ワクチンも大切ですが、感染予防には「腸内環境」が大事!
新型コロナウイルス感染症の流行がなかなか落ち着かず、まだまだ不安な人も多いと思います。
感染を防ぐには、まずはワクチンを接種すること。そして、手洗いやマスクの着用、人込みを避けるなどの基本的な対策とともに、病気にかかりにくい体づくりも大切です。
この記事では、免疫の力が働くために重要な食事や栄養について詳しく解説します。毎日の食生活を見直し、腸内環境を整えて、感染症に負けない体をつくるために役立ててください。
目次
1.肥満で新型コロナの重症化リスクが上昇
新型コロナウイルス感染症は、肥満体型の人に重症化リスクがあることがわかっています。
【参考情報】『Obesity, Race/Ethnicity, and COVID-19』CDC
https://www.cdc.gov/obesity/data/obesity-and-covid-19.html
その理由として、脂肪により肺などの呼吸器が圧迫され負担がかかっていることや、脂肪にある受容体というたんぱく質に、ウイルスが付着しやすいことなどが挙げられます。
体重は、食生活によって大きく変わります。栄養価が低く、カロリーが高い加工食品ばかり食べていると太りやすくなりますし、野菜を十分に食べ、栄養バランスの良い食生活を維持していると、太りにくくなります。
コロナで外出が制限され運動量が減ったことや、在宅ワークをしながら簡単に食べられる菓子パンや炭酸飲料を摂取することが増え、いわゆる「コロナ太り」になってしまった方も多いのではないでしょうか。
そのような方も、食生活を見直して適正な体重に戻すことができれば、感染症に強い体を維持することができます。
2.食事で腸内環境を改善して感染症対策
新型コロナに感染して重症化した人は、腸内環境が悪く、善玉菌が不足している傾向にあることが指摘されています。
【参考情報】『Alterations in Gut Microbiota of Patients With COVID-19 During Time of Hospitalization』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32442562/
一方で、腸内環境が良好な人は、コロナの後遺症を発症する確率が低いという報告もあります。
【参考情報】『Gut microbiota dynamics in a prospective cohort of patients with post-acute COVID-19 syndrome』Gut
https://gut.bmj.com/content/early/2022/01/05/gutjnl-2021-325989
腸には善玉菌、悪玉菌、そして腸内の環境によって善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見(ひよりみ)菌が棲みついています。この3種がバランスよく共生していると、免疫の力が働きやすくなり、病気にかかりにくくなります。
腸内環境を整えるには、野菜や豆類、キノコ類、海藻など、善玉菌のエサとなる食物繊維が豊富な食材を摂るのが良いのですが、ジャンクフードや加工食品には、これらの食材はあまり含まれていません。
肥満体型の人は、脂肪が多く食物繊維が少ない食事を好む傾向があります。そのため体重が増えるとともに腸内環境が悪化して、免疫の力が働きにくくなることが考えられます。
一方で、筋トレや糖質制限のため、タンパク質重視の食事を摂っている人も、食物繊維が不足しがちです。
やせ型や標準体型の人も、食物繊維が豊富な食材を積極的に摂り、腸内環境を良好に保つことで、免疫の力が十分に発揮できることを知っておいてください。
◆「腸内環境を整えて免疫力をアップさせる食事の基礎知識」>>
3.ヨーグルトは第一の選択肢なのか
腸内環境を整える食材と言えば、真っ先に「ヨーグルト」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
市販のヨーグルトには、善玉菌の代表として知られるビフィズス菌のほか、メーカーや製品によりさまざまな乳酸菌が配合されています。
ただ、口から摂取した乳酸菌が腸内に棲みつくのは難しく、ほとんどは便と一緒に排出されてしまいます。
ヨーグルトのほか、健康飲料や青汁などにも乳酸菌を配合した製品はあります。しかし、中には脂質や糖分が多い製品もあるので注意が必要です。
ヨーグルトは、おやつとして時折たのしむ分には問題ありません。しかし、「健康のため」という義務感で毎日のように摂取しているのなら、別の方法で腸内環境を改善することもできるので、ヨーグルトにこだわる必要はありません。
【参考情報】『ビフィズス菌』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-029.html
4.善玉菌の「エサ」を摂取する
ビフィズス菌をはじめとした善玉菌は、私たち人間の腸内にもともと棲みついています。
善玉菌を増やすには、善玉菌そのものを食べるよりも、善玉菌が好むエサとなる食材を積極的に摂り、腸内の菌たちが勝手に増えてくれるように働きかける方が着実です。
4−1.善玉菌のエサを食事で摂る
善玉菌が好むエサには、食物繊維のほか、タマネギやバナナ、大豆などに多く含まれるオリゴ糖があります。
一方で、肉類のタンパク質や脂質は悪玉菌が好むエサとなります。タンパク質や脂質も健康のためには欠かせない栄養素ですが、これらの食材に偏った食事は腸内環境を悪化させるので、肉類を食べるときは野菜や海藻も一緒に摂るようにしてください。
【参考情報】『オリゴ糖』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-003.html
4−2.善玉菌が作り出す成分をサプリで摂る
多忙や偏食などの理由で、栄養バランスの良い食事を摂るのが難しい場合は、善玉菌に代わるサプリを利用するのもいいでしょう。
腸内のビフィズス菌や乳酸菌は、好みのエサを食べては「乳酸菌生産物質」と呼ばれる代謝物をつくり出しています。この代謝物が腸内細菌のバランスを調整することで、免疫の力が働きやすくなります。
ビフィズス菌は加齢とともに減少するので、高齢になると腸内環境は悪化しやすくなることがわかっています。また、高齢者は食事の量が次第に減ってくることが多いため、食事で善玉菌を増やすのがだんだん難しくなります。
サプリを摂取すると、乳酸菌が作り出した成分を直接腸内に届けることができます。食事だけで腸内環境を整えるのが難しい方には、手軽で便利な方法でしょう。
5.おわりに
新型コロナのワクチンは、接種した人に備わっている免疫の力がよく働いているほど、ウイルスから身を守る抗体が作られやすい仕組みとなっています。
食生活を見直して、免疫の力が十分に働くようになれば、「感染症にかかりにくい」「重症化しにくい」「ワクチンの力が発揮できる」「後遺症を発症しにくい」という、病気に強い体が保持できると考えられます。
免疫の力を発揮させるためには、善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を積極的に摂り、腸内環境を整えることが大切です。
手洗いやマスク着用など基本的な対策に加えて、毎日の食事も見直して、コロナのリスクを減らしていきましょう。