とは?色やにおいはどう変化するのか
健康な人でも、水分摂取量や飲み物の種類によって、尿の色が薄くなったり、トイレに行く回数が増えたりすることはよくあります。
しかし、尿の色や量に加え、「甘酸っぱいにおいがする」「泡が消えにくい」といった変化が見られた場合は、糖尿病の可能性が考えられます。
糖尿病を発症すると、尿中にブドウ糖やタンパク質が含まれるようになり、その結果、尿の性質が変わることがあります。
この記事では、糖尿病が尿にどのような変化をもたらすかをくわしく解説します。
目次
1.糖尿病とはどんな病気か
糖尿病は、インスリンという血糖を下げるホルモンが不足したり、十分に働かなくなることで、血糖値が慢性的に高くなる病気です。
<診断基準>
空腹時の血糖値が126mg/dL以上
または食後2時間後の血糖値が200mg/dL以上
この病気は、主に1型と2型に分けられます。
1型糖尿病は、インスリンを分泌しているすい臓の細胞が、免疫の仕組みの異常により攻撃されることで発症すると考えられています。
2型糖尿病は、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣、遺伝が関与します。これらの影響で、インスリンの分泌量が減少したり、その働きが低下し、結果として高血糖が引き起こされます。
糖尿病は一度発症すると、基本的には完治することがないため、継続的な治療が必要です。また、発症後は合併症にも注意が求められます。
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、動脈硬化が進行し、血管がもろくなったり、狭くなったりします。すると、心血管疾患や脳血管疾患のリスクが高まります。
2.糖尿病の尿の特徴
糖尿病になると、尿に特有の変化が現れることがあります。
以下、糖尿病患者の尿の特徴について説明します。
2-1.色
糖尿病の人の尿は、健康な人に比べて色が薄く、透明に近い状態になることがあります。
これは、高血糖が続くことで喉が渇き、水分摂取量が増えるためです。
その結果、体内で作られる尿の量も増え、尿の色が薄くなるのです。
2-2. におい
糖尿病が進行すると、尿から甘酸っぱいにおいがするようになります。
通常、健康な人の尿に含まれるブドウ糖は腎臓で再吸収されるため、体外に排出されることはありません。
しかし、糖尿病患者は、血液中のブドウ糖濃度が異常に高くなるため、腎臓での再吸収が追いつかず、ブドウ糖が尿に混ざって排出されます。その結果、尿のにおいに変化が現れます。
さらに病気が進行すると、体はブドウ糖をエネルギー源としてうまく利用できなくなるので、代わりに脂肪を分解してエネルギーを作るようになります。その過程でケトン体という物質が生成されます。
このケトン体が尿中に排出されることで、甘酸っぱいにおいが発生します。
【参考情報】『Ketones』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/25177-ketones
2-3.泡立ち
糖尿病患者の尿は、泡立ちやすくなる傾向があります。これは、糖尿病の影響で再吸収されなかったブドウ糖が尿に含まれることで、尿がネバネバするからです。
さらに病気が進行すると、腎機能が低下することで、尿にタンパク質が含まれるようになります。このタンパク質も尿が泡立つ原因となります。
健康な人でも尿が泡立つことがありますが、通常はすぐに消えます。しかし、糖尿病患者の尿は、泡が消えにくいのが特徴です。
また、尿に含まれるブドウ糖の影響で、床に跳ねた尿がベタつくこともあります。
2-4.量
糖尿病患者は、尿の量が増える傾向にあります。これは、血液中のブドウ糖濃度が常に高い状態にあるためです。
血糖値が高いと、血液の濃度が上がるため、それを薄めるために体内の水分が血管内に引き込まれます。すると体内の水分が不足し、喉の渇きを感じやすくなります。
この状態になると、どれだけ水を飲んでも渇きが収まらず、自然と水分摂取量が増えます。その結果、尿の量が増えるのです。
2-5.回数
糖尿病の影響で水分摂取量が増え、尿量も増加することで、トイレに行く回数が増えます。夜間に尿意で目覚めることも増えます。
糖尿病に加え、加齢とともに膀胱の容量が減少したり、尿を溜める力が弱まることがあると、排尿回数はさらに増えることもあります。
2-6.その他
糖尿病の合併症の一つに、糖尿病性神経障害があります。これにより、排尿をコントロールする神経が障害され、神経因性膀胱が引き起こされると、頻尿や尿漏れといった問題が現れることがあります。
【参考情報】『糖尿病神経障害』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-037.html
また、尿路感染症が原因で、尿に異常が生じることもあります。
糖尿病患者は、血糖値が高い状態が続く影響で免疫機能が低下しているので感染症にかかりやすく、また重症化しやすい状態になります。そのため、尿路や膀胱、腎臓などが病原体に感染し、炎症が起こることがあります。
尿路感染症になると、頻尿や排尿時の痛み、残尿感、さらに発熱といった症状が現れることがあります。
【参考情報】『糖尿病と感染症のはなし』糖尿病情報センター|国立国際医療研究センター
https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/070/070/01.html
3.尿検査でわかること
もし尿の異常があり、不安な場合は検査で調べてみましょう。
3-1.自宅で可能な検査
ドラッグストアなどで購入できる検査キットを使えば、自宅でも尿糖検査や尿タンパク検査が可能です。
<検査方法>
①朝起きたらすぐに、尿をコップにとり、試験紙を尿につけます
②試験紙の色が変化してきます
③指定の時間になったら、尿の色を付属の色調表と見比べて、尿タンパクや尿糖の有無を確認します
尿を試験紙につけておく時間が指定の時間より長くなると、試験紙の色が濃くなって正確な判定ができなくなるので注意しましょう。
3-2.病院で行う検査
病院では、尿タンパク検査や尿糖検査のほかに、尿中アルブミン検査を行うこともできます。アルブミンとは、タンパク質の一種です。
健康な人は、アルブミンが尿中に排出されることはほとんどありませんが、糖尿病になると腎臓の機能が低下するため、アルブミンが尿に排出されるようになります。
この、尿と一緒に排出されたアルブミンの量を検査することで、糖尿病の診断に役立てることができます。
尿中アルブミンは、日中の活動によって数値が変動することが多いため、早朝の尿を採取して検査します。
尿中アルブミンの正常値は、30mg/gCr未満です。30~299mg/gCrの場合は微量アルブミン尿と呼ばれ、腎臓に障害が起こっていることを示しています。さらに進行すると300 mg/gCr以上となり、顕性アルブミン尿と呼ばれます。
尿中アルブミン検査は、日を変えて3回行います。2回以上に微量アルブミン尿を確認した場合、早期腎症と診断されます。
尿検査で尿糖や尿中アルブミンなどの値に異常があっても、尿検査だけでは糖尿病と診断することはできません。確定診断には、血液検査を行う必要があります。
【参考情報】『Albumin (Urine)』University of Rochester Medicine
https://www.urmc.rochester.edu/encyclopedia/content.aspx?contenttypeid=167&contentid=albumin_urine
4.おわりに
食べ物や飲み物によって、尿の色や量が変化することはよくあります。しかし、一時的な変化に留まらず、変化した状態が続いている場合は、内科か泌尿器科を受診しましょう。
尿に異常があっても糖尿病とは限りませんが、別の病気が隠れている可能性はあります。早期に異常を発見できるきっかけになるかもしれませんので、心配な人は医師の診察を受けましょう。
当院にも、実際に尿の異常を感じて受診される患者さんがいらっしゃいますので、相談してください。