糖尿病治療薬「メトグルコ」の特徴と効果、副作用
現在、糖尿病の治療薬にはさまざまな種類があります。その中でも「メトグルコ」は、肝臓での糖の生成を抑えることでインスリンの効き目を高め、高血糖の改善を助ける飲み薬です。
この記事では、メトグルコの特徴や使用時の注意点について詳しく解説します。特に、お酒をよく飲む方や下痢をしやすい方は、メトグルコの副作用に注意が必要なので、読んで確認してください。
1.メトグルコとはどのような薬か
メトグルコは、メトホルミン塩酸塩という成分を含む糖尿病治療薬です。血糖値を下げる薬の中でも「ビグアナイド系」と呼ばれる種類に属し、肝臓での糖の生成を抑え、筋肉での糖の利用を促進する作用があります。
【参考情報】『Metformin (oral route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/metformin-oral-route/description/drg-20067074
糖新生とは、空腹時に肝臓などで、アミノ酸からブドウ糖(エネルギー源)を作り出す仕組みのことです。
糖新生が起こると血糖値が上昇するので、それを下げるために、通常はすい臓からインスリンが分泌されます。
しかし、糖尿病の人はインスリンの効き目が悪くなる「インスリン抵抗性」という状態に陥っていることがあり、糖新生による高血糖が制御できなくなる場合があります。
【参考情報】『Insulin Resistance』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22206-insulin-resistance
その結果、通常より多くのインスリンを分泌する必要が生じ、すい臓に負担がかかります。これが続くとインスリン分泌機能が低下し、さらに血糖値が上がるという悪循環が生まれてしまいます。
そこで、メトグルコを使用して糖新生を抑えると、インスリンを分泌せずに血糖値を下げることができ、さらにインスリン抵抗性の改善にもつながります。
現在、メトグルコは250mg錠と500mg錠の2種類が発売されています。主な適応は、食事療法・運動療法の効果がない2型糖尿病です。
さらに2022年には、肥満・耐糖能異常、インスリン抵抗性のいずれかを合併した多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発の適応も取得しました。
【参考情報】『公知申請とされた適応外薬の保険適用について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000928332.pdf
2.メトグルコの使い方
この章では、2型糖尿病の治療におけるメトグルコの使い方を解説します。2型糖尿病の治療では、10歳以上の子どもから使用可能です。
<10歳以上の子ども>
最初は、1日の総量としてメトホルミン500mgを1日2〜3回に分けて服用します。経過を観察しながら服用量を調整し、通常は1日500〜1500mgの範囲で服用します。最大で1日2000mgまで使用可能です。
<成人(15歳以上)>
最初は、1日の総量をメトホルミン500mgとし、1日2〜3回に分けて服用します。経過を見ながら服用量を増やし、通常は1日750〜1500mgの範囲で服用します。最大で1日2250mgまで服用が可能です。
メトグルコを服用するタイミングは食直前(食事の5分前)または食後です。医師に指示された用法用量を守って服用しましょう。
3.メトグルコの副作用
メトグルコの副作用は次のとおりです。
・下痢
・吐き気
・嘔吐
・食欲不振
・腹痛
・低血糖
中でも下痢は、40%近くの確率で起きることが、薬剤の添付文書で報告されています。重度の下痢は脱水症状を引き起こすことがあるため、早めに主治医や薬剤師に相談しましょう。
また、めったにありませんが、次のような重篤な副作用を起こすことがあります。
・乳酸アシドーシス
・肝機能障害
・横紋筋融解症
食事や水分補給が十分にできていないと、低血糖や乳酸アシドーシスを起こしやすくなります。
【参考情報】『乳酸アシドーシス』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0420.html
体調が悪くて食欲がないときでも、できるだけ普段通りの飲食を心がけましょう。それが難しい場合は、主治医に相談してください。
乳酸アシドーシスは、お酒を飲み過ぎると発生するリスクが高まります。飲酒はほどほどの量にするように注意しましょう。
4.使用上の注意点
通常、メトグルコは10歳未満の子どもや妊娠中・授乳中の女性には使用しません。特に妊娠の可能性がある場合は、胎児に催奇形のリスクがあるため、使用を中止します。また、脱水を起こしやすい高齢者には、慎重に処方を行います。
メトグルコによる乳酸アシドーシスは危険な副作用です。そのため、腎臓、肝臓、心臓、肺に重度の障害がある方や透析患者、手術前後の方、重度の感染症にかかっている方など、リスクが高い人には使用できません。
また、普段は問題なくメトグルコを服用している人も、下記に該当する場合には、乳酸アシドーシスを防ぐために服用を一時中断することがあります。
・脱水の症状があるとき
・発熱や下痢、嘔吐、食事がとれない等の体調不良(シックデイ)のとき
・ヨード造影剤を用いて検査をするとき
上記に該当する場合は、主治医や薬剤師にメトグルコを中止すべきか相談してください。症状の程度によっては、そのまま服用を続けることもあるため、自己判断は避けるようにしましょう。
メトグルコを使うと、低血糖を起こすことがあります。
<低血糖の初期症状>
・冷や汗
・吐き気
・強い空腹感
・脱力感
このような症状が現れたら、転倒を防ぐため安全な場所に座り、ブドウ糖またはブドウ糖や砂糖を含むジュース、ラムネなどを摂取してください。
【参考情報】『重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1d45.pdf
5.メトグルコの薬価
メトグルコの1錠あたりの価格(2024年11月調べ)は次のとおりです。
・メトグルコ錠250mg 10.1円/錠
・メトグルコ錠500mg 10.1円/錠
メトグルコにはジェネリック医薬品がありますが、薬価はメトグルコと同じです。
また、メトグルコと同じくメトホルミンを使った医薬品にグリコランがあります。メトグルコとグリコランは成分が同じですが、グリコランには250mg錠しかなく、薬価や用法用量もメトグルコと異なります。
メトグルコと同じ成分を使った市販薬や糖尿病の治療ができる市販薬は発売されていません。
6.おわりに
メトグルコが合わない場合、同じ分類のビグアナイド系糖尿病薬であるジベトス(成分名:ブホルミン塩酸塩)が使える場合があります。
また、糖尿病治療薬は他にもさまざまな種類があるため、症状に応じて別の薬に変更することもあるでしょう。
糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。薬だけに頼るのではなく、規則正しい生活習慣を身につけ、少しずつ糖尿病を改善していきましょう。