糖尿病治療薬「フォシーガ」の特徴と効果、副作用
フォシーガは、糖尿病や心不全などの治療に使われる錠剤です。
この薬は、血液中のグルコース(ブドウ糖)を尿と一緒に排出し、血糖値を下げる効果があります。また、心臓や腎臓への負担を軽減する働きもあります。
さらに、体重の減少も期待できるため、ダイエット目的で服用を考えている方もいるかもしれません。
ただし、フォシーガにはいくつかの副作用もあります。低血糖や脱水、性器や尿路の感染症などが報告されており、特に腟カンジダ症などの性器感染症は、5%以上の確率で発生する可能性があると言われています。
本記事を通じて、フォシーガを適切に使用するための理解を深めていきましょう。
1.フォシーガとはどのような薬か
フォシーガは、ダパグリフロジンという成分を含む血糖降下薬で、SGLT2阻害薬の一つです。主に、1型・2型糖尿病の治療薬として使われます。
【参考情報】『Dapagliflozin』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a614015.html
血糖値が上がる原因となる血液中のグルコース(ブドウ糖)は、血液から尿が作られる際に、尿細管にあるSGLT2というタンパク質のはたらきによって血液の中に戻ります。
フォシーガは、SGLT2のはたらきを阻害して、血液中のグルコースを尿と一緒に体外へ排出することによって、血糖値を下げる仕組みの薬です。
【参考情報】『Sodium-glucose Cotransporter-2 (SGLT2) Inhibitors』FDA
https://www.fda.gov/drugs/postmarket-drug-safety-information-patients-and-providers/sodium-glucose-cotransporter-2-sglt2-inhibitors
フォシーガは、慢性心不全や慢性腎臓病の治療薬としても使われることがあります。血液中のグルコースを排出すると尿の量が増えるので、体内の水分量が効率よく減少します。その結果、心臓や腎臓の負担が軽減されるのです。
ただし、透析中の人や、末期の腎不全の患者さんは、フォシーガを服用するとかえって腎機能が悪化する恐れがあると報告されています。そのため、腎臓の状態によっては使用できない場合もあります。
2.フォシーガの使い方
フォシーガは、1日1回、水かぬるま湯と一緒に服用します。服用対象は15歳以上の成人で、服用量は治療する疾患によって異なります。
<1型糖尿病>
インスリン製剤と併用し、1日1回5mg(ダパグリフロジンとして)を服用します。効果が不十分な場合、1回10mgに増量することがあります。
<2型糖尿病>
1日1回5mg(ダパグリフロジンとして)を服用します。効果が不十分な場合、1回10mgに増量することがあります。
<慢性心不全・慢性腎臓病>
1日1回10mg(ダパグリフロジンとして)を服用します。
1型糖尿病もある場合は、最初は1日1回5mgから始め、インスリン製剤の量を調整しながら、最終的に1日1回10mgに増量します。
フォシーガは、医師が指示したタイミングで毎日服用してください。尿の量が増えるため、トイレの回数も増えることがあるので、もしトイレの問題で困ることがあれば、医師に相談しましょう。
3.フォシーガの副作用
フォシーガの服用中には、次のような副作用が起こる場合があります。
・腟カンジダ症などの性器感染症
・膀胱炎などの尿路感染症
・頻尿
・発疹
・陰部のかゆみや不快感
フォシーガの服用中は、尿中の糖が増えるため、感染症にかかりやすくなります。
感染症を予防するには、こまめに水分を補給し、トイレを我慢しないことが大切です。また、陰部を清潔に保つことも予防に役立ちます。
また、下記のような重篤な副作用にも注意が必要です。
・低血糖
・脱水
・ケトアシドーシス
フォシーガは、食事や水分摂取に関係なく血糖値を下げ、尿量も増やすため、その影響で低血糖や脱水症状が起こりやすくなることがあります。
また、糖尿病の患者さんは、糖尿病性ケトアシドーシスという合併症を引き起こすことがありますが、フォシーガをはじめとするSGLT2阻害薬は、このリスクを高めるとされています。
【参考情報】『Diabetic ketoacidosis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/diabetic-ketoacidosis/symptoms-causes/syc-20371551
低血糖、脱水、ケトアシドーシスが起こると、口の渇きや吐き気、強い眠気やだるさといった症状が現れることがあります。このような症状や急な体調の変化が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
4.使用上の注意点
フォシーガには、胎児や母乳に影響を与える可能性のある成分が含まれているため、妊娠中や授乳中の服用は基本的に避けます。また、15歳未満の子どもには通常使用されません。
フォシーガには、低血糖や脱水といった副作用があるため、血糖値を下げる薬や利尿作用のある薬を併用する際は注意が必要です。また、日常生活でも、低血糖や脱水を防ぐよう心がけましょう。
<低血糖や脱水に注意が必要な人>
・高齢者
・食生活が不規則な人
・過剰に飲酒する人
・激しい運動をする人
最近では、ダイエット目的で自由診療によりフォシーガを処方してもらう人も増えています。しかし、薬には常に副作用のリスクがつきまといます。
重い副作用に発展する可能性も考慮して、本当に自分に必要な薬なのかどうか、慎重に考えることをおすすめします。
フォシーガを服用すると、尿中にグルコース(ブドウ糖)が排出されるため、尿検査で尿糖が陽性になることがあります。しかし、これはフォシーガの作用によるもので、異常ではありません。
健康診断を受ける際には、フォシーガを服用していることを、事前に伝えておくとよいでしょう。
【参考情報】『尿検査』日本予防医学協会
https://www.jpm1960.org/jushinsya/exam/exam05.html
5.フォシーガの薬価
フォシーガの1錠あたりの薬価(2025年4月調べ)は次のとおりです。
・フォシーガ錠5mg 163.3円/錠
・フォシーガ錠10mg 240.2円/錠
フォシーガにジェネリック医薬品はありません。また、市販薬にもフォシーガと同じ成分の薬や血糖値を下げる薬はありません。
6.おわりに
フォシーガと同じような作用を持つSGLT2阻害薬には、スーグラ、ルセフィ、カナグルなどがあります。
そのほかにも、糖尿病の治療薬にはさまざまな種類があります。効果が感じられない場合や副作用がつらい場合は、医師に相談して他の治療薬も検討するとよいでしょう。
糖尿病の治療では、規則正しい生活習慣とバランスの良い食生活を心がける必要があります。乱れた生活習慣では治療薬の副作用も起こりやすいため、忙しい毎日でもご自身の習慣を整えていきましょう。