インフルエンザの治療薬~種類と特徴
インフルエンザの治療薬には、内服薬のタミフルとゾフルーザ、吸入薬のリレンザとイナビル、点滴薬のラピアクタがあります。
インフルエンザの症状が現れてから12時間~48時間の間に抗インフルエンザ薬を服用すると、症状の悪化を防いだり、早く良くなる可能性が高まります。
この記事では、それぞれの薬がどのような違いや特徴を持っているのかを説明します。
1.タミフル
1日2回、5日間服用することで、細胞の中で増殖したウイルスの拡散を防ぎます。カプセルと顆粒状のドライシロップの2種類があります。
タミフルを服用した子どもの異常行動や転落事故が報告されたことから、10代の患者への投与は中止されていましたが、タミフルと異常行動の因果関係が明確ではないことから、2018年より10代にも投与が可能となりました。
治療薬を服用していても、いなくても、インフルエンザにかかった子どもが「幻覚を見る」「うわごとを言う」「興奮する」などの異常行動を起こすことはあります。
未成年者がインフルエンザと診断されたら、少なくとも2日間は1人にせず、大人が見守ってください。
1-1.タミフル(カプセル)
代表的なインフルエンザ治療薬なので、よく処方されます。
また、呼吸器の病気や高齢のため、吸入薬であるイナビルやリレンザを吸い込むのが難しい人には、服用しやすいカプセルのタミフルが処方されることが多いです。
1-2.タミフル(ドライシロップ)
水に溶かして飲む顆粒状の「ドライシロップ」は、カプセルを飲みこみにくい小さな子どもに処方されることが多いのですが、味は苦いです。
飲みにくい場合は、チョコレート味のアイスやお薬ゼリー、ヨーグルト、オレンジジュース、スポーツドリンクに混ぜると苦みが和らぎます。
逆にバニラアイスや乳酸菌飲料、リンゴジュースに混ぜると、ますます苦くなってしまうので注意しましょう。
溶かしてから時間が経つと薬の苦味が出てくるので、食べ物や飲み物と混ぜたら、なるべく早めに飲んでください。
1-3.タミフル(ジェネリック)
2018年9月、タミフルのジェネリック薬、オセルタミビルが発売されました。タミフルと同様、カプセル剤とドライシロップがあります。
2.ゾフルーザ
2018年3月に発売された新薬。タミフルをはじめとするこれまでの治療薬は、細胞の中で増殖したウイルスが拡散することを防ぐものですが、ゾフルーザはウイルスの増殖そのものを抑える薬です。
1回飲むだけでいいのが手軽で便利です。ただし、新薬なので少し値段が高いことと、ほかの治療薬に比べて副作用などのデータが少ないという側面もあります。
3.イナビル
容器に入った粉末の吸入剤。容器は20mg入りで、成人および10歳以上の小児は40mg(容器2個)を、10歳未満の小児は20mg(容器1個)を1回吸入します。
1回吸入するだけで5日間効果が持続するので、その点は便利なのですが、幼児や高齢者だとうまく吸い込めないことがあります。そのため服用前に、吸入確認用の笛を吹くように指示されることがあります。
吸入方法は、製薬会社のホームページでも見ることができます。
【参考情報】『イナビル吸入方法』第一三共製薬会社
https://www.influ-news.info/inhalation/index.html?/inhalation/usage.html
イナビルの添加物には、乳タンパクが含まれています。牛乳アレルギーのある方は、医師や薬剤師に必ず相談してください。また吸入薬のため、喘息など呼吸器に病気のある人も注意が必要です。
4.リレンザ
イナビルと同様、粉末の吸入薬です。1日2回5日間、「ブリスター」と呼ばれる薬が入ったディスクを専用の吸入器(ディスクヘラー)にセットして吸入します。
イナビルと同様、リレンザの添加物にも乳タンパクが含まれているので、牛乳アレルギーのある方は、医師や薬剤師に必ず相談してください。吸入薬のため、喘息など呼吸器に病気のある人も注意してください。
【参考情報】『リレンザ』グラクソ・スミスクライン
https://jp.gsk.com/ja-jp/products/our-prescription-medicines/relenza/
5.ラピアクタ
抗インフルエンザ治療薬の中で唯一の点滴薬です。錠剤や吸入剤がうまく服用できないお子さんや高齢者、障害のある方、入院中の患者さんなどに使われることが多いです。
約15分の点滴を1回するだけで効果が得られますが、腎機能障害のある方には注意が必要な薬なので、該当する方は必ず医師に申し出てください。
6.予防投与について
タミフル、リレンザ、イナビルは、「同居する家族などがインフルエンザにかかった人」「インフルエンザにかかると重症化しやすい人」に限って、予防のために服用することもできます。
ただしその場合、治療費は全額自己負担となります。
【参考情報】『What You Should Know About Influenza (Flu) Antiviral Drugs』CDC(Centers for Disease Control & Prevention)
https://www.cdc.gov/flu-resources/media/pdfs/What-you-Should-Know-About-Flu-Antiviral-Drug2022s.pdf
7.おわりに
インフルエンザの患者さんには、抗インフルエンザ治療薬とともに、高熱が出た場合には熱を下げる薬(解熱鎮痛薬)を、咳が出る場合には咳をしずめる薬(鎮咳薬)など、出ている症状に応じた薬を使うこともあります。
医師は患者の年齢や重症度などを考慮して薬を選びます。自分に合った薬を処方してもらうためにも、持病やアレルギーのある方は必ず申し出てください。
熱が下がって元気になっても、インフルエンザウイルスが完全にいなくなったわけではありなせん。処方された薬は、必ず最後まで飲みきってください。